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細野ゼミ 4コマ目(前編) [バックナンバー]

細野晴臣とソウルミュージック

ソウルミュージックに惹かれるベーシストの宿命に迫る

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活動50周年を経た今なお、日本のみならず海外でも熱烈な支持を集め、改めてその音楽が注目されている細野晴臣。音楽ナタリーでは、彼が生み出してきた作品やリスナー遍歴を通じてそのキャリアを改めて掘り下げるべく、さまざまなジャンルについて探求する連載企画「細野ゼミ」を展開中だ。

ゼミ生として参加しているのは、氏を敬愛してやまない安部勇磨(never young beach)とハマ・オカモト(OKAMOTO'S)という同世代アーティスト2人。第4回では、細野のキャリアにおいても欠かせないジャンルであるソウルミュージックをテーマに、その魅力や同ジャンルにおけるリズム隊の役割について語ってもらった。

取材 / 加藤一陽 / 望月哲 題字 / 細野晴臣 イラスト / 死後くん

モータウンの曲は全部好き

──今回のテーマはソウルミュージックです。ソウルと言えばハマさんは昨年公開されたモータウンレコードのドキュメント映画「メイキング・オブ・モータウン」にコメントを提供されてますよね?

ハマ・オカモト そうですね。映画、すごく面白かったですよ。ベリー・ゴーディーJr.っていうモータウンの社長が盟友のスモーキー・ロビンソンと一緒にレーベルの歴史を振り返るという内容で。関係者の証言や貴重な音源も随所に盛り込まれているんです。

細野晴臣 それは観たいなあ。

ハマ 何がすごいって、当時の会議の様子がテープに記録されているんですよ。「来週のThe Temptationsのシングルなんだけど、……じゃあ『My Girl』がいいと思う人?」とか。最近、音楽系のドキュメント映画が増えていますけど、「メイキング・オブ・モータウン」はめちゃくちゃ作りがよかったです。ファンにとっては、たまらない映画でした。

細野 僕もモータウンレコードには影響を受けている。若い頃に踊ってたのもモータウンの音楽ばっかりだったよ。モータウンの曲は全部好きだった。やっぱり曲がよかったからね。実力のある作家もそろっていたし。ホーランド=ドジャー=ホーランド(H=D=H)とか。

──ハマさんはどういうきっかけでソウルに興味を持ったんですか?

ハマ 僕は本当の入り口でいうとファンクで、The Metersなんですよね。で、The Metersを経過して彼らのプロデュースも手がけていたアラン・トゥーサンに行って。

細野 お、ニューオリンズだ。

ハマ そうなんですよ。ニューオリンズファンクが入口で。そもそものきっかけはRed Hot Chili Peppersだったんです。彼らが影響を受けたバンドとしてThe Metersの名前を挙げていて、そこから興味を持ってソウルやファンクを聴くようになって。そうすると、すぐにモータウンとかスタックスにたどり着くじゃないですか。僕もモータウンからの影響は大きかったです。もう、めちゃめちゃ聴きました。

──特にブラックミュージックは“レーベル聴き”する楽しさもありますよね。

ハマ そうですね。あと作曲クレジットに注目したり。さっき細野さんも名前を挙げられていたH=D=Hという3人組の作家チームが作る曲が僕も大好きで、レコ屋で「H=D=H」というクレジットを見るたびに興奮してました(笑)。

──安部さんは、ソウルはいかがですか?

安部勇磨 恥ずかしながら、僕、ソウルってあまり知らないんですよ。

ハマ 意外。ネバヤンの曲ってブラックミュージックの影響をところどころから感じるけど。

安部 それが全然詳しくなくて。今回のテーマに合わせて急いで「SOUL TRAIN」を観たりしてる感じで(笑)。僕の中ではソウルって、キラキラしてたり、温かいイメージがあって、なんか冬に合いそうなイメージって言うか。今日もお二人のお話しを通じて、いろいろ勉強しようと思ってます。

細野晴臣はベースを持つとファンキーに

ハマ 今回のテーマを聞いて、細野さんにぜひ教えていただきたいことがあって。YMOでArchie Bell & the Drellsの「Tighten Up」をカバーしたのは、どなたのアイデアだったんですか?

細野 誰の発案だったかな。覚えてないな。あれはね、スネークマンショーと一緒に作ったアルバム(「増殖」)で遊び心でやったんだよ。スネークマンショーに「ジャパニーズ・ジェントルマン・スタンドアップ・プリーズ!」っていうギャグがもともとあって、そこから連想してやったんだと思う。

ハマ たぶんArchie Bell & the Drellsって当時の日本では、あまり知られていなかったはずですよね? その唯一と言っていい代表曲をカバーするという(笑)。

細野 僕も曲しか知らないね(笑)。グループについては知らない。

安部 「Tighten Up」って、それこそ「SOUL TRAIN」でYMOが演奏してた曲?

ハマ そう、あれあれ! あの曲がもともとソウルの大名曲で。

安部 あのとき細野さんはおいくつくらいだったんですか?

細野 31歳ぐらいかな。

安部 今の僕らくらいですね……えー!

ハマ 「Tighten Up」は当時リリースされてからどれぐらい経っていたんですか?

細野 10年くらいかな(※「Tighten Up」は1968年リリース)。とにかく、それまで聴いてきた音楽が全部自分たちの作るものに入っちゃってるから(笑)。

ハマ 確かにそれはそうですね。

細野 ヒット曲の要素がほとんど入ってるよ。深堀りせずにラジオばっかり聴いてたから。例えばThe Beatlesが「Roll Over Beethoven」をやってるでしょ? 僕はそのあとでチャック・ベリーの原曲を聴き出したんだよ。

ハマ 本家をあとから知るみたいな(笑)。

細野 それでびっくりしたんだ。「なんだ、このいなたい音は!」って(笑)。すごく影響を受けたんだよ。チャック・ベリーの音にびっくりしちゃって。

ハマ そういう意味では、逆に「Tighten Up」をYMOで知った人も多いはずですもんね。

細野 多いと思う。

ハマ 日本だとYMOの曲だと思ってる人のほうが多いかもしれない。

安部 僕もそうでした。

ハマ 「Tighten Up」って、ちょっと変な曲じゃないですか。コードも変だし。特にベースラインも決まってるようで決まってなさそうな。

細野 自由だよね。

ハマ YMOのバージョンには、原曲に対する愛をすごく感じるんです。

細野 だってあんな曲、自分たちじゃできないから(笑)。

ハマ やっぱりソウルやファンクがルーツにあるんだなって。

細野 「HOSONO HOUSE」を作ってた頃は、鈴木茂と古いビンテージな音楽ばかり聴いていて。それで70年代の中盤かな? Sly & The Family Stoneとかが出てきて目が覚めたんだよ。結局、心を動かされるのはファンクとかね、ブラックミュージックに刺激されることが多い。やっぱりベースをやってる人間だから。

ハマ 僕もそうです。どうしてもリズムに惹かれますよね。

細野 僕はベースを持つとファンキーな人になっちゃうから(笑)。

ハマ ご自身の作品でもセッションワークでも、細野さんって演奏面に関しては基本ファンクの人ですもんね。

細野 そう言ってくれる人は少ないけどね。

ハマ 本当ですか?

細野 うん。たぶんベースだけやってたら今頃はニューヨークとか行っちゃってたと思う。きっとベースばっかり弾いてるんじゃないかな。

ハマ でもバンドのリズム隊って基本ブラックミュージックが好きですよね。

安部 うちもドラムの子(鈴木健人)が大好きで。

ハマ だよね。リズム楽器やってたら聴いてて楽しいもんね。

安部 僕もハマくんや細野さんのベースを聴いてて、「ここで1拍置くんだ!」とか驚かされることがけっこうある。ソウルやファンクを知ることで、よりそのあたりのことがわかってくるかもしれない。

ハマ そうだね。ブラックミュージックでは、ベースやドラムが要だとされていて、それはミックスとかにも表れてるから。1本だけマイクがあって、ソロを弾く人がわざわざマイクのところまで移動して演奏するような時代を経て、レコーディング技術の向上によって、60年代の中盤くらいから各楽器のサウンドが明瞭に録音できるようになって。それも大きいのかな。

細野 そうだね。どんどん進化して音がよくなってきた時代だから。

ハマ 特にベースは、もともとあまり聞こえなかった楽器だから。

細野 今でも一般の人は「ベースの音ってどれなの?」っていうところがあるね(笑)。

安部 僕はギターを弾くから、作曲やアレンジをメロディ中心に考えちゃうところがあって。なんか白玉(二分音符や全音符)でポンとかいっちゃうのが、すごく無難だなって。

ハマ いやいや、それはそれでよさがあるよ(笑)。

安部 だから最近ベースライン対決とか勝手にやってるんだよね(笑)。ハマくんとか細野さんが弾いてる曲を聴きながら自分なりにベースラインを当てて、「あっ、ここで弾かないんだ!」とかやってて。すごく勉強になる。

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