「ボイラーマン」幕開け、赤堀雅秋が思い込める「自分にとってかなりの挑戦」

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赤堀雅秋プロデュース『ボイラーマン』」が本日3月7日に東京・本多劇場で開幕。それに先がけ、本日、公開ゲネプロが行われた。

赤堀雅秋プロデュース「ボイラーマン」より。(撮影:引地信彦)

赤堀雅秋プロデュース「ボイラーマン」より。(撮影:引地信彦)

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物語の舞台となるのは、とある住宅街の路地裏。小さなマンションの横にある短い階段を降りた場所にちょっとした空きスペースがあり、ぼんやりとした明かりを放つ自動販売機や電話ボックス、あふれんばかりの袋が積み重なったゴミ集積所、放置自転車が雑然とある。

赤堀雅秋プロデュース「ボイラーマン」より。(撮影:引地信彦)

赤堀雅秋プロデュース「ボイラーマン」より。(撮影:引地信彦)[拡大]

赤堀雅秋プロデュース「ボイラーマン」より。(撮影:引地信彦)

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そこへ喪服の女(安達祐実)が姿を現し、地面に落ちている何かを探すようなそぶりを見せる。彼女と入れ替わりで現れたのは、トレンチコート姿の中年男(田中哲司)。男がふとタバコに火を付けようとすると、マンションの裏口から出てきた中年女(村岡希美)が「なんでみんなここでタバコを吸うんですか?」と詰問する。続けて近所の見回りに来た警官(赤堀雅秋)が男に声をかけると、男はいつもと違う道で家に帰ろうとしたら、道に迷ってしまったのだと話し、「甲州街道はどこですか」と尋ねる……。

赤堀雅秋プロデュース「ボイラーマン」より。(撮影:引地信彦)

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赤堀雅秋プロデュース「ボイラーマン」より。(撮影:引地信彦)

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でんでん演じる奇妙な言動の老人をはじめ、登場人物の大半はその日偶然出会っただけの、知り合いではない人たち。彼らの会話の断片から、近所では放火が頻発していること、男がボイラー関係の仕事をしていることなどが明らかになる。そしてその夜もまた火事が起き、消防車のサイレンが激しく鳴り響く中、一見すると取るに足らない、しかし彼ら自身にとっては切実な、孤独と不安の問題が炙り出されていく。

赤堀雅秋プロデュース「ボイラーマン」より。(撮影:引地信彦)

赤堀雅秋プロデュース「ボイラーマン」より。(撮影:引地信彦)[拡大]

チラシ裏面に書かれた赤堀のメッセージ、「地獄のように何も起こらない現実の社会に生きる地獄のように何もない凡庸な中年の男。何もない世界に生きる市井の人々。それでも作者の私にとって彼ら彼女らはヒーローでヒロインだ」という言葉の重みが、ずしりと胸に迫る。あの夜の街を悶々とさまよい歩いていたのは、自分かもしれない……そんな気持ちにさせられるラストだ。

また開幕に際し、赤堀とキャストのコメントが到着。赤堀は「他者から見たら『いつもと変わらないじゃないか』と笑われるかもしれませんが、今作は自分にとってかなりの挑戦でした。暗中模索で、どこに辿り着くか判然としないままの作劇でしたが、それでもワクワクしながら歩みました」とコメント。

田中は「心を揺さぶりながら、ミスを恐れずギリギリのラインで攻めの演技を心がけて挑みたいと思います」と意気込みを語り、安達は「作品の中の登場人物達は、みんな生きていて、はち切れそうになりながらもちゃんとそこに居る。愛おしいです。心をパンパンにして、劇場でお待ちしてします」と観客にメッセージを送る。

でんでんは「開幕の心境としては、食欲が失せ、気力もなえ、不安のカタマリです。線が細いのです。とても小学生が遠足を待っているような気持ちではなく、はっきりいって戦場にむかうような感覚です。本当に肚が座るのは、出番直前ですので、力をいれて、リキまずに(エネルギッシュに)臨みたいと思っています」と思いを語った。赤堀、田中、安達、でんでんのコメント全文と他のキャストのコメントは以下の通り。公演は3月20日まで上演される。

赤堀雅秋コメント

他者から見たら「いつもと変わらないじゃないか」と笑われるかもしれませんが、今作は自分にとってかなりの挑戦でした。暗中模索で、どこに辿り着くか判然としないままの作劇でしたが、それでもワクワクしながら歩みました。心強いスタッフ・キャストの皆さんの力を借りて、いよいよ開幕します。正直、開幕しても、どこに辿り着くかはいまだにわかりません。だからとても怖いし、同時に楽しみでもあります。是非劇場に目撃しに来て下さい。

田中哲司コメント

心を揺さぶりながら、ミスを恐れずギリギリのラインで攻めの演技を心がけて挑みたいと思います。いっぱいいっぱいで生きている様々な人の人生の一コマが、一晩、狭い街角でほんのひと時交錯する。この素敵な物語りを繊細に丁寧に1ヶ月一緒に頑張った仲間たちと紡いでいきたいです。因みに好きな台詞は「8位の人です」「我々のおでん」です。

安達祐実コメント

いよいよ初日です。稽古が始まってから今日まで、ずっと楽しくて、苦しさすらも楽しくて、初日を迎えられたことをとても嬉しく思っています! 私にとってボイラーマンは、ひこうき雲みたいな存在。あ、ひこうき雲だって薄ぼんやり眺めるけど、触ることも留めることも出来ない。作品の中の登場人物達は、みんな生きていて、はち切れそうになりながらもちゃんとそこに居る。愛おしいです。心をパンパンにして、劇場でお待ちしてします。

でんでんコメント

赤堀作品に参加すると、鍛えられます。それがどこの方向に鍛えられてるのかはわからないけど。開幕の心境としては、食欲が失せ、気力もなえ、不安のカタマリです。線が細いのです。とても小学生が遠足を待っているような気持ちではなく、はっきりいって戦場にむかうような感覚です。本当に肚が座るのは、出番直前ですので、力をいれて、リキまずに(エネルギッシュに)臨みたいと思っています。「なんか久しぶりに楽しいなあ」ってセリフがあるのですが、はやくそのような気持ちになりたいなぁです。

村岡希美コメント

稽古を終えた今、本多劇場の今回のこのセットのなかでボイラーマンの世界に浸ることがとにかく楽しみです。登場人物1人1人の心の奥底が静かに、そして時に激しく揺さぶられ、その振動がお互いに連鎖しながら紡がれてゆく作品です。初日の緊張感はもちろんあると思いますがその静かな振動の連鎖に敏感に、そして丁寧に向き合ってゆきたいです。稽古場では皆さんそれぞれの繊細な表情の変化に釘付けでした。劇場空間の中で日々お客様と共にじっくりとこの世界観を味わいつくしたいです。

水澤紳吾コメント

舞台ならではの緊張感にヒリヒリしております。目の前の相手、状況をしっかり感じて生々しく立てているようにしたいです。なかなかうまく生きていけない人達の、ダメで、不格好で、切実で、懸命な姿は、おかしく、もの悲しいです。赤堀さんの作品に出てくる人物に、私は共感することが多く、ですので、必死でやって、なんとか何か心に残るものを捻出できればと思います。よろしくお願いいたします。

樋口日奈コメント

自分が抱くイメージを「逸脱すること」、新鮮な気持ちで舞台の上に立ち「実存すること」を大切に毎公演臨みたいです。今回始めて赤堀さんの作品に参加させて頂きます。赤堀さんの描く世界に登場する人物は、なぜだかわからないけど、どこか愛おしく思える瞬間があると、お稽古場で皆さんのお芝居を拝見しながら感じておりました。私が演じる"若い女"にもそんな瞬間があるのでしょうか...。見に来てくださった皆さまの心に、どのような感覚が残るのか、すぐさま感想を教えていただきたいほどに楽しみです!

薬丸翔コメント

身が引き締まる思いで、開幕を待ち構えています。まだやらなきゃいけないことが多くあると思っています。自分を疑い、慢心せず、本番になったら色んなものを脱ぎ捨てられる柔軟さを持って本番に臨みたいと思っています。誰か特定の人が「ボイラーマン」なのだと思っていましたが、「誰か」がではなく、「誰しも」がボイラーマンなのではないかと今はそう思っています。生きる希望とかそういうものではなく、それでも生きていくという決意を感じる作品なのだと個人的には思っています。

井上向日葵コメント

この作品をお客さんの前で演じる時、どのような反応があり、作品の空気がどう変化していくのか全く予想が出来ません。だからこそ日々の違いを新鮮に感じながら楽しんで演じていきたいです! 登場人物たちがどこから来てどこに向かっていくのかは、観る人によって応えが変わってくるのではないでしょうか。舞台上の一瞬一瞬を、ただぼんやり眺めてみたり、時には細部に注目してみたり、ぜひいろいろな視点でお楽しみいただけたらと思います。

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赤堀雅秋プロデュース「ボイラーマン」

2024年3月7日(木)~2024年3月20日(水) ※公演終了
東京都 本多劇場

スタッフ

作・演出:赤堀雅秋

出演

田中哲司 / 安達祐実 / でんでん / 村岡希美 / 水澤紳吾 / 樋口日奈 / 薬丸翔 / 井上向日葵 / 赤堀雅秋

※樋口日奈の「樋」は二点しんにょうが正式表記。
※U25チケットあり。

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読者の反応

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小出真佐樹 「最後まで行く」onNetflix @masaki_kd

#赤堀雅秋 プロデュース
#ボイラーマン

どこにでもありそうな路地裏で
どこにでもいそうな人達が次々と
本人にとっての大問題に
周囲を付き合わせていく

観客も一見どうでもいいような
悩みを共有されては
放り出されていくような
悪夢のような
不条理劇のような作品

客席は爆笑に次ぐ爆笑でした https://t.co/lLVdP7iypA

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