Aoooとライブナタリーがタッグを組み、ゲストにジェニーハイを迎えて行われた本公演。この異色とも言える組み合わせは、Aoooメンバーのたっての希望で実現したものだ。そんな貴重な一夜を見逃すまいと会場には多数の観客が詰めかけ、開場後ほどなくしてフロアは早くも立錐の余地もないすし詰め状態となった。
ジェニーハイ
満員のオーディエンスがざわつきながらもじっと開演を待ち続ける中、ほぼ定刻どおりに場内が暗転。まずステージに現れたのは、先攻を務めるジェニーハイだ。中嶋イッキュウ(Vo / tricot)、川谷絵音(G / indigo la End、ゲスの極み乙女、ichikoro、美的計画、礼賛)、くっきー!(B / 野性爆弾)、小籔千豊(Dr)、新垣隆(Key)の5人が盛大な拍手に迎えられて位置につくと、すかさず川谷のトリッキーなピッチベンドギターが空気を切り裂くように轟く。それに呼応してフロアが叫声とともに沸き立つと、真っ赤なドレスを身にまとった中嶋が「宇宙服着てみたい 涙袋取ってみたい」と憂いを含むシルキーボイスを響かせ始め、オルタナティブな装いのアッパーポップチューン「ランデブーに逃避行」でライブが幕を開けた。
ギラギラしたカッティングギターと艶やかなピアノ、心地よく歪んだベース、几帳面なビートを刻むドラムが混然となってオーディエンスの体を揺らし、手拍子を打たせ、腕を挙げさせる。バンドは続けて「ルービックラブ」「片眼で異常に恋してる」を矢継ぎ早に投下。曲中では川谷とくっきー!がおもむろに中嶋のもとへにじり寄って彼女を取り囲んだかと思えば、なぜか中嶋とくっきー!がしばしのにらみ合いを続ける場面も。さらにZOO「Choo Choo TRAIN」を彷彿とさせる回転ダンスなども披露し、観客を大いに沸かせた。
続く「コクーンさん」でストリングスの同期を絡めたスタイリッシュな16ビートをお見舞いしたのち、満員のフロアを見渡しながら満足げな笑みを浮かべるくっきー!が「人々、すごいすなあ。頭の上走って移動できるよ。白髪混じりの方もいりゃ“若剛毛”の方もいりゃ……」と笑いを誘う。中嶋は「ツーマンで対バンするのもリキッドに出るのも初めてなので、最後まで楽しんでいきたいと思います!」と笑顔をはじけさせ、喝采を巻き起こした。
その後はMCもそこそこに、ストイックなまでにノンストップのパフォーマンスを畳みかけていくジェニーハイ。ちゃんみなの歌声を収めた同期トラックとのデュエット形式で披露された「華奢なリップ」、くっきー!のダブルストップ奏法が印象的な「プリマドンナ」、中嶋がストラトキャスターをかき鳴らしながら歌う「バイトリーダー典子」、軽快なピアノリフとメカニカルなギターが絡み合う「シャミナミ」と、息をもつかせぬ連投でフロアを圧倒した。
怒濤のラッシュがひと段落すると、小薮がおもむろに「ガッキー(新垣)がひと言もしゃべっておりません」と切り出す。発言を促された新垣が「みんな、愛してるぜ」と聴衆に愛を囁くと、続いて挨拶を振られた川谷も同じ「みんな、愛してるぜ」のセリフで追随。これを契機にメンバー全員が同セリフを言う流れが生まれるも、くっきー!は「おめえら、グレートだぜ」とアレンジを加え、小薮による「なんで『GTO』やねん」のツッコミを引き出すことに成功した。
そんな軽妙なクロストークでフロアが笑いに包まれる中、ふいに川谷が新曲の話題で仕切り直す。まだレコーディングすらしていない、できたばかりの未発表曲を最後に初披露するという。そして中嶋による「ジェニーハイが止まっていないことを証明するために、新曲をやって終わりたいと思います!」との宣言に続き、倍テンビートと爽やかなメロディラインが融合した新たなアッパーチューン(タイトル未定)でフィニッシュを決めた。
Aooo
セットチェンジを終えた舞台上に後攻・Aoooのメンバー4人が元気よく現れ、聴衆は待ってましたとばかりに大歓声でこれを迎え入れる。お立ち台の上から石野理子(Vo)が「Aoooです! よろしくお願いしまーす!」と声を張り上げたのち、ツミキ(Dr)のハイハットが荒々しい4カウントを響かせると、すりぃ(G)がスリリングなギターリフをかき鳴らし始め、これにやまもとひかる(B)が抑えの効いたリズミカルなベースラインで追従。たちまち客席を大音量の「オイ! オイ!」コールで埋め尽くし、Aoooのステージは「アパシー」で華々しくスタートした。
4人はその勢いのままに、スラップベースをフィーチャーした「青い煙」、客席を撃ち抜くポーズがフロアを沸かせる高速ナンバー「BAQN」、聴衆のハンドクラップと石野の奏でるシンセリードが印象的なディスコポップ「イエロートイ」といった楽曲群を立て続けに投下。息をもつかせぬ怒濤の展開で会場の空気を絶え間なく大きくうねらせ、オーディエンスのボルテージは序盤から天井知らずに上昇し続けた。
ジェニーハイとの念願のツーマンライブが実現している現状に興奮を隠しきれない様子の石野は「ヤバいね!」と表情を緩めつつ、彼らを対バン相手に指名した理由を語り始める。「私たちAoooは、もともと違うところで活動していた人たちが集まってできたバンドなんです。ジェニーハイさんももともと違うバンドで音楽をやっていたり、違う仕事をしていたりという経緯の中でできたバンドじゃないですか。そこに共通点があるなと思って、一緒にツーマンライブをやったら面白そうって思った……のと、純粋にメンバーみんなジェニーハイさんのこと大好きなので」と笑顔で述懐。ダメ元でオファーしたところ快諾されて逆に驚いたという石野だが、中嶋に関しては「前のバンドのときに“tricotのイッキュウさん”としてライブをご一緒したり遊んだりしていただいていたので、また違うフィールドでこうやってライブできているのがすごくうれしい。胸熱でした(笑)」と感慨深げに胸中を述べた。
その後AoooはファンキーなダンスチューンからメロウなR&Bナンバーまでを多種取りそろえ、盤石の演奏力で緩急自在のステージを展開する。客席とのコール&レスポンスを契機に突入した「ネオワビシイ」ではパンキッシュで性急なビートと「ネオワビシイ!」の大合唱で会場をひとつにまとめあげ、王道J-POP楽曲をオルタナアレンジしたようなアッパーチューン「水中少女」では石野がストラトキャスターを抱えて熱唱。その石野は「今日きっとAoooを初めて観ますよって方もいらっしゃったと思うんですけど、こういうライブをするバンドです」と、はにかみながらも誇らしげに告げた。
そしてメランコリックなムードと退廃的なシューゲイズ感が同居するミディアムナンバー「エイプリル」、切なくも疾走感あふれるポップロックナンバー「サラダボウル」をエネルギッシュに畳みかけて本編を締めくくると、アンコールではリラックスムードのトークを展開。「めっちゃ熱い夜だった」と満ち足りた表情を浮かべる石野から話を振られたすりぃは「いやーもう、みんなね、本当に……愛してるよ」とジェニーハイのMCを引用した挨拶で笑いを取る。これに乗じてツミキも「お前ら、グレートだぜ」と追従し、やまもとによる「みんな愛してるよ!」はこの日最大級の歓声を巻き起こしたが、石野は巧妙にこの流れから逃げおおせることに成功した。
するとおもむろにすりぃが繊細なアルペジオを爪弾き始め、Aoooはラストナンバーとしてメロディアスなアッパーチューン「リピート」をパフォーマンス。強烈な個性と確かな実力を兼ね備えたバンド2組による濃密な一夜を、パワフルかつエモーショナルに締めくくった。
セットリスト
「Aooo×ライブナタリー 2man Live」20254月15日(火)LIQUIDROOM
ジェニーハイ
01. ランデブーに逃避行
02. ルービックラブ
03. 片目で異常に恋してる
04. コクーンさん
05. 華奢なリップ
06. プリマドンナ
07. バイトリーダー典子
08. シャミナミ
09. 新曲(タイトル未定)
Aooo
01. アパシー
02. 青い煙
03. BAQN
04. イエロートイ
05. MORE
06. 黄昏メモリーロード
07. ネロリ
08. フラジャイル・ナイト
09. ネオワビシイ
10. 魔法はスパイス
11. 水中少女
12. エイプリル
13. サラダボウル
<アンコール>
14. リピート
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AoooのTV・ラジオ出演情報
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石野理子 @yoooutopia
先日のAooo×ジェニーハイ 対バンのライブレポートが掲載されました✍️
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