来年9・10月に
本公演は、“日本近代社会の創造者”として知られる渋沢栄一が、今年7月に発行された1万円札新紙幣の肖像画となったことを記念して、渋沢を主人公に創作される新作能。公演は、観世能楽堂のほか、渋沢の邸宅があった東京都北区飛鳥山公園の野外舞台で薪能として上演されるほか、数年にわたって全国各地で上演が予定されている。制作発表会には、渋沢栄一翁・顕彰能「青淵」制作委員会委員長で歴史学者の樺山紘一、制作委員会委員の井上潤、作者の
制作発表会が行われた11日は、渋沢が1931年に91歳で死去した命日となり、樺山は「渋沢栄一にとって意味のある日に顕彰能のお話を申し上げられるのは大変な喜び」だと述べた。さらに、500を超える会社や事業団体を創設した渋沢の功労や、教育・文化・医療の分野でも日本近代社会の基盤を作ったことを説明し、「渋沢栄一の実業家としての功績について考え、思い残すことが必要であると考えていたところ、顕彰能という形で、広く私たち日本人の共通財産にする機会を得ることができました。多くの方に知っていただくと同時に、日本において大きな意志を占める公演となるよう、ご支援よろしくお願いします」と語った。
本作で監修を担当する観世流二十六世観世宗家の清和は、「私どもの先祖である世阿弥が、『一座建立、寿福増長』という言葉を残しておりますが、まさに我が意を得たり。自分だけが幸せになるのではなく、社会貢献をして皆様に理念や精神を浸透させていく、分け与えることが大事でして、渋沢先生はそれを実践された方だと伺っています。能では想像力をたくましくして観ていただくことが大切です。特に若い方々に渋沢先生の素晴らしさを、能の規範を守りつつ、親しんでいただけるよう監修をさせていただきます」とコメントした。
本作の物語は、何度も名前を変えた渋沢の“篤太郎”時代からスタートする。大政奉還ののちに徳川家と共に下った静岡で、株式会社の原型である商法会所を立ち上げ、成功を収めた篤太郎は、財政難だった新政府に出仕するよう命じられる。徳川家への忠義と国家に関わることができる魅力に揺れる篤太郎は、慶喜に諭され、江戸へ向かうことに。飛鳥山の茶屋で朝臣と酒宴を張った篤太郎は、その夜、夢の中で孔子の霊と悪鬼に出会う。翌朝目覚めた篤太郎は、「論語と算盤」を説きながら、世界の繁栄と人々の幸せを願い、舞を納めるのだった。
篤太郎を演じる三郎太は「数ある演劇の中から、能楽で渋沢栄一を演じるということで、やるからには 能楽という規範・基本から離れずに、普段能楽を観ているお客様も『これは新作能としての渋沢栄一だ』と思ってもらえるようなものを作っていきたいです」と意気込んだ。
横浜能楽堂芸術監督で本公演の作を務める中村は、「青淵」制作について、「新作能というと奇をてらう方向になりがちですが、今回、渋沢栄一翁の新作を書くにあたり、奇をてらうつもりはありません」と話す。「と言いますのも、能が現れて六百数十年経ちます。その間にさまざまな実験が積み重ねられ、最終的な成果となるのが現代の能。学術的には江戸中期には確立されていたと言われています。今回、技法は伝統的なもので、中身は現代に通じるものを目指したい。『論語と算盤』は普遍性があり、今の時代にドンピシャな内容です。これからは倫理観を持った経済活動というものが必要で、それを幕末の頃に示していたのが渋沢栄一翁であり、遠くを見通して日本に資本主義社会を導入した偉大な方です。その思想を能を媒介として今の人たちに、楽しみながら観ていただく、考えていただけるような能になればと思っております」と説明した。
本作にはそのほか、台本協力で小田幸子、狂言監修で
渋沢栄一翁・顕彰能「青淵」
2025年9月29日(月)
東京都 観世能楽堂
2025年10月30日(木)
東京都 飛鳥山公園内野外舞台
スタッフ
監修:
作:
台本協力:小田幸子
狂言監修:
作調:
節付・形付:梅若紀彰
出演
シテ(篤太郎):
前ツレ(慶喜)・後ツレ(孔子の霊):山階彌右衛門
前ツレ(篤太郎の妻)、後ツレ(悪鬼):?
ワキ(朝臣):福王和幸
アイ狂言(茶屋の亭主、女):和泉流
地頭:梅若紀彰
笛:
小鼓:飯田清一
大鼓:亀井広忠
太鼓:林雄一郎
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リンク
梅若会インフォメーション @umewakakai_info
【会見レポート】渋沢栄一の功績を“新作能”で共通財産に、渋沢栄一翁・顕彰能「青淵」が2025年に上演
本作にはそのほか、狂言監修で野村萬斎、節付・形付で梅若紀彰、作調で亀井広忠がクレジット。公演は来年9月29日に観世能楽堂、10月30日に東京・飛鳥山公園内野外舞台にて。
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