羊文学が鳴らす美しく温かなノイズ、ホーム感に満ちた初の日本武道館ワンマン

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羊文学のアジアツアー「Hitsujibungaku Asia Tour 2025 “いま、ここ(Right now, right here.)”」の東京公演が10月9、10日に日本武道館で行われファイナルを迎えた。

羊文学とは?

塩塚モエカ(Vo, G)、河西ゆりか(B)、フクダヒロア(Dr)の3人からなるオルタナティブロックバンド。2020年8月にソニー・ミュージックレーベルズ内のレーベル・F.C.L.S.からメジャーデビューを果たした。2023年に前年4月発表のメジャー2ndフルアルバム「our hope」が、音楽アワード「第15回CDショップ大賞2023」の大賞“青”を受賞。同年9月にリリースされたテレビアニメ「『呪術廻戦』第2期」のエンディングテーマ「more than words」は、国内ストリーミング1億再生を突破し、日本レコード協会プラチナ認定作品に選定されるなどヒットを記録した。2025年1月にはフジテレビ系月9ドラマ「119エマージェンシーコール」の主題歌「声」を発表した。5月には日本最大規模の音楽アワード「MUSIC AWARDS JAPAN」にて最優秀国内オルタナティブアーティスト賞と、「more than words」で最優秀国内オルタナティブ楽曲賞の最優秀賞を受賞。10月には通算5枚目となるフルアルバム「D o n’ t L a u g h I t O f f」をリリースした。また2025年は4月に初のアメリカツアー「Hitsujibungaku US West Coast Tour 2025」を完走。現在は初の大阪・大阪城ホール、東京・日本武道館公演を含むアジアツアー「Hitsujibungaku Asia Tour 2025 “いま、ここ(Right now, right here.)”」を実施中で、日本武道館2DAYS公演のチケットは発売開始直後に両日ソールドアウトとなった。10月からは欧州6カ国7都市を回る初のヨーロッパツアー「Hitsujibungaku Europe Tour 2025」の開催が決定しているなど、活動の舞台をグローバルに展開している。

羊文学(Photo by Daiki Miura)

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初の日本武道館ワンマン

「“いま、ここ(Right now, right here.)”」は、羊文学にとって自身2度目、過去最大規模となるアジアツアー。彼女たちは9月15日に行われた初の大阪・大阪城ホールを皮切りに、ソウル、上海、北京、広州、台北、バンコクを巡り、再び日本へと帰ってきた。ファイナルとなる日本武道館2DAYS公演のチケットは即日ソールドアウト。羊文学は10月8日発売のニューアルバム「D o n' t L a u g h I t O f f」の楽曲を軸に、新旧織り交ぜたセットリストを展開して熱狂を生み出した。この記事では、羊文学が初めて日本武道館の舞台に立った初日の模様をレポートする。

「Hitsujibungaku Asia Tour 2025 “いま、ここ(Right now, right here.)”」東京公演の様子。(Photo by Daiki Miura)

「Hitsujibungaku Asia Tour 2025 “いま、ここ(Right now, right here.)”」東京公演の様子。(Photo by Daiki Miura) [拡大]

ライブの幕開けに披露されたのは、「D o n' t L a u g h I t O f f」の1曲目「そのとき」。儚げなピアノのリフレインが響く中、スポットライトの灯りが塩塚モエカ(Vo, G)をぼんやりと照らす。彼女の繊細な歌声にじっくりと耳を傾けていると、歪んだギターを合図に河西ゆりか(B)とサポートドラムのユナ(Dr / ex. CHAI)が演奏に加わり、その瞬間、体の芯まで響くような轟音が会場全体を支配。羊文学はシグネチャーとも言える、静と動が入り混じるこの曲で美しく壮大なオープニングを飾った。3人は「Feel」で軽やかな風を吹かせたかと思うと、続く「Addiction」ではノイジーなギターとリズム隊が生み出す重厚なビートで演奏を加速。その後も「いとおしい日々」「つづく」「マヨイガ」「声」など表情の異なる楽曲を次々と繰り出し、バンドの振り幅の広さを感じさせるパフォーマンスを展開した。

塩塚モエカ(Vo, G)(Photo by Daiki Miura)

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オーディエンスと完成させた「GO!!!」

超満員の客席を眺めながら「超キレイじゃない?」「キラキラ!」と、ストイックな演奏時とは打って変わって楽しそうに語る塩塚と河西。塩塚は「来週からヨーロッパツアーに行くからさ、日本に帰ってきた感覚があまりなったけど、みんなに会えて帰ってきたんだと思えました」と呼びかけ、最新アルバムから「ランナー」をダイナミックに鳴らしてライブを再開した。次に披露された「OOPARTS」では、近未来感の漂うSEが流れる中、天井から吊られた円形の巨大照明が徐々に降下。ステージ脇のモニターに映る映像にもノスタルジックなエフェクトが加わり、楽曲の世界観をより強固にしたステージが届けられた。ユナが打ち鳴らす重厚なドラムに思わず歓声が上がったのは、アニメ「【推しの子】」第2期のエンディングテーマ「Burning」。美しさと狂気が同居したノイジーなサウンドが爆音で響き渡ると、3人にあてられたオーディエンスは体を激しく揺らして音楽を楽しんでいた。

羊文学(Photo by Daiki Miura)

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この日のハイライトの1つとなったのが、ライブ終盤に披露された「GO!!!」。塩塚はアジアツアーをともに巡り、「D o n' t L a u g h I t O f f」のレコーディングにも参加したユナを“スペシャルドラマー”と紹介しつつ、オーディエンスに向けて「最後の最後にみんなの声も聞いてみたいぞ、と思ってこれから『GO!!!』という曲をやるんですけど、私が『一斉に!』と言ったら『ゴー!』って返してくれたら楽しい(笑)」と呼びかける。そして演奏が始まると、塩塚の言葉に応えるようにともに歌う観客たちの姿がモニターに映し出されるなど、日本武道館にピースフルな光景が広がった。羊文学は本編最後に2020年のメジャーデビュー曲「砂漠のきみへ」を披露。美しいコーラスワークと力強いバンドサウンド、温かなノイズを会場いっぱいに響かせてステージをあとにした。

河西ゆりか(B)(Photo by Daiki Miura)

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羊文学(Photo by Daiki Miura)

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「みんなが温かくて優しいからかな」

強烈なアンコールに応えて再び姿を見せた羊文学は、最新アルバムからユナとスタジオで音を合わせながら作ったという「春の嵐」をセレクト。塩塚の憂いを帯びたボーカルで歌われる葛藤の日々をつづった言葉たちに、場内はどこか感傷的なムードに満たされていった。塩塚は自身が足を運んだというYUIやSigur Rós、チャットモンチーの武道館公演の記憶を辿りつつ、「思い出の武道館ではありますけど、いざ自分が立ってみるとけっこうホーム感がある(笑)。いろんな人に『武道館おめでとう』とか言われて、緊張するじゃんと思ってたんだけど、みんなが温かくて優しいからかな」とひと言。河西は「私は高校生のときにポール・マッカトニーのライブを観に来ました。そのときポールがジャージで武道館に立っててめっちゃカッコよかったから、私もジャージでやりたいかも(笑)」と話して客席を笑いを誘った。そして羊文学は最後に「光るとき」を大切に奏でると、客席に向かって何度も何度も手を振り、初の日本武道館ワンマンを締めくくった。

羊文学(Photo by Daiki Miura)

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セットリスト

「Hitsujibungaku Asia Tour 2025 “いま、ここ(Right now, right here.)”」2025年10月9日 日本武道館

01. そのとき
02. Feel
03. Addiction
04. いとおしい日々
05. つづく
06. マヨイガ
07. 声
08. ランナー
09. OOPARTS
10. mother
11. 夜を越えて
12. Burning
13. more than words
14. mild days
15. GO!!!
16. 未来地図2025
17. 砂漠のきみへ
<アンコール>
18. 春の嵐
19. 光るとき

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NOTHING @nothingblue_1

@natalie_mu Incredible

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