映画「黒牢城」とは
米澤穂信の同名小説を原作とする本作は、織田信長に反旗を翻した武将・荒木村重の籠城作戦を背景に、城内で次々と起きる怪事件を描く戦国系心理ミステリー。家臣たちが疑心暗鬼に陥る中、村重は地下牢に幽閉した敵方の天才軍師・黒田官兵衛とともに事件の謎に迫る。村重を
原作がめちゃくちゃ面白かった
取材はクランクインから2日目の2025年10月上旬、京都・松竹京都撮影所で行われた。黒沢はまず、本作との出会いを振り返る。「やっぱり原作がめちゃくちゃ面白かったということに尽きます。この時代そのものに詳しいわけではなかったですが、時代性を抜きにしても普遍的なテーマと、推理小説のような謎解きの面白さがあり、僕がやれるものならやりたいと思いました」と強く意気込んで参加したという。自身にとって初の時代劇作品であり、「チャンバラをやってみたいという欲望はありました」としながらも、「今回は全然チャンバラではない。こういう心理戦のような時代劇をやってみたいという発想は原作を読むまでありませんでした」と話す。
“前々からご一緒したかった”本木雅弘
主人公・村重役の本木雅弘に対しては「前々からチャンスがあればご一緒したい」と思っていた。さらに「戦国武将というと猛々しいイメージがありますが、荒木村重はそんなふりをしつつ、実は全然違う人物。ドライで、すべて理屈で考え、無用な殺生はしない現代的な人なんです」と役のイメージに言及し、「その両方がしっくりくる方は誰だろうと考えたときに、本木さんが浮かびました。快く引き受けてくださってホッとしています」とほほえむ。
セットへのこだわりとリアリティの追求
本作の“もう1つの主人公”と言えるのが、村重が籠城する有岡城を模した日本家屋のセットだ。「こういうセットは初めてで、奥行きが面白い」と声を弾ませ、CG合成に頼るのではなく「可能な限り本当にそこにあるものを使いたい」という方針で、城の外景が感じられるシーンにおけるロケ地選びにはこだわったという。
時代劇の可能性を信じて
長くささやかれてきた“時代劇の衰退”についても見解を示す。「映画の時代劇が斜陽だと言われているのは、僕が物心ついた頃からずっとそうでした。だから、なくなっているわけではない」と強調。「戦国時代はマンガやアニメ、ゲームなども含めて若い人にも知られている。むしろ今のほうがポピュラーかもしれない」と話し、「一般に通用するものだろうと信じて進めています」と続けた。黒沢のコメント全文は後掲の通り。
映画「黒牢城」は6月19日より全国ロードショー。第79回カンヌ国際映画祭のカンヌ・プレミア部門への出品も決定している。
黒沢清 コメント全文
本作を手がけることになった理由
やっぱり原作がめちゃくちゃ面白かったということに尽きます。この時代そのものにすごく詳しいわけではなかったですが、時代性を抜きにしても、普遍的なテーマと、一種の推理小説のような謎解きの面白さがありましたので、僕がやれるものならやりたいと思いました。
時代劇というジャンルに対する思い
漠然とやってみたいというのはありました。時代劇というとすぐ浮かぶのはチャンバラで、チャンバラをやってみたいという単純な欲望はありました。ただ今回は全然チャンバラではなく、こういう心理戦のような時代劇をやってみたいというのは原作を読むまでまったく思っていませんでした。
以前、この時代ではないんですけど「スパイの妻」という、少し古い時代を扱った作品もやりました。美術や衣装、しゃべる言葉も現代とは少し違う。なんとなく日常的に知っているものと少し違うものを、みんなで作る作業はとても楽しいし、やりがいのあるものだなと感じていました。
時代劇も、なんとなく知っている感じで適当にできるものではない。何かを作っていく作業だと思っています。まだ始まったばかりですが、やりがいを感じています。
主演・本木雅弘をキャスティングした理由
本木さんとはチャンスがあれば何かでご一緒したいなと前々から思っていました。
今回の主人公は荒木村重という人物で、典型的な戦国武将なんですが、戦国武将というと猛々しい、荒々しいというイメージがありますよね。ただ荒木村重は、原作がそうなんですけど、そんなふりをしつつ実は全然違う人なんです。ドライで、すべて理屈で考えつつ、無用な殺生は絶対しない。古典的な猛々しさを持ちつつ、すごく現代的でもある。その両方がしっくりくる方は誰だろうと考えたときに、本木さんかなと。快く引き受けてくださってホッとしています。
ほかのキャストの印象について
本木さんだけでなく、時代劇にふさわしい俳優たちがしっかりいらっしゃると感じています。本木さんはもちろんですが、それ以外のキャストも、無理なく戦国時代の人になれている。俳優の層が厚いなと感じています。
撮影が始まって2日目。手応えは
いやもう、探り探りです。事前に本読みやリハーサルをして打ち合わせてきましたので、今のところ着々とできあがっているなとは思っています。ただ最初からわかっていたことですが、こういう時代劇、特に戦国時代は、標準となるものがなかなかないんです。何を標準とするのかが難しい。つまり「なんとなく普通にやってください」ということはありえない。あるレベル、それがどのレベルなのかというのを、本木さんだけでなくほかの俳優の方も含めて、そろえていかなければいけない。何もなしにやると、みんなバラバラになってしまうので。セリフ回しや心理表現も含めて、「こういうレベルで今回やるんだな」というものを探りながら見つけていく必要があると思っています。
1つの、まったく新しい時代劇映画の古典みたいなものになってくれたらいいなと思っています。変な言い方かもしれませんが、「これが古典だよね」と思えるようなものを目指したい。本木さんともそういう話はしています。
実際にセットで撮影して感じたこと
こういう日本家屋のセットは初めてだったので、奥行きが面白いですね。いろんな部屋が複雑に組み合わさっていながら、襖を開けると全部遠くまで見通せる。
(城の外景について)庭の向こうにやぐらが立っている設定なんですが、美術部のアイデアもあり、どうせ奥まで見渡せるなら、スタジオのドアを開けて、さらに奥に本当にやぐらのようなものを作ろうと考えました。今どきだとグリーンバックで合成する方法もあると思うんですが、今回は可能な限り本当にそこにあるものを使いたいと思って。遠くにやぐらがあるなら、本当にその距離にあるように見せたいと。大変でしたが、美術部ががんばってくれて面白いセットになっていると思います。
セット以外にも、実際の城やお寺を使わせてもらいます。松竹撮影所が長年築いてきた関係性の中で使わせてもらえるということで。東京ではなかなか考えられないような奥行きのある空間で、本当にすごい場所です。
時代劇作品の現状について
映画の時代劇が斜陽だと言われているのは、僕が物心ついた頃からずっとそうでした。ただ、なくなってきているかというと、決してそうではない。テレビでは大河ドラマをはじめとする作品がずっとありますし、今回のような戦国時代もマンガやアニメ、ゲームなどを通して若い人にも知られていますよね。むしろ今のほうがポピュラーなんじゃないかと思うくらいです。映画は予算の問題などもあって難しい部分はありますが、時代劇作品への関心がなくなっているとは思いません。一般にも通用するものだろうと今は信じて進めています。
映画「黒牢城」本予告
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