本作では、愛した恋人を刺し殺そうとした過去を持つ沙苗が、服役後に別の男性との結婚を経て、自分の愛し方をまっとうしようとするさまが鮮烈に描かれる。橋本が沙苗を演じ、彼女の過去を知りながらも結婚する夫・健太役で
本編映像には、婚姻届を出した帰り道に湖畔を散歩する沙苗と健太が映し出される。健太が沙苗の薬指に結婚指輪をはめるもののサイズが大きく、沙苗は「ゆるゆる」と優しく笑う。「前から聞きたかったんだけどさ、それって傷?」と沙苗の左手の傷について問いかける健太に対して、中学2年生の頃の記憶を話し始める沙苗。友人に「結婚線がないから家族に恵まれない」と言われ、自ら彫刻刀で線を作ろうとしてできた傷であることを告白する。「初恋だった佐々木くんとどうしても結婚したかったんだよね。でも結果“イカれすぎ”ってフラれた」と愛し方の結末を振り返る沙苗を見て笑う健太。沙苗は「悲劇ってこういうものなんだって初めて思った」と言葉を紡ぐ。
映画監督の
「熱のあとに」は2月2日より東京・新宿武蔵野館、シネクイントほか全国でロードショー。「夜が明けたら、いちばんに君に会いにいく」のイ・ナウォンが脚本を手がけた。
映画「熱のあとに」本編映像
諏訪敦彦(映画監督)コメント
それが生であれ死であれ、ひとつに溶け合うことが愛だろうか? 自ら仕掛けた罠に嵌る危険を顧みず「熱のあとに」が言葉との格闘によって綱渡りのように手繰り寄せるのは、「2」であること。決して融合することのないあなたと私。しかし、その無限の距離にこそ愛は生起する。その驚くべき瞬間を見よ。
内山拓也(映画監督)コメント
滂沱のごとく流れる愛に苦しくなった。
愛は哲学であり、思想であり、営みでもある。
127分の中で、愛を掴むために身勝手にも懸命にもがく主人公たちと一緒に、
大切な60秒を知った。
辛酸なめ子(漫画家 / コラムニスト)コメント
世間一般の恋愛は、この映画の愛に比べたら生ぬるかったようです……
沼落ちどころではないブラックホールに落ちた男女の人間模様から目が離せません。
鈴木涼美(作家)コメント
自分の小さな身体の中には到底押し込めきれない感情の熱は一体どこへ向かうのか。受け入れてほしい相手なのか、受け入れてくれそうな相手なのか、それともそのどちらでもないのか、私にはよくわからない。でも決して逸らされない強烈な視線に、あの事件への論理を超えた一つの答えが示された気がした。
石田真澄(写真家)コメント
星の数ほど愛の形も、愛の表現方法もある。自分の持つ愛の形にひたすらに向き合い変化に気づいていく沙苗の目が忘れられません。
絶対に終電を逃さない女(文筆家)コメント
人々が一口に愛と呼んでいるものは、本当はいろんな形がある。
自分の愛や相手の愛がそれぞれどんな形なのかを考え抜いて向き合う強さと、
社会のルールに合わない形の愛を貫く痛みを引き受ける覚悟を持った
一人の女の、愛の語り。
佐々木チワワ(ライター)コメント
彼女の愛は鮮烈で眩しい。平凡な生活を愛であると言い聞かせている私たちに、狂気的な愛の信憑性と暴力性をぶつけてくる。その衝動的な愛を、あなたは認めることができますか。
伊藤さとり(映画パーソナリティ)コメント
愛に正解はない。
だから共感が良い映画だと思うのは危険。
なぜならば、人の感情にもグラデーションであり
それを他者の視点で知るのが映画なのだ。
そういった意味で、この映画はまさに「愛」の火種。
エネルギーに火傷しそうな愛の映画。
共感できなくて良い。
なのに惹きつけられ忘れられない、愛の姿そのものだった。
門間雄介(ライター / 編集者)コメント
愛とはすべてを捧げるもの──それは本当に愛なのか?
惑い、ゆらゆらと揺れ、凶暴にのたうつ心のうちを、こんなふうに、こんなにも言語化した日本映画を、他には思いつくことができない。
松崎健夫(映画評論家)コメント
この映画は全編がメタファーで構成されている。或る描写や或るモチーフを反復することで暗喩を生み、伏線となってミスリードさせる。だから観客もまた視界不良な行く末に翻弄されてしまうのだ。
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橋本愛の映画作品
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おおとも ひさし @tekuriha
「熱のあとに」橋本愛の“愛し方”捉えた本編映像「悲劇ってこういうものだって」(コメントあり)
"本作が商業デビュー作となる山本英が監督を務めた。 https://t.co/bFL2H5SBR3