⼀夜限りのミュージカルコンサート、開幕です
ステージにはヨーロッパの街並みを思わせる6つの集合住宅が並ぶ。タイトルに冠された「Maison de Poupée」とは、フランス語で「ドールハウス」の意。開幕のブザーが鳴ると、「人生は螺旋階段。ゆっくりと回りながら上がっていく」と、今年6月に30歳の誕生日を迎える玉井が、さまざまな出会いと別れを繰り返す中で生まれては消えるいくつもの“私”について語るモノローグが流れる。そして「⼀夜限りのミュージカルコンサート『Maison de Poupée』、開幕です」と物語の始まりを告げると、集合住宅の窓に6人の女性のシルエットが浮かび上がり、玉井はこのコンサートのテーマソングとして書き下ろされた「Maison de Poupée」を軽やかに歌った。
このコンサートには武部聡志(Key / Band Master)、須長和広(B)、玉田豊夢(Dr)、小林香織(Sax, Flute)、前田雄吾(Manipulator)からなる演奏メンバーに加え、遠藤令、小野礼実、ASUKA Yazawa、decomayu、SHIHO、Amaneの女性6人と、
新曲「まわるきもち」「君に100個⾔いたいことがあんだ」初披露
ここで場面は転換し、第2幕へ。真夜中、玉井が演じる主人公・SIHOのもとに1本の電話がかかってくる。受話器の向こうにいるのは、過去の自分。「元気? 元気ならいいんだけど、あんまり無理はしないでね。そっちはどう? 楽しい?」という電話の声が切れると、SIHOはももいろクローバーZの「手紙」を優しく歌いながら誰かへの手紙をしたためる。何度も書いては消し、書き上げた手紙で作った紙飛行機を飛ばすと、手紙はもう1人のSIHOの手元へ。2人のSIHOは「ベルベットの森」を対峙しながら歌う。そして初披露の新曲「まわるきもち」へ。これは玉置周啓(MONO NO AWARE)が書き下ろした楽曲で、インパクトのある歌詞とキャッチーなメロディが印象的なポップナンバー。7人のSHIHOは「驚き桃の木 ヒザの傷気にしないキッズ」と声を合わせてはつらつと歌った。
第3幕の主人公・HIROMIはどこか影のあるロックスター。長髪のウィッグに革ジャン姿でHIROMIに扮した玉井は、ストラトタイプのギターをかき鳴らしながら「HAPPY-END」を熱唱した。そして「それでは最後に新曲を」と告げると、まさに当日配信されたばかりの新曲「君に100個⾔いたいことがあんだ」を初披露。こちらは柴田隆浩(忘れらんねえよ)の提供による荒削りなロックナンバーだ。観客はHIROMIやアンサンブルたちとともに「アイラビュー!」「アイニーヂュー!」と声を上げ、拳を突き上げた。ステージを終えたHIROMIは「今日のライブ……どうだった?」と自信なさげなか細い声でマネージャーに声をかける。「なんだか疲れちゃった……ずっと戦ってきたから……」と、HIROMIはももクロのナンバー「追憶のファンファーレ」の歌詞をつぶやき、そのままパフォーマンスへと突入。最後は歌詞の通りに立ち上がり、力強い表情を見せた。
6人の主人公とSHIORIが合流、フィナーレへ
「さよならのうた」と題された第4幕は、玉井が演じる主人公・TIRIと、ITARUが演じる男性の別れのシーンから始まる。同棲を解消し、部屋を出るTIRI。2人は玉井が自ら作詞したバラード「Sepia」でデュエットし、ドラマチックな演技とともに美しいハーモニーを響かせた。恋人と別れ、新たな道を選んだTIRIが電車に乗り込むと、ももクロの「Brand New Day」へ。6人の女性アンサンブルは乗客、Sは車掌となって揺れる電車を表現。コミカルかつさわやかなパフォーマンスで旅立つTIRIの背中を後押しした。続く第5幕「ドールハウスガール」の主人公は、人形遊びが好きな女の子・MAI。巨大なぬいぐるみのMOMOが、ももクロのナンバー「momo」に乗せて、MAIを不思議な空想の世界へと誘う。同じ格好をした6人のMAIが現れシンクロダンスをすると、「Spicy Girl」ではミラーボールに反射した光が武道館いっぱいに広がり、場内には銀の紙吹雪が舞った。
華やかな第5幕から一転、第6幕は静かな波の音から始まる。スクリーンには海辺に佇む女性を描いた絵が映され、ステージには絵の中の女性・RIOに扮した玉井の姿が。青いワンピースに麦わら帽子のRIOは砂浜の上で、中森明菜のカバー「スローモーション」を歌う。さらに、爽快なアコースティックギターの音色に乗せて「マリンブルー」が歌われると、自動制御された観客のペンライトによって場内は一面ブルーに染まった。ここまで6人を演じてきた玉井は、最後に本人ともっとも近い主人公・SHIORIとして登場。メインテーマの「Maison de Poupée」が流れ、SHIORIは冒頭と同じベッドの中へ。再び目覚ましのベルが鳴り響き、起き上がったSHIORIは「Another World」を歌う。そこに、“分身”であるアンサンブルがAMI、SIHO、HIROMI、TIRI、MAI、RIOとなって現れ、7人で「We Stand Alone」を合唱。物語をクライマックスへと導き、最後はSとITARUも合流し、玉井のソロプロジェクト第1弾楽曲である「暁」でフィナーレを迎えた。
予定外のダブルアンコール
玉井とアンサンブルキャスト、バンドメンバーへの惜しみない賞賛の拍手はやがてアンコールを求める拍手へと変わる。これを受けて玉井は、パーカーにデニムのショートパンツというラフなファッションで再びステージに現れると、林哲司の提供による2012年のソロナンバー「涙目のアリス」を披露。ミュージカル仕立ての本編中、常にヘッドセットマイクで歌っていた玉井はここで初めてハンドマイクを握り、リラックスした表情で歌を届けた。そして玉井はアンサンブルキャスト8人を再び呼び込み、さわやかなロックナンバー「泣くな向⽇葵」でフィニッシュ。玉井の30歳の誕生日をひと足早く祝福するかのように、盛大に金テープが放たれた。ここまで一切MCを挟まずステージを進行してきた玉井だったが、最後にひと言、「お楽しみいただけましたか? 今回は新しい挑戦というか、シアトリカルなライブにできたらいいなということで、ここまでひと言もしゃべらずにやってきましたけど、武道館で初めてソロライブをやらせていただくという大切な1日を、皆さんと一緒に過ごせたことを本当にうれしく思います」と感謝の言葉を伝え、改めてアンサンブルキャストとバンドメンバーを1人ずつ紹介。全員1列に並んで手をつないで挨拶し、すべての演目は終了となったが、客席の「しおりん!」コールは鳴り止まない。玉井は急遽、武部のピアノ演奏でももクロの「オレンジノート」を歌い、予定外のダブルアンコールで2度目のソロ公演を終えた。
セットリスト
玉井詩織「―30th Anniversary―SHIORI TAMAI SOLO CONCERT『Maison de Poupée』」2025年5月6日 日本武道館
01. Maison de Poupée
02. 日常
03. 宝石
04. Eyes on me
05. 手紙
06. ベルベットの森
07. まわるきもち
08. HAPPY-END
09. 君に100個言いたいことがあんだ
10. 追憶のファンファーレ
11. Sepia
12. Brand New Day
13. momo
14. Spicy Girl
15. スローモーション
16. マリンブルー
17. Another World
18. We Stand Alone
19. 暁
<アンコール>
20. 涙目のアリス
21. 泣くな向日葵
<ダブルアンコール>
22. オレンジノート
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