同映画祭のビッグスクリーンコンペティション部門に正式出品されている本作。大正時代を舞台に、実在した女優・長谷川泰子、詩人・中原中也、評論家・小林秀雄による壮絶な愛と青春が描かれる。広瀬が2人の男に愛される泰子、木戸が中也、岡田が小林を演じた。
根岸は観客の大歓声を受け「参加できて光栄です。非常に誇りに思います」と挨拶。そして、映画が中原中也にまつわる物語であることに触れ「日本では大変有名な詩人で、映画の中でも何度も“天才”と言われています。確かに非常に敬愛されている、日本人にとっては大切な詩人です。ただ、本作は彼が詩人として素晴らしいということを描いているわけではなく、才能あふれる詩人・中也、そして彼の才能を誰よりも認めていた評論家・小林、そして1人のミューズ(泰子)。ただ何かになろうと思っている10代、20代の若者たちの愛と格闘と葛藤を描いた話なんです」と伝える。
また根岸は「中也は8歳のときに自分の弟を亡くしているんです。幼いときの哀しみを、ずっと抱えながら生き続けたんだと思います。死もそうですけれども、何かを失うということに、彼は非常に敏感で。中也はこの悲劇をバネに詩を紡ぎ出すんですね。言葉上は暗いわけではないんだけど、そういった哀しみみたいなものをたたえているポエットなんだと思います」と分析した。
イベント中には感動で涙した女性から、2人のアーティストに愛されることによって、あどけない少女から大人の女性へ変貌する泰子の成長について問われる場面も。根岸は「この3人の奇妙な関係っていうのかな。特に泰子が中也のもとを去ってしまっても、彼はずっと彼女にこだわって追い続ける。追い続けるっていうことが彼の中で愛を確かめる行為だったと思います。泰子にはそれを受け止めたい気持ちと、拒否したい気持ちが同時に表れる。それが彼女のいろんな苦悩の要素の1つになり同時に女性として変わっていった要素だったと思います」と説明。続けて「映画の英題が『Yasuko, Songs of Days Past』であるように、基本的に泰子という女性が2人のアーティストをどう受け止めていたかということを描きたかったんです。この話はトータルで15年ぐらいの話。泰子の生き方は20代から、そのシーンごとに変化していく。そこをこの映画の中で1番観てほしいなと思っています」と述べた。
「ゆきてかへらぬ」は2月21日より東京・TOHOシネマズ 日比谷ほか全国で公開。田中陽造が40年以上前に執筆した脚本を、根岸が映画化した。
映画「ゆきてかへらぬ」予告編
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そよかぜ @VaughnKassandr
@eiga_natalie すごい!海外初上映おめでとう!