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ロイヤルコート劇場のメンバーが、新国立劇場との「劇作家WS第1段階」語る

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「ロイヤルコート劇場×新国立劇場 劇作家ワークショップ」の第1段階の様子。

「ロイヤルコート劇場×新国立劇場 劇作家ワークショップ」の第1段階の様子。

5月中旬に「ロイヤルコート劇場×新国立劇場 劇作家ワークショップ」の第1段階が東京・新国立劇場にて行われ、ロイヤルコート劇場アソシエイトディレクター(国際)のサム・プリチャード、リテラリーマネージャーのジェーン・ファローフィールド、劇作家のアリスター・マクドウォールが、演劇ジャーナリスト・徳永京子の取材に応じた。

「ロイヤルコート劇場×新国立劇場 劇作家ワークショップ」はイギリスのロイヤルコート劇場と新国立劇場が1年にわたり行う、劇作家のためのプロジェクト。公募で集まった、日本国内を拠点に日本語で劇作を行う35歳までの劇作家が新作戯曲を執筆し、さまざまなアプローチを経験しながらそれぞれの戯曲を進化させていく。なおワークショップは3段階で行われ、5月に1週間かけて行われた第1段階のあと、12月に第2段階、2020年5月に第3段階が開催される予定だ。

まず徳永は、ロイヤルコート劇場の劇作家ワークショップの成り立ちについて質問する。プリチャードは「ロイヤルコート劇場は、現代作家たちの劇作を上演することを主旨に建てられた、劇作家向けの劇場です。劇作家ワークショップがいつ始まったのかはわかりませんが、少なくとも25年間は続いていると思います」と説明。ファローフィールドは、「このワークショップで大切なことは、作家たちがそれぞれのグループを主体的にリードし、実践していくということです。またワークショップの内容は、実施する場所によって毎回異なります」と話す。その言葉に頷きながら、プリチャードは「このワークショップは、私たちが取得したメソッドを日本の劇作家に教えているというものではありません」と言い、「1月に事前来日した際に、日本の劇作家、演出家や、作家とお仕事されている多様な方たちに会いに行き、日本の作家が何を求めているのか、何を有益と考えているかなどをリサーチをしました。その際、日本の作家たちは傾向として、仲間と作品を立ち上げることがあまりない、ということがわかったので、今回のワークショップでは国内外の既存の戯曲を持ち寄って、一緒に読んだり、作品について話をしたり、ということを中心に行なっています」と今回のワークショップの組み立てを説明する。

「日本の劇作家は、1人で苦しめば苦しむほどいいものが書ける、という思いを持っている人が多いのでは」と徳永が指摘すると、ファローフィールドは「イギリスでも同じような傾向がありますね。ただ仲間の劇作家たちとの交流はあります」と返答。プリチャードは「今回のワークショップでは、新しい戯曲を作るにあたっていろいろな取り組み方があることを知ってほしいと思っています」と続け、「例えばイギリスでの戯曲の作り方はブラッシュアップ、手直しを大切にしているので、ある程度の時間をかけて何度も推敲し、書き直すことで戯曲を発展させていきます。日本の作家の多くは、イギリスに比べるとその傾向が少ないと聞きしました。ですので、作家たちには5月の第1段階のあと1本戯曲を書いてもらい、12月に予定されている第2段階でブラッシュアップを加え、来年春の第3段階でさらに手を加えていく……というプロセスを体験してもらいたいと考えています」と語った。

他者の意見を自分の戯曲に採り入れることに、作家の抵抗はないかと徳永が問うと、ファローフィールドは「ブラッシュアップは、作家が書いた戯曲を本当に最高なもの、真実味のある産物にしたいという思いから行なっていることなんです。もちろん作家にとってブラッシュアップは非常に大変な作業だと思いますが、だからこそ周りの人は作家に敬意を払いますし、イギリスの演劇界において作家は、とても高い地位を持っているんです」とイギリスの演劇事情について補足した。

ロイヤルコート劇場は、1年に12本から16本程度、新作戯曲にこだわって上演している。劇場が作品を委嘱する際、上演日程やテーマ、大小あるどちらの小屋で上演するかも決めずに、まず作家に執筆を依頼する。「そのようにあまりに何も決まっていないと、書きづらくはないですか?」と徳永がマクドウォールに尋ねると、マクドウォールは「イエス!」と即答して場が笑いに包まれる。「とは言え、作家が劇場と関わりを持つようになってから実際に委嘱されるまでは数年かかることもありますし、書き下ろした戯曲が実際に上演されるまでは何度もブラッシュアップを重ねるので、作家にとってはプレッシャーを軽減してくれるものになります。また劇場は僕にも、僕が書いた戯曲にも非常に敬意を払ってくれますし、逆に自分が何かに行き詰まってしまったらそれを解決するために導いてくれたり、答えを見つけるのを手伝ってくれたりする。だから本当に多くの劇作家が、その人にとって大きな作品と言われる作品をロイヤルコート劇場で上演していますし、ほかの劇場で大きなチャレンジをした劇作家が、またロイヤルコート劇場に戻って来るのは、アーティストとしてもっともっと成長したいという思いがあるからだと思います」と実感を述べた。

日本の劇作家に対して、プリチャードは「複数の作品を並行して執筆していたり、時間がなかったり、非常に大きなプレッシャーを感じながら書いているのだなと思いました」と印象を述べる。ファローフィールドは「テーマと視覚的なイメージについては非常に明確に持っていると思いますが、イギリスの劇作家たちのように『なぜ?』という(創作上の)問いかけが少ない。日本の劇作家は、必ずしも答えがなくても書けるんだなと思いました」と述べると、マクドウォールは「『ここには正解っていうものがないんだ』ってことに気付くのには時間がかかるでしょうね。僕は戯曲を書けば書くほど自分が知っていることは少ないんだと思うようになりました」と思いを語った。

最後にプリチャードは、「この劇作家ワークショップは、ロイヤルコート劇場にいらっしゃるお客様に、斬新で画期的な作品を観ていただくことを目標としていますが、同時にこれまで関わりを持った国内外すべての作家と関係性を築いていくことも重要だと考えています。新国立劇場との提携関係を作ることも、私たちにとっては重要なミッションです。今後、この関係性がもっと発展していくことを願っています」と期待を語った。

※初出時、本文に誤りがありました。訂正してお詫びいたします。

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