各界の著名人に“愛してやまないアーティスト”への熱い思いを聞くこの連載、第17回に登場してくれたのは、女優の
取材・
一瞬で恋に落ちた
ハマったのは、母がきっかけなんです。小学4年生のときに仕事の打ち上げの景品でiPodが当たって。せっかくだから何か曲を入れたくてお母さんに相談したら、何枚かCDを貸してくれたんです。その中に「foo?」(2001年2月リリースの2ndアルバム)があって、「サウダージ “D”tour style」を聴いたときに「この人たちは何者なんだ!?」と驚いて、もっとほかの曲も聴きたいと思いました。ちょうどその頃が「ネオメロドラマティック」や「ROLL」の発売時期で、「サウダージ “D”tour style」を初めて聴いた翌日に、ポルノが「うたばん」(1996年10月~2010年3月までTBS系で放送された音楽番組)に出演していたんです。この番組で「ROLL」を演奏する2人の姿を見てファンになりました。そのときのことは今でも鮮明に覚えています。そのあとほかにもいろいろなアーティストの方や役者さんを好きになりましたけど、あのときみたいに一瞬で恋に落ちるような気持ちの昂りは、一生味わえないんじゃないかなと思います。
小中学生の頃はポルノのCDやDVDを買う以外にお金を使っていなかった気がします。特に小学4年生から中学を卒業するまでの5年間は、本当にポルノに捧げてました。最初は音楽性に惹かれてCDを集めていたんですが、初めて買ったライブDVD「5th Anniversary Special Live "PURPLE'S" IN TOKYO TAIIKUKAN 2004」を観てからはお二人の人柄も好きになりました。このDVDには副音声が付いていて、初めてお二人がしっかりしゃベっているのを聴いたんです。曲への思いなどを2時間聴いていたら、気付けば「この2人を追いかけたい」と思うようになっていました。ちなみに初めて自分で買ったCDは「THUMP χ」です。
晴一が!!
私が中学生のときに放送されていた「ポルノグラフィティ岡野昭仁のオールナイトニッポン」(2007年4月~2010年3月までニッポン放送で放送されたラジオ番組)はほぼすべての回を録音していました。まず(岡野)昭仁(Vo)さんが「オールナイトニッポン」でパーソナリティを務めるということが私の中では大きな出来事で。(新藤)晴一(G)さんがパーソナリティの「カフェイン11」(2003年4月にbayfmで放送がスタートしたラジオ番組)は、リアルタイムで聴けなくてもネットであとから聴けたんです。でも「オールナイトニッポン」はそのときしか聴けないから……まあ結局「カフェイン11」も録音していたんですけど(笑)。仕事で地方へ行くときには、親に「絶対録っておいてね!」とお願いしていました。ちなみに、「オールナイトニッポン」のポルノのメジャーデビュー10周年を記念した回では、晴一さんがゲストとして登場したんです。もうこれ、すごいことなんですよ! 世の中のポルノファンが噛り付くようにして聴いていたと思います。その回を録音したMDのラベルには、呼び捨てで失礼なのですが「晴一が!!」と書き込んであります。この回が一番聴き返してると思いますね。晴一さんが結婚されたのを知ったときは、「そうだよね……」と心の中で繰り返しつつ、少し気が抜けたような状態になってしまいました。もちろんポルノが好きという気持ちが変わったわけではありません。でも次の日の学校の授業では、先生の話がなんにも耳に入ってこなくて怒られてしまいました。私としては「今日は数学を勉強している場合じゃないんですよ!」という思いでしたけど。
実は昭仁さんの「オールナイトニッポン」には、神木(隆之介)くんと一緒に出演させていただいたことがあるんです。神木くんと一緒に映画に出演する機会があって、彼がアミューズ(ポルノグラフィティ、神木隆之介の所属事務所)所属ということもあって、ファンだということを公言していたら大人の方々が動いてくれたみたいで……そういう機会をいただけてとてもうれしかったんですけど、緊張しすぎて何をしゃべったか覚えていないんです。椅子に座ったところまでは覚えているんですけど。でも子供の頃ってシャイだったから、「好きです。いつも曲聴いてます」と小声で伝えていたくらいだった気がします。今思えばもっと素直に「大好き」と声を大にして伝えればよかったな。昭仁さんに「好きとか言ってきたくせに全然しゃべらないじゃん」と思われていたかもしれない。申し訳ない……。
10周年の“神”セットリスト
初めて行ったライブは、「横浜ロマンスポルノ'06~キャッチ ザ ハネウマ~」です。母親がKinKi Kidsが好きだったので彼らのライブには行ったことがあったんですけど、ロックバンドのライブはこのときが初めてで。ノリ方もよくわからないまま夢中で観ていました。印象に残っているライブはポルノのメジャーデビュー10周年の年に東京ドームで開催された「東京ロマンスポルノ'09~愛と青春の日々~」です。思い出深すぎて写真集も買ってしまいました。ふわふわ仕様でかわいいんですよ。このときのセットリスト、本当にすごかったな。マイナーだけど人気のある曲とか、ファンにはたまらない選曲で感動してしまいました。ニューアルバムの楽曲中心のツアーも楽しいのですが、このときのポルノの10年間が詰まったセットリストは、ひたすら「ありがとう」と思いながら観ていました。
(写真集を捲りながら)なつかしい……! すごく楽しかったな。曲が始まるまでのお祭り感もすごかったんです。昭仁さんが逆立ちしながら登場したり、和太鼓を叩く人が出てきたり。ライブはまず「Jazz up」で始まって、からの「グァバジュース」。もう言葉にならなかったです。この日のセットリストは、ファンじゃなかったら10曲目の「アゲハ蝶」までは知らない曲も多いと思うんです。この序盤の10曲の畳み掛けがもう……改めてセットリストを眺めているだけで楽しいです。ポルノが20周年を迎える今年もまた東京ドーム公演があって、まだ行けるかはわからないんですけど、行きたいな(取材は7月末に実施)。このときから10年経ったと思うと、なんだか感慨深いですね。
好きすぎて怖い
ポルノのファンクラブ「love up!」には長年入っていました。でも18歳で一人暮らしを始めるタイミングで更新を止めたんです。好きではなくなったわけではなくて、「好きすぎて怖い」と思って。私は一度スイッチが入ると止まらない性格で、当時は雑誌とか、世に出ているものはほとんど買っている勢いでした。今回のお話をいただいてからも、いろいろ観たり聴いたりしていたんですけど、もうそうすると家にいる間中ライブDVDを観ちゃうんです。せめて筋トレをしながら観ようと思っても、体勢によってはテレビ画面が見えない。だから5分くらい経ったら、普通に観入ってしまっていて。そんな性格なので、「これは一度距離を置かないといけない」と決断しました。でも実は最近、またファンクラブに入り直そうかなと思っています。こんなにずっと好きならいいんじゃないかなと思って。あとファンの人と語り合いたいという密かな望みがあるんです。周りの人にポルノが好きだと伝えると、皆さん「カッコいいよね」とは言ってくださるんです。でもまだ自分と同じ熱量の方には会ったことがなくて。この前iPodでシャッフル機能をオンにしていたら、「ラック」のあとに「Zombies are standing out」が流れたんです。思わず「iPodやるね! その曲順センスいいね!」と口に出しそうになりました。こういう話をわかってくれる人と語り合いたいですね。
誰も敵わない
ポルノのお二人は歳を重ねるにつれてどんどんカッコよくなるんですよ。この間「15thライヴサーキット “BUTTERFLY EFFECT” Live in KOBE KOKUSAI HALL 2018」のDVDを観ていたら、お二人の“40代を迎えて次のステージにいった感”があふれていて。「結婚指輪をして『カメレオン・レンズ』歌っとる昭仁さんやばいわっ!!」と悶えました。あとポルノが「CDTV祝25周年SP」(2018年4月にTBS系で放送された音楽番組)でトリを務めていて、「カメレオン・レンズ」と「アポロ」を披露していたんです。その姿を見て「これは誰も敵わないな」と思いました。「カメレオン・レンズ」は今のポルノにしか作れないめっちゃいい曲だと思うし、「アポロ」を今の2人のクオリティで届けてくれる。昔の曲も今の曲も、どっちがいいかなんて比べられません。どちらにもよさがある。でも昔の曲を今のお二人が演奏すると、より最高だと思うんです。今の彼らが演奏する「アポロ」がたまらない。それってすごいことだと思います。そういうところからも、ファンとして追いかけ続けたいと思わされるし、自分が仕事をしていくうえでも、ファンにこんなふうに思わせるってすごいことだなと考えさせられてシャキッとします。
2人が出てきた瞬間に泣く
ポルノってライブのときに、会場のお客さんを巻き込んでいく力が強いんです。曲のキャッチーさや昭仁さんの歌唱力、晴一さんのギタープレイなどいろいろな理由があるとは思うんですけど、あれは一体なんなんだろう……最近はいろいろなアーティストさんのライブに足を運んでいますが、あの“巻き込み力”はポルノのライブでしか体感したことがありません。関係者席で観させていただくときはできませんが、アリーナなどで観る際は「ミュージックアワー」で“変な踊り”をするときもあります。でも私はどちらかと言うとライブを観ているときに感動して泣くタイプで、2人が出てきた瞬間にいつも泣いてしまうんです。普段から楽しむのが苦手な性格というか、はしゃぐタイプではないからかもしれません。だからライブに行く前は少し怖いんです。絶対に楽しいことがわかるから。仕事で行き詰まっている時期には、「あんなキラキラした空間に行けない」とライブに行けなかった時期もありました。それくらい特別なんです。
8時間くらいかけて解説したい
一番好きな曲は……絶対聞かれるだろうと思って考えてきたんですよ。でもどんなにがんばっても80曲くらいにしか絞れませんでした。8時間くらいかけて1曲1曲解説したいです。でも強いて言うなら、ポルノを好きになるきっかけになった「ROLL」はやっぱり特別ですね。ほかに印象的だった曲は「名探偵コナン 業火の向日葵」(2015年4月に公開されたアニメ映画)の主題歌「オー!リバル」。発表されたときはコナンも好きだったからうれしくて、絶対に映画を観に行こうと思っていました。歌詞は晴一さんが書いてるんですけど、コナンへのリスペクトがすごいんですよ。ポルノグラフィティの曲でもあるんだけど、「名探偵コナン 業火の向日葵」の曲でもある。彼らの色がありながら、その作品へのリスペクトが感じられて、「これこそポルノだよね!」と思いました。それで言うと「奈緒子」(2008年2月に公開された映画)の主題歌「あなたがここにいたら」も作品への思いをすごく感じましたね。
あと「青春花道」は、「ポルノグラフィティってこんなメロディの曲もやるんだ」という印象を受けた一方で、「これこそポルノにしかできない曲だよね」とも思いました。「紅白歌合戦」で堂々とこの曲を演奏しているのを観て「最高だぜ!」とうれしくなりましたね。年数を重ねた今でも、あんなに楽しくて太陽の詰まった曲を作って、演奏してくれる。でもやっぱり一番好きな曲は決められないです。だって「サウダージ」や「アゲハ蝶」も好きじゃないわけないじゃないですか。言うまでもないというか。ライブでやる「メリッサ」も大好きだしな。この曲のイントロが鳴ったときの興奮はずっと色褪せないですね。
私は作品の撮影に入るときに、演じる役によって聴く音楽を決めていて。例えばはっちゃけた役を演じるときはJUDY AND MARYを聴くこともあります。「白夜行」(2006年にTBS系で放送されたテレビドラマ)の撮影のときは、ポルノの「カルマの坂」をずっと聴いていました。「カルマの坂」の歌詞と、私が演じた役がリンクする部分があったので。すごく好きな曲なんですけど、今はこの曲を聴くと「白夜行」のときのことを思い出してしまうので逆にあまり聴けていなくて。つらい境遇の役で、聴くとあのときの自分というか、役を演じているときの気持ちに戻ってしまうんです。でも「カルマの坂」のように、晴一さんのフィクションめいたエンタテインメント性の高い歌詞は大好きです。昭仁さんの生身の人間が素っ裸になったような歌詞も素敵だし。2人のバランスがいい。昭仁さんが書いた「ROLL」の歌詞、大好きなんですよね。
追いかけ続けます
音楽が好きになれたのはポルノのおかげなので、本当に感謝しています。ポルノをiPodに入れたときに初めて、「音楽って楽しい!」と思えたので。2人が好きだとおっしゃっていたアーティストや楽曲を聴いて、どんどん聴く音楽の幅が広がっていきました。昭仁さんのラジオ番組でスガシカオさんやUAさんが流れていたり、2人がジュディマリの話をしていたり、ポルノが出演するから観た音楽番組で椎名林檎さんを好きになったり。あと2人がライブでユニコーンの「スターな男」をカバーをしていて、「この曲めっちゃカッコいい!」と思って聴き始めたりもしました。
1組のアーティストのことを、理屈を超えて、ある意味盲目的に夢中になった経験は、芝居にも生きていると思います。この前「ラ」という映画で、(桜田)通くん演じるバンドマンの慎平のことが大好きな女の子を演じたんです。お話をいただいたときに、最初にポルノのことが思い浮かびました。でもそれを重ねると、どんどん自分に寄せた役になってしまうからよくないなと思って、ポルノは切り離してゼロから役作りしたんです。でもやっぱり、ポルノをここまで好きになった経験がなかったら、あの役はできていないと思います。
私は歌手やアイドルではないですけど、この仕事をしていてなんとなくエンタテイナーの大変さみたいなものがわかる気がしていて。2人は素晴らしいエンタテイナーだと思います。でも、エンタテイナーでいるということは、ものすごく大変なことだと思うんです。生身の自分を知ってほしいという気持ちも出てくるだろうし、嘘をついているわけではないけど、仮面を被った自分でいなければいけない時間も長いと思うので。それでも第一線で立ち止まることなく活躍されていて、人気も知名度もすごいし、本当に太陽のような方たちです。
ああ……本当に私、あと8時間はしゃべれます(笑)。私はもう少しで25歳なのですが、ポルノがデビューしたのも、メンバーさんが25歳のときなんです。25歳と言うと、なんとなく節目の歳でもありますけど、私は真っ先に「ポルノグラフィティがデビューした年だ!」と思って。そのことが私の希望なんです。長く仕事をしてきて、まだまだだなと思う部分もある反面、「もうこれ以上できることはないんじゃないか」と限界を感じることもたまにあって。それでも「まだポルノグラフィティがデビューした年だから」と思える。20周年を迎えるポルノが輝き続けているということが、私の希望なんです。私がポルノを好きになって約10年経って、彼らがずっと走り続けている姿を見ていると本当にうれしいし、私もへこたれていられない、がんばろうと思える。ものすごく大変なことはわかるんですけど、これからもずっと駆け抜けていってほしいな。そうしてくれたら私はもう、追いかけ続けます。
福田麻由子
東京都出身、1994年8月4日生まれの女優。主な出演作はTBS系ドラマ「白夜行」、日本テレビ系ドラマ「Q10」、フジテレビ系ドラマ「それでも、生きてゆく」、WOWOW連続ドラマW「パンドラIII 革命前夜」、映画「ヘブンズ・ドア」、「FLARE フレア」、「恋愛奇譚集」、「ラ」など。2019年9月30日より放送されるNHK連続テレビ小説「スカーレット」では、ヒロインの妹・川原百合子を演じる。
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