1月9日に東京・新国立劇場 小劇場にて開幕するパルコ・プロデュース「アンチゴーヌ」の舞台稽古の様子が公開された。
公開されたのは、十字型の舞台の四方を観客が取り囲む特設ステージで、アンチゴーヌ役の
蒼井は本作について「お客様には、とても近い距離から私たちの演技をご覧いただけると思うので、一緒に『アンチゴーヌ』の世界を形作っていただけたらと思います」とコメント。また生瀬は「老若男女を問わず、ご覧いただいた方には観劇のあと、自分の中になにが生まれたのかを確かめてみていただけたらうれしいですね」と述べている。1月27日まで東京公演が行われ、2月に長野、京都、愛知、福岡を巡演する。
蒼井優 コメント
ジャン・アヌイの「アンチゴーヌ」という戯曲に出会ったのは19歳のとき。アンチゴーヌの強さがとても魅力的で、それから折に触れ、読み返してきた作品です。
その作品に今回、栗山さんの演出で出演できることをうれしく思っています。ただ、これまでは自分がアンチゴーヌを演じるつもりで読んだことはまったくありませんでした。だから今回初めて、自分が演じる前提で台本を読み、稽古に取り組んでいますが、激しい台詞の応酬シーンを稽古したあとには知恵熱が出て(笑)。そういうところからも、アンチゴーヌという女性が持つ熱量の大きさを実感しています。
それだけ挑みがいのある戯曲に、生瀬さんを始めとする素晴らしいキャストのみなさんと挑めることが心強いですし、今回は十字型になっている特設ステージでの上演。お客様には、とても近い距離から私たちの演技をご覧いただけると思うので、一緒に「アンチゴーヌ」の世界を形作っていただけたらと思います。
生瀬勝久 コメント
今回、アンチゴーヌ役を蒼井さんが演じますが、話される言葉のひとつひとつが明確で、理路整然とものを考える方ですね。栗山さんが彼女でアンチゴーヌを、と思われたのも納得できますね。稽古で彼女と相対してみると、彼女はアンチゴーヌの純粋かつ強い台詞を自分のものにすることで、言葉に説得力を与えているのだな、と感じます。
この作品は古代ギリシャで書かれた戯曲を原典に、フランスの劇作家ジャン・アヌイが1940年代に執筆したもの。今も読み継がれる古典が元になっているだけあって、人間の真理が深く描かれています。
こう言うと難しく感じられるかもしれませんが、描かれるのは本当にシンプルで普遍的なテーマ。どなたがご覧になっても、それぞれに感じるところのある作品に仕上がっていると思います。老若男女を問わず、ご覧いただいた方には観劇のあと、自分の中になにが生まれたのかを確かめてみていただけたらうれしいですね。
梅沢昌代 コメント
私は今回、アンチゴーヌに仕える乳母、そしてコロスの二役を演じます。乳母はアンチゴーヌというお姫様の側にいる存在なので、栗山さんからは「浅草っぽい庶民感は出さないように」という指示をいただいて(笑)。そこを意識して稽古をしているところです。
私自身、この戯曲に触れて思うところがありましたが、これをご覧になるお客様方も、今の世の中や自分の生き方に対して、なにか疑問を見つけられるような気がします。みなさんの心の中で尾を引くような作品になるよう、今回の役を務めたいと思います。
伊勢佳世 コメント
栗山さんの演出を受けるのは今回が初めてなので、とにかく栗山さんのイメージに必死でついていく日々。でも、栗山さんの演出を受けることで、今まで自分の中にはなかった感覚を発見する瞬間もあって楽しいです。
今回演じるイスメーヌは、アンチゴーヌに残された唯一の家族。イスメーヌにはアンチゴーヌを見守りたいという気持ちがある。
稽古を通じてそう感じるようになってきました。彼女のそういう部分を(蒼井)優さんと共有し、大事にしながら演じたいです。
佐藤誓 コメント
この作品は特設ステージで上演されますが、舞台装置については栗山さんから、交差点をイメージしたものだと伺いました。この作品にふさわしいステージになっていますが、舞台のとても近くに客席がありますし、周りをお客様に囲まれながら演技をするのは緊張しますが、楽しみでもあります。
栗山さんの頭の中には衛兵を含め、作品のイメージができあがっているので、そこにどれだけ近づけるかが勝負。庶民として生きる衛兵の姿をしっかり演じたいと思います。
渋谷謙人 コメント
初めて台本を読んだときから、アンチゴーヌに惹かれるエモンの気持ちが自分の中にスッと入ってきたので、そこを手がかりに稽古を進めることができました。本当に素敵な台詞がたくさんある台本です。それを俳優たちが発したときに生まれるものを、ご覧になる方々に確かめていただけたら、と思っています。
岩切正一郎 コメント
稽古を観たときに、アンチゴーヌ役の蒼井さんを主旋律に、ジャン・アヌイの言葉がポリフォニックに響いてきて、台詞をより際立たせる栗山さんの演出の力を感じました。
アンチゴーヌは裸足で野原に入ったり、さわやかな空気を感じたくて朝早く起きたり、自然を一瞬のうちに深く感じることが自分の生き方だと思っている女性。一方クレオンは、社会の中でささやかな幸福を噛みしめるように生きる大人の男性です。2人の対立から今の時代、聞こえにくくなっている声、「Non」の声を聞き取る。そこに私は、今この作品を上演する意味を感じています。
栗山民也 コメント
「あわれ彼女は娼婦」(2016年)を演出した際、蒼井優が自分の全身に問いかけながら演技し、声や感情の流れ方を役に重ねられる俳優だと知った。「アンチゴーヌ」をやるなら彼女だと思った。そして、声に奥行きのある生瀬勝久も、この作品にふさわしい俳優だと思った。
世界や人間にはひとつの絶対的な答えなどない。「YES」と「NO」の間には、無数の解答が隠されている。そこから自分自身はなにをどう選ぶのか。この戯曲にはその命題がたくさん含まれている。
このカンパニーには稽古で、その場でしかできないことを追求する俳優が揃った。彼らの感性と全身を使って、かつて存在した人々の言葉と行動を今に響かせて、この戯曲に含まれた命題に挑んでいる。
この世界の多くの問題は、方程式では解くことができない。だからこそ、この演劇を通じて、1人で世界に立ち向かった少女の、その問いの意味について考えたいと思っている。
パルコ・プロデュース「アンチゴーヌ」
2018年1月9日(火)~27日(土)
東京都 新国立劇場 小劇場(特設ステージ)
2018年2月3日(土)・4日(日)
長野県 まつもと市民芸術館(特設会場)
2018年2月9日(金)~12日(月・祝)
京都府 ロームシアター京都 サウスホール(舞台上特設ステージ)
2018年2月16日(金)~18日(日)
愛知県 穂の国とよはし芸術劇場PLAT(舞台上特設ステージ)
2018年2月24日(土)~26日(月)
福岡県 北九州芸術劇場 大ホール(舞台上特設ステージ)
作:ジャン・アヌイ
翻訳:岩切正一郎
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