本作は、愛した恋人を刺し殺そうとした過去を持つ沙苗が、数年の服役後に別の男性との結婚を経て、自分の愛し方をまっとうしようとするさまを鮮烈に描いた愛の物語。主人公・沙苗の人物像は、2019年に起きた新宿ホスト殺人未遂事件にインスパイアされている。脚本は「夜が明けたら、いちばんに君に会いにいく」のイ・ナウォンが執筆。東京藝術大学大学院の映像研究科出身で「小さな声で囁いて」で知られる山本の商業映画デビュー作となる。
ニューカレンツ部門はアジアの新進気鋭の映画監督の長編1・2作目が対象となる部門。近年は「はちどり」「由宇子の天秤」「さがす」などが出品され、いずれも国内外で高く評価されてきた。
若い観客から次々に手が挙がったQ&A。山本は「熱のあとに」というタイトルの意味を聞かれ「自分が愛した男性への熱がこもったままで、治りきっていない感じが沙苗の状態に似ていると思い、このタイトルにしました」と説明する。橋本をキャスティングした理由を尋ねられると、脚本のイ・ナウォンとの企画の立ち上げを述懐。「そのときから橋本さんにお願いしていました。そういった意味では、僕とイ・ナウォンさん、橋本さんの3人が、一番長くこの作品に関わってくれています」と明かしつつ、橋本のSNSでの発信に触れ「彼女は自分が信じているものを守っている人だと感じていたので、沙苗役にふさわしい方だと思ったんです」と答えた。
沙苗の役作りに関する質問に対して、橋本は「最初は、沙苗というキャラクターと自分自身の間に距離がありました。沙苗が考える愛の形を、自分の中に少しずつ取り込んでいくという作業をしていった。沙苗を演じることは、まるで夢の中にいるような感覚でした」と回答。Q&Aの最後には「皆さんが本当に隅々まで映画を観てくれて、自分自身が撮影中に監督に尋ねることができなかったことをたくさん質問してくださって、改めてこの作品を深く知ることができました」と呼びかけ、観客に感謝した。
ビターズ・エンドが配給する「熱のあとに」は2024年2月より東京・新宿武蔵野館、シネクイントほか全国でロードショー。国内では11月19日に開幕する第24回東京フィルメックスのコンペティション部門に出品されている。キャストには仲野太賀と木竜麻生も名を連ねた。
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昨年、オムニバス映画『MADE IN YAMATO』で登壇いただいた、広島出身・山本英監督の新作なんですねー。
橋本愛が主演作「熱のあとに」で釜山国際映画祭Q&A出席、監督はタイトルの意図明かす https://t.co/AVvPTJYuAO