劇場アニメーション「
20世紀初頭のフランス・パリを舞台にした本作では、画家志望のフジコと、なぎなたの名手でありながらバレエへの憧れを心に秘める千鶴が、支え合いながらまっすぐに夢を追いかけるさまが描かれる。
この時代を切り取ることに意義があるのではないか
「完成してよかった」と現在の心境を吐露する谷口は「2017年~2018年には脚本を作り上げ、2019年にパリへロケハンに行きました。その後、2020年から新型コロナウイルスによって作業が止まってしまったんです。自主制作に近い形で企画を始動したので、チームの各々が普段の仕事をしたうえで、この作品に携わっていました」としみじみ振り返る。
舞台設定について聞かれると、谷口は「近未来SFだと日本人にはとっつきづらく、現代劇だとただアニメにしても面白くないから“異世界が干渉してくる”など何かの要素を足さないといけない」と前置きし、「ベル・エポックという過去を舞台にすればいけるのではと。第1次世界大戦が近付く中で、社会状況が緊迫してくる。“女性の社会進出”というテーマにも大きな変化が生じてきますので、この時代を切り取ることに意義があるのではないかと思いました」と経緯を明かす。人種差別を描いた場面もあるなどリアリティを重視した物語構造に触れると、「100%を絵空事に描くこともできるけれど、それでは登場人物にとっては地に足が着かなくなってしまう。画面の奥にも多くの情報を入れ込まないといけないと思っています」とアニメーション制作における大切な要素を語った。
ピアノを弾くシーンでは“当時のピアノから出る音”に
「バレエ」と「なぎなた」という要素を掛け合わせた同作。谷口は描写のうえで所作を重視したと言い、「特に古流武術としてのなぎなたは、重心の前後が技によっても変わってくる」と難しさを打ち明ける。バレエシーンの構築では音楽が大切なポイントだったそうで、「服部(隆之)さんに制作を依頼しましたが、そのときにお願いしたのが、楽器の選定などにおいて当時でも再現可能なものにしてほしいということ。特にルスランがピアノを弾くシーンでは“当時のピアノから出る音”にしてもらわないと、音が広がりすぎてしまうんです。『場合によっては音がゆがんでも、沈んでも構わないから』と伝えました」と裏話を語った。
當真あみ、嵐莉菜の表現に求められた“一生懸命さ”
キャラクター造形に話が及ぶと、「フジコと千鶴は外面が正反対で、性格も反転しています」と説明する谷口。「千鶴は親のことを気にして強く外に出れない面があるけれど、内には熱いマグマがある。対してフジコはコミュニケーション能力は高いが、その内面はどうなのか?といったように……ここは一番気を使った部分です」と言葉を紡いだ。
そんな2人を演じた當真、嵐に話が移ると、谷口はまず當真について「すでにアニメ作品で声優経験がありましたが、発声を根本的に変えていただく必要がありました」と切り出し、「前にやっていらっしゃった作品は現代劇で、声をそんなに張っていなかった。ただ本作では『張ってくれ』と。20世紀初頭にはスマートフォンなんてないから、伝えたい気持ちは声にきちんと乗っていなければならないんです」とその狙いを明かす。一方オーディションで選出した嵐に関して、まだ当時は有名でなかったものの「声の根っこに強い意思が感じられた」と起用に至った理由を述懐した。
またフジコと千鶴を演じるキャストには“一生懸命さ”を出してもらうことが必要だったそうで、谷口は「できる限り新人に近い人をメインキャストに据えて、脇役にべテランの方を配置することで、中心にある“一生懸命さ”を引き立たせたかった」とキャスティングプランを述べていく。ただ「声優専門の方をメインに起用すると、きっとこうはならなかったと思います」とも続け、「それはいい、悪いの話ではなく、声のレッスンを重ねていると必死な感じがどうしても足りなくなってくるんです。相当追い込まないといけないから、効率的ではなかった」と補足した。
緑黄色社会には“普段と違う”オーダー「怒られるんじゃないかなと…」
主題歌として、緑黄色社会の書き下ろし楽曲「風に乗る」が使用されている。谷口は同グループに“いつもとは違う”オーダーをしたそうで、「服部さんの音楽やバレエ音楽での楽器構成・編成がまずありますから、最後に流れる主題歌もその流れに則してほしいと。つまりエレキギターなど、本作では悪目立ちしてしまいそうなものを避けてほしいとお願いしたんです。でもバンドなのに『バンド的な音楽を使わないでくれ』って言うと怒られるんじゃないかなと……」と戦々恐々としていた当時を回想する。そして受け取った楽曲を聴いたときを思い返しつつ、「この作品で伝えたかったことを、きちんと切り取っていただけている。メロディ構成の部分でも相談しながら、一緒に作業できたことに助けられましたね」とほほえんだ。
最後に谷口は「冒頭にも申し上げましたが、この作品は自主制作のようにコツコツと作り上げてきた作品。伝えたいことはいっぱいあるのですが、映像というものは観てくださった皆さんが心の中で咀嚼して初めて完結すると思っています」と語りかける。そして「1カ所でもいいので、『こういうところがよかった、気持ちよかった』という部分を周囲に薦めていただけるとうれしいです。困ったら『犬がいっぱい見られるよ』と言っていただければ問題ないかな(笑)」と挨拶し、イベントの幕を引いた。
「パリに咲くエトワール」は3月13日より全国で公開される。
劇場アニメ「パリに咲くエトワール」長尺予告
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とにかく楽しみ😙
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