浅香唯

アーティストにも広がる麻雀の熱狂 後編 [バックナンバー]

目指すは「Mリーグ」超え!?プロ雀士・浅香唯の「麻雀アミューズメントパーク」構想

「Mリーグ超えを目指す」という「麻雀アミューズメントパーク」構想とは

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いよいよ本日10月3日に麻雀プロリーグ戦「Mリーグ」2022-23シーズンが開幕する。今シーズンも優勝シャーレを目指して熱い戦いが予想される中、音楽ナタリーでは今年8月に日本プロ麻雀協会のプロテストに合格し、晴れてプロ雀士の仲間入りを果たした浅香唯のインタビューをお届けする。前編では麻雀に目覚めたきっかけなどについて語ってもらったが、後編ではプロテストの話題を中心に、「『Mリーグ』超えを目指す」と大胆不敵な目標を掲げる「麻雀アミューズメントパーク」構想などについて話を聞いた。

取材・/ 丸澤嘉明 撮影 / 小原泰広

プロになろうと思ったきっかけはライザップ!?

──浅香さんがプロになろうと思ったのはどうしてでしょう?

真面目に麻雀に向き合いたかったというのが一番大きいですね。本当に麻雀が好きなんですよ。23歳くらいからずっとやってきて、麻雀をやっているときはすごく楽しいし、奥が深いゲームなので飽きることがまったくない。それなのに麻雀はまだ知らないことがたくさんあって、そもそも点数計算も50符くらいまでしか覚えてなくて(※1)。60符は30符の倍にすればよくて、70符はめったに出てくることないのでいっこうに覚えてこなかったんです。牌効率(※2)も考えて打ったことがなくて。もちろん河(※3)に捨てられている牌もあるので牌効率がすべてではないとわかっていますけど、プロの人たちはそういう情報も含めて考えて打っているからあんなに高い勝率で勝てるわけで、私は一生ただの麻雀好きで終わるのかなと思ったらすごく悔しくて。プロになれば嫌でも勉強するし、自分を追い込むためにプロになる決心をしたのが一番の理由ですね。

──それは具体的にいつ頃ですか?

それこそ20代の後半の頃から漠然とプロになりたいと思っていたんですけど、プロテストの過去問を見たときに難しすぎてげんなりしたんですよ。なんじゃこれはと。そこであきらめちゃって、30、40代はずっと趣味で打っていたんですけど、1つきっかけになったのはライザップですね。

──ライザップですか?

はい。私は49歳から50歳になるタイミングでライザップをやったんですけど、体が変わるのはもちろん、それ以上に心がすごく変わったんです。若い頃は奥歯を噛み締めながらがんばっていたのに大人になるとそういう機会が減っていたから、チャレンジするのってすごく大事だと思い出して。歳を重ねて努力することがだんだん少なくなってくる中で、本気で麻雀に向かい合いたいと思ったときに、若いときにあきらめたプロ雀士になる夢にもう一度挑戦してみようと思いました。

──いくつになっても新しいことに挑戦できるのは本当に素敵ですね。

ありがとうございます。ただ、この年齢になった人にしかわからないと思うんですけど、恐ろしいくらい記憶力が落ちてるんですよ。若い頃はきっともっと簡単に覚えて一晩寝ても忘れることなんてなかったはずなのに、この年齢でどんなに勉強しても「私それやったっけ?」ってすぐ振り返ってしまうくらい。でもこの年齢で学習していくことはすごく意味のあることだと思いました。

──ライザップでの筋トレも麻雀プロテストのための勉強も、自分が努力した分だけ結果として表れるから、そういう意味では共通している気もします。

そうかもしれないですね。でもどんなにがんばっても実らないことってあると思うんですよ。今回のプロテストも実らない可能性もあったわけだし。私はもし受からなかったらそれはそれでまた考えようと思っていて、「何がなんでも一生をかけてプロになるんだ!」とは考えていなかったですね。そのときの自分の気持ちに素直でいることが大事かなって。

※1. 麻雀は符と飜の組み合わせによって点数を割り出す。符が上がった手牌の形につく基本点のようなもので飜は役の数のこと。例えば、親の場合30符2飜は2900点で、40符2飜は3900点となる。符はだいたい20~50符で収まるが、同一牌を4枚そろえる槓子を作ると60符以上となることがある。

※2. 最短でテンパイへ至るために効率のいい選択を行うこと。

※3. 牌を捨てる場所のこと。卓の中央部分。

麻雀の取材ということで、マットと同じ緑色の衣装を着用してきた浅香。

麻雀の取材ということで、マットと同じ緑色の衣装を着用してきた浅香。

プロテストの準備から本番まで

──YouTubeで配信していた企画「プロ雀士への道」では、小林剛さんや多井隆晴さん、あとは村上淳さんなど、「Mリーグ」(※4)でも活躍されているプロ雀士の方たちが登場されていましたよね。

ホント芸能人でよかったと思いました(笑)。私にとっては本当に雲の上のプロの方々なので、まさかそういう方々とお会いできるなんて夢のようですし、さらに直々に指導いただけるなんて、普通はありえないことなので。

──そのあとにプロテストを受けるところもYouTubeで配信されていました。普段見ることのできないテスト会場の様子などがわかり、大変貴重な映像でした。

プロテストがあるといってもそれがどういうものなのかは経験した方しかわからないと思うので、あそこにカメラを入れさせてもらえたのは非常にありがたかったですね。

──実際にプロテストを受けてみて、ご自身の感覚としてはいかがでしたか?

思った通りレベルが高くて。私が受けたのは日本プロ麻雀協会の21期後期テストなんですけど、そこにいる人たちは全員天才だと思いながら見ていました。とんでもなく難しい試験だったのでそれに受かるのはすごいなって。他人事みたいですけど(笑)。

──試験では面接もありましたよね。そういう機会もめったにないと思うのですが。

ないですね。最初は堅苦しい雰囲気があったんですけど、面接官の方が高校の後輩だったというつながりがあって。そういうのがわかってだんだんと雑談になったので、思っていた面接とはちょっと違ったかな(笑)。

※4. 2018年7月に発足した、競技麻雀のチーム対抗戦のナショナルプロリーグ。参加する各選手をMリーガーと呼ぶ。

プロとしての矜持

──そして見事テストに合格したわけですが、改めてプロ雀士になった感想や思いをお聞かせいただけますか?

本当は「私、プロ雀士になりました!」ってファンの人たちに報告して「よかったね」って言ってもらってそれで終わりにするつもりだったんですよ。そしたら想像以上に反響が大きくて、芸能活動を辞めてプロ雀士に転向したくらいの感じのコメントまでいただいたりして。私はそこまで大ごとに考えていなかったんですけど、周りの反応が大きくてびっくりしました。

──麻雀のプロって、ほかに仕事をしながら二足の草鞋でやってる方もいらっしゃるのに、まるでそれ1本で勝負するかのように受け止められたんですね。

そうそう(笑)。もちろん皆さん本気でプロになろうと思って試験を受けていらっしゃるんですけど、プロになってからの道はみんなバラバラなんですよ。私と同期の人もプロ雀士としてだけ活動していく方々ばかりではなかったので。

──とはいえやはりアマチュアとプロは違うと思うんですが、浅香さんの考えるプロとアマの線引きはどこにあると思いますか?

取り組む気持ちだけなんです。プロになったから何かが用意される世界ではまったくないので、単純に私の気持ちの問題で、プロとして認めていただいたからには恥ずかしくない麻雀を打たないといけない。それはうまい下手だけではなく、マナーとか立ち振る舞いも含めてプロ雀士でないといけないと思っています。今までは好き、楽しい、面白いだけだったんですけど、そうじゃないところも出てくると思っているので、向き合い方がこれまでとはまったく違いますね。

──長年プロとして芸能活動や歌手活動をされてきましたが、気持ち的には同じですか?

もちろん。プロというものは責任があるし、すごく重みがあるなと。まだまだ不安なことだらけではありますけど。麻雀って「これは正解だった」と思うことより「これは失敗だったな」と思うことのほうがはるかに多いんですよ。自分の思いと反した結果になったときに、アマチュアだったらすぐ切り替えて「よし次!」と思えるんですけど、プロだったらきっとうまくいかなかった原因を突き詰めて同じ失敗を繰り返さないようにしなきゃいけないと思っています。自分を律するというか、追い詰めるというか。

──なるほど。では音楽活動とプロ雀士としての活動での共通点はありますか?

自分が楽しむだけではなく、楽しませるという点は共通していると思いますね。プライベートで打ってる麻雀は別ですけど、放送対局で視聴者の方に見ていただくときにドキドキワクワクしてもらうのはショーとして歌を歌うのと一緒だと感じますね。

浅香唯

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プロ雀士としての今後の展望

──プロになった今後の展望として、「麻雀アミューズメントパークを作りたい」とおっしゃっていましたが、具体的にどのようなものでしょうか?

麻雀ってどうしても時間を取られるので、小さいお子さんがいるご家庭の方は麻雀をしに行きづらいと思うんですよ。そういう人や家族もみんなも楽しめる……例えば託児所があったり、子供同士が集まって麻雀を楽しめたり。家族で出かけていって、現地に着いたら集合する時間を決めて、それまでは各々がやりたいことをやれるような場所があったら面白いなって。子育てされてるお母さんたちが麻雀を楽しめたらいいし、お父さんたちもコソコソ麻雀しなくていいし。麻雀のイメージってまだまだよくないところがあるので、麻雀がスポーツとして認知されたらいいなと思います。

──このコラムの第1回で田口淳之介さんに取材させていただいたときに、田口さんも「麻雀はスポーツだ」とおっしゃっていました(参照:田口淳之介が見据えるプロ雀士としての未来とは)。特に「Mリーグ」をパブリックビューイングで観て感動したそうなんですが、浅香さんは「Mリーグ」はご覧になりますか?

もちろん。でも「Mリーグ」は本当に選ばれし者しか立てないですし、「Mリーグ」に出たくてプロになる人もいますけど、私はまったく考えてなくて。あれはもちろんすごく新しくてカッコいい。でも私は別のやり方でその上を行きたい! 麻雀アミューズメントパークでみんなの度肝を抜きたいです(笑)。

──素晴らしいですね(笑)。「Mリーグ」で好きな選手やチームはありますか?

もちろん好きな選手はたくさんいます。多井さんは破天荒で大好きですよ。ひと昔前は「麻雀はこうでなければいけない」っていう凝り固まった考え方があったと思うんですけど、多井さんはそれを「ダサい」と言ってなくした人なんですね。そういう意味では麻雀界に新しい風を入れてくれた革命家だと思いますし、あとは二階堂瑠美・亜樹姉妹もカッコよくて好きです。私よりも歳下ですけど勝手に憧れのお姉さんって思ってます。

──これほどまでに浅香さんを魅了する麻雀ですが、その麻雀の魅力ってどういうところですか?

一期一会ですかね。最初に配られた牌はそのときしか会えないので、いかにその出会いを大切にして育てるのかが麻雀の魅力だと思います。というのを多井さんがおっしゃってて。「まさに! その通り!!」って、同じことを思ってました。他人との勝ち負けよりも自分に勝ったか負けたかが大きくて、たとえ勝負に負けたとしても納得いく麻雀ができたときは充実感があるんですよ。それくらい奥深いゲームですね。

──最後に、これから麻雀を始めようと思っている人にメッセージをお願いします。

麻雀ってルールが複雑で難しそうという理由で始めない方がたくさんいらっしゃると思うんですけど、自分のペースで楽しめるゲームだと思えばもっとハードルを低く入ってこれるんじゃないかなと思います。こればっかりはやってみないと面白さがわからないと思うので、誰かルールがわかる人と一緒に1回試しに始めてみてほしいですね。ちょっと覗いてみるだけでも景色が変わると思うので。今はまだ男性が多い世界でもあるので、ぜひ女性の方にもたくさん入ってきてほしいと思います。

浅香唯

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1984年にマンガ雑誌「少女コミック」主催の「ザ・スカウトオーディション’84」にて、同誌に連載されていたマンガ「シューティングスター」のヒロイン名を冠した“浅香唯賞”を受賞し、翌1985年6月にシングル「夏少女」でデビュー。1986年にドラマ「スケバン刑事Ⅲ 少女忍法帖伝奇」に3代目麻宮サキ役で出演して一躍トップアイドルの仲間入りを果たす。2022年6月21日、デビュー37周年記念日にこれまでリリースした全シングル&アルバムの音楽ストリーミングサービスでの配信がスタートした。また同年8月、日本プロ麻雀協会のプロテストに合格したことを自身のYouTubeチャンネルにて発表。代表曲に「C-Girl」「セシル」「Believe Again」などがある。
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