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細野ゼミ 4コマ目(後編) [バックナンバー]

細野晴臣とソウルミュージック

細野晴臣をビビらせたソウルミュージシャンとは? 伝説的アーティストとのエピソードに安部勇磨&ハマ・オカモト仰天

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活動50周年を経た今なお、日本のみならず海外でも熱烈な支持を集め、改めてその音楽が注目されている細野晴臣。音楽ナタリーでは、彼が生み出してきた作品やリスナー遍歴を通じてそのキャリアを改めて掘り下げるべく、さまざまなジャンルについて探求する連載企画「細野ゼミ」を展開中だ。

ゼミ生として参加しているのは、氏を敬愛してやまない安部勇磨(never young beach)とハマ・オカモト(OKAMOTO'S)という同世代アーティスト2人。第4回では細野のキャリアにおいても欠かせないジャンルであるソウルミュージックをテーマにピックアップした。前編ではその魅力や同ジャンルにおけるベースの役割について語ってもらったが、後編ではそれぞれが好きなソウルシンガー、細野と大御所ソウルアーティストたちとのエピソードに迫った。

取材 / 加藤一陽 / 望月哲 題字 / 細野晴臣 イラスト / 死後くん

実はすごく地味なソウルミュージック

ハマ・オカモト リズムの変化って、その時々の踊り方とかに影響されるんですかね。踊り方とか、踊る環境が時代によって変わっていき、それに伴いリズムも変わっていくっていう。

細野晴臣 The Metersもそうだけど、ニューオリンズにはストラットっていうリズムがあって、それって歩いていくビートなんだよね。

──なるほど。前進するビートってことですね。

細野 だから歩くテンポの……歩きながら踊っていくじゃない? 彼らは。歩いているのがもう踊りだから。

ハマ 「SOUL TRAIN」も花道でみんな、おのおの踊ってますよね(笑)。

安部勇磨 うん。あれはすごい。

細野 そうやって歩くといいんじゃないかね?

安部 今日の帰りからやってみます(笑)。

ハマ そういえばThe Commodoresの「The Bump」っていうシングルの日本盤を買ったら、裏ジャケに「バンプ」というダンスの踊り方の解説が載ってたんですよ。

細野 ああ、あったね。

ハマ だからもうダンスと音楽がセットなんでしょうね。この曲で踊りましょうって。実際、細野さんはソウルとかで踊ってたんですもんね。

安部 そうだ、ベースの練習をする代わりに踊ってたっておっしゃってましたもんね。

細野 うん、そうだね。踊りってコツがあるでしょ? 今のヒップホップの踊りとかは全然わかんないけど、昔のR&Bの踊りは、こうアフタービートで腰を落として、上半身は固定してあまり暴れない。音楽ってやっぱり、それなんだなって思う。うまいやつはみんな、あまり派手な動きをしないから(笑)。ラテンとかもそうなんだけど、コンガを叩いててもみんなクールだからね。

ハマ そうですね。ほとんど立ちっぱなしというか。

細野 白人のミュージシャンのアクションとかすごく派手だよね。でも黒人でそういう人ってあんまりいない。ソウルミュージックはすごく地味なんだよ。

安部 確かに。黒人のミュージシャンってホントに姿勢よくミニマルに演奏してるイメージがあります。

ハマ 派手なアクションではなくて、きっちりとしたボックスステップで魅せたり。あとはコール&レスポンスをグループでやるとか。それが煽りのパフォーマンスというか。

細野 そうだね。ゴスペルがベースにあるのかもしれない。

安部 なるほど! そういう精神性が表面に出てくるのかもしれないですね。

細野 白人はデタラメなんだよ。

ハマ安部 はははは(笑)。

ハマ そうですね、もうちょっとわかりやすいというか(笑)。

細野 「見せたい!」っていう欲が満々だから。

ハマ・オカモトを魅了した「What's Going On」

──例えば皆さんそれぞれの中で、「ソウルといえば」みたいなアーティストを挙げるとすると誰になりますか?

ハマ 僕はマーヴィン・ゲイですね。曲で言えば「What's Going On」。

──名曲ですね。

ハマ モータウンってずっとミュージシャンのクレジットを載せていなかったんですけど、マーヴィン・ゲイは「What's Going On」というアルバムで、誰がギターを弾いて、誰がベースを弾いてとか、初めて詳細なクレジットを掲載したんですよね。そしたらそのアルバムを出した次の年のツアーで、今までなんとも言われなかったバックバンドのメンバーが飛行機から降りてきた途端、「キャー!」って声援が飛んだっていう。

安部 バックミュージシャンに脚光を当てたんだ。

ハマ あと「What's Going on」という楽曲が持つメッセージ性もブラックミュージックの歴史を変えたと思うんです。愛や恋ではなく、差別や戦争といった問題に対する個人的な意見を歌に乗せるという、それまで誰もやったことがないような画期的なことをマーヴィン・ゲイはこの楽曲でやっていて。僕の中でソウルといえば、すごくベタですけど、やっぱり「What's Going on」になりますね。

細野 その通りかもしれない。

ハマ お! ゼミ長に認めていただけた。

安部 100点じゃないの?(笑)

──細野さんも「What's Going on」はリアルタイムで聴かれていましたか?

細野 うん、ラジオで聴いていた。でもマーヴィン・ゲイは、すぐ死んじゃったんだよね。

ハマ そうですね。

細野 お父さんに撃たれて。

安部 えっ!? そうなの。

ハマ うん。ソウルシンガーには精神的に悩みを抱えていたりする人がけっこう多くて。自殺しちゃったりとか薬物依存とか多いですよね。

細野 撃たれる人も多い。その前にサム・クックって人が撃たれたりして。

ハマ ソウルシンガーには光と影みたいなドラマがけっこうありますよね。

細野晴臣&安部勇磨が挙げる好きなソウルミュージシャンは?

細野 でも、こうやってたどっていくと面白いね。例えばレイ・チャールズの前にナット・キング・コールがいて、レイ・チャールズはデビューした頃、ナット・キング・コールの真似をしていたわけだ。で、サム・クックもみんなに真似されていた、いわば“中心”にいた人だよね。マーヴィン・ゲイも同じく歌手として素晴らしい。僕はそういった魅力的な歌い手さんが好きなんだろうな。

細野 でも、そういう意味で言うと、やっぱり僕はアレサ・フランクリンが好きなんだよ。

ハマ 細野さんにとって、ソウルといえばアレサなんですね。

細野 うん。

──安部さんの中でソウルと聞いて思い浮かぶアーティストは?

安部 ソウルではないのかもしれないですけど、プリンスですかね。

細野 ソウルだよ。

ハマ プリンスは、めちゃくちゃソウルシンガーだよ。

安部 いいんですか? プリンスは好きで聴いてました。ソウルと言えば、僕の中では、あの上裸のジャケットのプリンスなんです。あとThe Jackson 5も一時期よく聴いてました。

──細野さん、マイケル・ジャクソンってどうでした?

細野 後半っていうか晩年が素晴らしいね。

ハマ おお、そうなんですね。

細野 あのサウンドプロダクションが素晴らしい。

ハマ それは80年代以降ですか?

細野 もっとあと。亡くなるちょっと前ぐらいとかね。すごいなあと思って。

ハマ そこのポイントなんですね。細野さんにとってのマイケル・ジャクソンは。

細野 あるいはThe Jackson 5か、どっちか(笑)。

ハマ 初期か後期か(笑)。

細野 ザ・コーポレーションっていう作曲家チームがいて、彼らがThe Jackson 5に素晴らしい楽曲を提供していて。

ハマ ちなみに、クインシー・ジョーンズが制作に携わった「Thriller」や「Bad」といったマイケル・ジャクソンの大ヒットアルバムはリアルタイムで聴かれていましたか?

細野 そんなに入り込まなかったね。なんかポップミュージックとして通りすぎていっちゃった。ブラックミュージックに一番のめり込んだのは20代の頃だな。僕が20代だった60~70年代はファンクの全盛期で、いろんなバンドがいっぱい出てきてすごく刺激的だったんだよ。

ハマ 中でも好きだった曲ってあるんですか?

細野 うん、いまだに忘れられない曲がある。中でもOhio Playersの「Ecstasy」っていう曲がすごいんだよ。

ハマ Ohio Players、カッコいいですよね。

細野 すごい、あんな曲はできない。

──ファンクがすごかった時代って、今の若い世代の人だとちょっと想像がつかないかもしれませんですね。

ハマ そうですね。うらやましいというか、なんか楽しそう。なおかつ細野さんは当時、ベースもバリバリ弾いてたわけですよね。

細野 まあ、ヒット曲が中心だったけど。Ohio Playersの「Ecstasy」も大ヒットしたね。あとはThe Staple Singersも好きだった。それでマッスルショールズ産のサウンドを知ったんだよ。フェイム・スタジオ(リック・ホールが1960年代初頭にアメリカのアラバマ州マッスルショールズに設立したレコーディングスタジオ。アレサ・フランクリン、オーティス・レディングなど、そうそうたるアーティストの名作が生まれた)で生まれるサウンドに興味を持った。

ハマ マッスルショールズも映画になりましたね(2014年公開の「黄金のメロディ マッスル・ショールズ」)。フェイム・スタジオのドキュメントとして。

細野 うん。僕も観に行った。

ハマ フェイム・スタジオのハウスバンドはThe Swampersでしたっけ。

細野 そう。すごく地味な、スーパーの店員みたいな連中がやってて(笑)。

ハマ それこそアレサ・フランクリンのバックでも演奏していますよね。アレサのレコードを聴いた、とあるプロデューサーが「なんてファンキーなバンドなんだ。ぜひ彼らを使いたい!」ってレコーディングのためにフェイム・スタジオを訪ねたんだけど、いつまで経ってもバンドが来なくて。そしたらスタジオにいた白人の若者たちが「僕らです」って(笑)。そのプロデューサーは完全に黒人が演奏してると思ってたみたいで。

細野 そうそう。

ハマ 彼らはのちに評価されて。ハウスバンドといえば、あとはスタックスレコードのBooker T. & the M.G.'sも有名ですよね。彼らは白人2人、黒人2人という編成で。のちに忌野清志郎さんともレコーディングして(1992年に発表された忌野清志郎の2ndソロアルバム「Memphis」)。

安部 へえ!

ハマ 清志郎さんが彼らのファンで。

細野 清志郎の「夢助」(2006年リリース)というアルバムで僕は曲を作ったんだ(「あいつの口笛」)。あのアルバムはM.G.'sのギタリスト、スティーヴ・クロッパーがプロデュースを手がけて、ナッシュビルでレコーディングしたんだよね。で、曲を送ったら「これこのまんま使いたい」って言われて(笑)。

ハマ すごい話……。

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細野晴臣、ドクター・ジョンに肩を揉まれる

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