沖野晃司×江口拓也ら天命のため刃を交える、クロジ「銀の国 金の歌」

クロジ「銀の国 金の歌」が、10月4日に東京・俳優座劇場にて開幕した。

福圓美里と松崎亜希子が主宰する演劇プロデュース団体・クロジの最新作となる本作。脚本は森悠が、演出はあサルとピストルの三浦佑介が手がけ、福圓、松崎に加え、ボクラ団義の沖野晃司、Theatre劇団子の斉藤範子、江口拓也、おぼんろの末原拓馬らが出演する。

物語の舞台は女帝のスグリ（松崎亜希子）が治める国・流宮（るく）。漁師頭の娘・琴（福圓美里）や、祝言を控える鰤刃（狩野和馬）と千弦（木村はるか）のカップル、スグリの側近の槌谷（江口拓也）や美禰（末原拓馬）らは、漁で生計を立て慎ましいながらも平穏に暮らしていた。

ところがある日、大漁を祝う席で盲目の巫女・凪（斉藤範子）が「この国をそっくり変えてしまうほどの、強い獣が参ります」と不穏な未来を予言。そこへ1人の男・銀（沖野晃司）が現れ、人々は次第に銀、凪、スグリ、そして帝・礼賢（山口太郎）の因縁に巻き込まれていく。

14人にのぼるメインキャストそれぞれの個性を、1人ずつ丁寧に描く本作。目まぐるしく展開するストーリーが、上手と下手の高所ステージを使い、照明の変化でスピーディーに展開していく。唐津（大高雄一郎）率いる山賊たちによるアクロバティックな戦闘シーンや、刃鳴りが響く殺陣、プロジェクションマッピングを使い錯乱する銀の心象風景を描く演出にも注目したい。

沖野と斉藤は特異な絆で結ばれた男女を熱演。松崎は強くて弱い孤高の女をクールに表現し、彼女を支える男であり女の美禰を末原は妖しく、江口は使命を背負い奮い立つ奥手の槌谷を、真っ直ぐに演じきった。福圓はなまりを効かせた語り口で、シリアスな物語にほっとする存在感を放つ。

男の笑い声と女の泣き声がクロスするクライマックス。「この国が壊れていくのをもう見たくない」と嘆く人々の悲痛な声は、果たして聞き届けられるのか。結末は劇場で確かめよう。上演時間は休憩なしの約2時間15分。公演は9日まで行われ、当日券は開演の1時間30分前より受付にて抽選で販売される。