深田博治、狂言修行の“修士論文”「花子」を披く「万作先生からお許しをいただいた以上は全力で」

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第18回「狂言ざゞん座 ー夢か現かー」が、6月24日に東京・宝生能楽堂で行われる。これに先駆け、出演者によるの記者懇談会が、本日4月26日に、東京・野村よいや舞台で行われた。

左から高野和憲、深田博治、月崎晴夫。

左から高野和憲、深田博治、月崎晴夫。

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左から月崎晴夫、高野和憲、深田博治。

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「狂言ざゞん座」は、野村万作一門の狂言師、深田博治高野和憲、月崎晴夫、破石晋照による、研鑽のための狂言会。記者懇親会には、深田、高野、月崎、そして万作が出席した。本公演で、深田は万作の教えのもとで「花子」を披く。「花子」は、狂言修行の“卒業論文”と呼ばれる「釣狐」を披いた狂言師のみがシテを勤められる演目で、狂言修行の“修士論文”とも呼ばれている大曲だ。深田は「実は3年前に『花子』をやりたいと万作先生にお願いしたところ、『花子』に必要な格調がまだないからと、ご許可をいただけなくて。あと2・3年経って、向いていれば教えると言われました」と明かし、「当時、『花子』をやるつもりですでに場所を予約してしまっていたので、どうしようと思ったのですが、そのときは先生からは『博奕十王』がよいのではないかとご進言いただきました。しかし、その公演は結局、コロナ禍で1年3カ月延期されまして。あのときに『花子』をやっていたら精神的に大変だっただろうなということは、あとから感じました」と振り返る。

第18回「狂言ざゞん座 ー夢か現かー」チラシ表

第18回「狂言ざゞん座 ー夢か現かー」チラシ表[拡大]

深田は「今回は、同人メンバー(高野、月崎、破石)に『花子』をやりたいという思いを話し、先生に4人で再度ご相談したところ、お許しをいただきました。自分の芸が『花子』に向いたという、大それたことは思っていませんし、最初の稽古でも先生から『深田のもともと持っている質を考えると、とても「花子」に向いているとは思えない』と言われました。今回、自分が一番苦手としているところに向かっていくことになります。『花子』という山は想像以上に高すぎて、まだ頂が見えていない状態ですが、先生からお許しをいただいた以上は全力で挑みたいですし、先生から『花子』という大曲の魂を、少しでも受け継いでいきたい」と意気込みを述べた。

高野は「花子」で小アドの太郎冠者を勤める。高野は「これまで『花子』の太郎冠者は2度やらせていただきましたが、前に演じたのが11年前。忘れたこともあるかと思いますので、改めて先生から教えていただきたい」と述べ、「太郎冠者は、主人とその女房の間で板挟みになる役。深田さんと、そのお相手役の(野村)萬斎さんの間で、どううまくパスを回していけるかが課題ですね。非常に難しいです」と話す。

「悪太郎」でシテを勤める月崎は「今回、深田くんが『花子』を披くということで、それに対応する演目は何が良いかと高野くんとも相談し、出た演目のうちの1つが『悪太郎』でした。先生にお願いしたら、『良いですよ』ということでしたので、やらせていただくことになりました」と経緯を説明。役どころについて「悪太郎は、狂言だと悪い男というイメージ。先ほど深田くんも、自分の性格と真逆の役をやるのが難しいと言いましたが、私自身も同様で、悪太郎のいじわるなニュアンスを出すのに苦労しています。悪太郎自身の人間性が変わっていくときの差が、『悪太郎』の面白いところだと思いますので、そういった部分をうまく表現し、お客様にお届けできれば」と語った。

万作は「今、深田の話を聞いて、そんなことがあったかな?と……(笑)」と、3年前に深田に「花子」の許可を出さなかったことを忘れてしまったと明かし、周囲の笑いを誘う。深田の挑戦について「今回、彼の持つ個性と『花子』をどのように調和させるか、本人にとっても挑戦だと思うのですが、教える側も暗中模索しております」と真摯に述べる。また「花子」と「悪太郎」が、それぞれ歌舞伎に取り入れられている作品であることに触れ、「僕自身、六代目(尾上)菊五郎さんに憧れていましたから、彼の『身替座禅』も拝見していますし、市川猿翁さんの『悪太郎』も観ています。当時古典狂言の窮屈さを感じていたからこそ、そういった舞踊の名人による歌舞伎を観て、面白いな、素晴らしいなと思いましたね」と振り返る。また狂言の魅力を「狂言の持っている本質的な良さというものは、単に面白い、単におかしいということではなく、おかしさの中に人間としての善悪や長短が、必ず描かれているということ。僕としては、狂言のそういった本質的な部分を出してくれることを、これからの演者に期待しています」と述べ、深田、高野、月崎に視線を送った。

さらに万作は「狂言師にとっては能舞台はふるさとでございますから、今回のように能舞台でやるときは美しい様式を整えたうえで、なおかつ面白いものにしていってほしいですね。笑いの中で、お客様方にふっと、作品の中で描かれていることは、今を生きる私たちが考えていることと共通しているな、と思われたり、何かを感じ取っていただければ。そうすることが、これまで狂言が息づき、現代に伝えていく理由なのではないかと思います」と話した。チケットの一般販売は5月19日10:00にスタート。

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第18回「狂言ざゞん座 ー夢か現かー」

2023年6月24日(土)
東京都 宝生能楽堂

解説

出演:羽田昶

小舞「海人」

出演:野村万作

「悪太郎」

出演:月崎晴夫、石田幸雄、破石晋照

「花子」

出演:深田博治、野村萬斎、高野和憲

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柏木ゆげひ(朝原広基) @kashiwagiyugehi

深田博治、狂言修行の“修士論文”「花子」を披く「万作先生からお許しをいただいた以上は全力で」(ステージナタリー4/26) https://t.co/kEb8gFw07L 「第18回『狂言ざゞん座 ー夢か現かー』が、6月24日に東京・宝生能楽堂で…野村万作一門の狂言師、深田博治、高野和憲、月崎晴夫、破石晋照による」

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