映画「
第78回カンヌ国際映画祭で脚本賞とエキュメニカル審査員賞を受賞した本作は、若くして妊娠した女性を支援する施設でともに暮らす5人の少女を描いた群像劇。貧困や暴力などさまざまな問題を抱え、あるべき家族像を見出せないまま母になる少女たちが、押し寄せる孤独感にのみ込まれそうになりながら、歩むべき道を選び取っていく姿がつづられる。
ダルデンヌ兄弟が母子支援施設で目にしたのは少女たちが戦う姿
ダルデンヌ兄弟にとって、初の群像劇となる本作。もともとは1人の若い母親を主人公とした作品のリサーチをするため、母子支援施設を訪れたという。しかし2人はそこに広がる共同生活の風景に心惹かれることになる。ジャン=ピエール・ダルデンヌは「私たちは長い時間を母子支援施設で過ごす中で、それぞれに事情を抱えた若い女性たちが、問題を解決しようと戦う姿を目にしました。そのとき、最初に書いていたシナリオは忘れて、複数を主人公にした物語を描いてみようと思ったんです。あそこで過ごした時間が、私たちにそのような選択をさせたんです」と述べる。
リュック・ダルデンヌは「母子支援施設にいる若い女性たちが貧困や暴力の被害者であること、子供を見捨てる親がいることは、普通に生活をしていて、耳にすることです」と口にし、「実際に20人から30人ぐらいの女性たちと出会いましたが、未成年者に直接、人生に何があったのか聞くことは禁止されています。ですから、母子支援施設に勤めているスタッフや心理カウンセラーから話を聞きました」と振り返る。実際に施設を訪れてみなければ、想像もつかなかったこともあったそうで「施設のリビングで、みんなが1つのテーブルに集まって、誰が夕飯の準備をするか、誰が買い物に行くかなどを話し合っていました。そして彼女たちの部屋には自分の写真が飾られていた。そうした彼女たちの日常は、実際に触れなければ知らなかったことですし、興味深いことでした」と語った。
俳優が腕の中で赤ん坊の重さを実感するとフィクションからドキュメンタリーになる
劇中では、少女たちとその母親の関係にもスポットが当てられている。リュック・ダルデンヌは「母子支援施設に来る女性の10人のうち9人が母親との問題を抱えており、殴られて育った少女は自分の子供を殴ってしまうという連鎖が起こります。60年、施設で働いている心理カウンセラーから聞いた話では、5世代にわたってそういった負の連鎖が続いている家庭もあるそうです。大概の少女は貧困に苦しんでおり、また貧困に追い込まれる条件の中に生きていました。ある意味、家庭が牢獄のような場所なんです。映画の中で描かれる一部の少女も、まるで牢獄で育ったような子です。そこからなんとか解放されようとしているんです」と言及する。
とあるシーンでの、赤ん坊の笑顔が印象的だったという話が出ると、ダルデンヌ兄弟は「あれは奇跡でした」と笑みを浮かべる。ジャン=ピエール・ダルデンヌは「赤ん坊とは前もって何かを決めることはできません。そこにいるだけです。ただ女優たちが赤ん坊を抱いた瞬間、その演技がリアルなものになります。彼女たちが腕の中で、赤ん坊の重さを実感すると、ある意味フィクションからドキュメンタリーになる。ですから赤ん坊と主人公たちの関係はとても重要でした。緊迫感のあるシーンは赤ん坊もそれを感じていると思う場面もありました」と話し、「赤ん坊がカメラやマイクを見るのではなく、母親を見ているかどうかに気を配っていました。赤ん坊が母親を見ていれば、OK。次のカットを撮っていきました」と思い返した。
“悪い恐怖”を取り去ることで、俳優たちが自由に演技ができるようになる
本作を制作するにあたって、5週間のリハーサル期間を設けたダルデンヌ兄弟。ジャン=ピエール・ダルデンヌは「実際に作品を撮るセットの中で、すべてのシーンを映画通りにやってみました。その時間の中で、俳優たちは『こんな提案はしないほうがよいかな』という心配を拭い去ることができる。いい雰囲気を作って、俳優たちから恐怖心をなくすんです。“悪い恐怖”を取り去ることで、俳優たちが自由に演技ができるようになります」と述べ、「仕事をする際には、俳優たちと私たちの間に信頼感があることが大切です。私たちが俳優を、俳優も私たちを信頼することができればだいたいうまくいきます。プロであれ、素人であれ関係ありません」と語った。
映画「そして彼女たちは」は全国で順次公開中。
映画「そして彼女たちは」本予告
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