東京・調布市せんがわ劇場の演劇ディレクターチームより、チーフディレクターの
調布市せんがわ劇場では、今年4月に演劇ディレクターチームを発足。チーフディレクターの佐川のほか、桑原、櫻井と
ディレクターチームの成り立ちについて、佐川は「もともとせんがわ劇場では、せんがわ劇場演劇コンクールを通して、若手の演出家を育成しようという流れがありました。そこから僕らのように、実際に劇場運営に関わるコンクール出身の演劇人が増えてきて、さらにもう少し劇場事業に関わっていくという形で結実したのが、このディレクターチームだと思います」と語る。今年は、前年度に決まっていた事業にそれぞれのディレクターが制作統括補佐という形で関わっているが、来年以降はディレクターたちが企画したプロジェクトも始動。スタッフやキャスティングの決定はもちろん、事業ごとの予算管理や広報活動についても、劇場のスタッフと話し合いながら行っていく。
ただ、彼らはディレクターである一方で、佐川は
佐川は「自分の作品を作り続けているだけだと、消費していく感じがしたんです。でも劇場事業に携わることで、自分が社会とどうつながりを持っているのか、社会にどう貢献できるかを考えるようになって。以降、作品を作るときに、誰に向かって作るのか、どういうことやりたいのかが明確になりましたね」と実感を述べる。さらに佐川は、チームでディレクターを務めることのメリットとして、「例えば芸術監督というような形で誰か1人が請け負うと、その人が抜けたあと、引き継いだ人が一からすべてを立て直していくことになる。でもチームであれば、誰かが辞めたり、あるいは自分のクリエーションに集中したいと思ったときにも補い合うことができるので、いい循環のサイクルが生まれると思うんです。自分たちの活動とディレクターの仕事を両立するうえで、僕は助かっています」と実感を語った。
4人のディレクターは密に情報共有を行いながら、基本的には合議制で仕事を進めている。各ディレクターのタイプの違いについて尋ねると、桑原は「ざっくりと4人を演出班と制作班に分けていて、『こういうのやってみたい』ということを考えるのが佐川さんと僕。それが本当に実現可能かどうかを考えるのが柏木さんと櫻井さん」と返答。さらにディレクター4人のうち佐川と桑原、柏木が第4回せんがわ劇場演劇コンクールの“同期”であることに触れ、「小劇場で活動しているとなかなか横のつながりができにくいというか、例えばある協会に入っているとか同じ大学出身だとか、あるカテゴリーで固まってしまうイメージがあって。でもこのコンクールでできたつながりはある意味無作為なので(笑)、出自の違う人たちばかりで面白い」と笑顔を見せる。
それを受けて佐川が「来年、第11回のキャッチコピーは『コミュニケーション増し増し』なんですけど、コンクールに参加すると、確かに新しい人たちと出会えます。僕たちスタッフも、参加団体には賞を獲るかどうかだけじゃなく、それぞれが何かを得て、コンクールのあとも活躍してもらいたいと思っているので、何か変わりたいと思っている人たちはぜひ参加してほしい」と期待を述べる。また櫻井は、本コンクールで市民審査員を公募していることに言及。「市民の方が作り手と対話できる、アフターディスカッションという時間を設けます。コンクールを通して、アーティストだけでなく演劇のお客さんも育てたいなと思っていますし、15歳以上は参加できますので、大学生などぜひ若い人にも参加してもらい、“推し”を作ってもらいたいです」と語り、合同取材会を終えた。
第11回せんがわ劇場演劇コンクールの応募受付は、1月6日にスタート。専門審査員には銀粉蝶、東京デスロックの多田淳之介、鳥公園の西尾佳織、映像作家のムーチョ村松が名を連ね、企画監修を演劇ジャーナリストの徳永京子が務める。応募の詳細は劇場公式サイトにて確認を。
※桑原秀一の「桑」は旧字体が正式表記。
※初出時、本文に誤りがありました。訂正してお詫びいたします。
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