実際の障害者殺傷事件がモチーフとなった、辺見庸の同名小説を映画化した本作。森の奥にある重度障害者施設で職員として働き始めた元有名作家・堂島洋子は、ほかの職員による入所者への心ない扱いや暴力を目の当たりにする。洋子の同僚・さとくんは、この理不尽な状況に誰よりも憤っていた。劇中、彼の中で増幅する正義感や使命感が徐々に怒りを伴っていき、やがて“その日”がやってくる。
洋子を宮沢が演じたほか、彼女を「師匠」と呼ぶ夫・昌平に
また本作では「新聞記者」で知られる故・河村光庸が企画・エグゼクティブプロデューサーを担っており、石井は「この話をもらった時、震えました。怖かったですが、すぐに逃げられないと悟りました。撮らなければいけない映画だと覚悟を決めました」とオファー時を回想する。クランクイン直前に死去した河村の遺志を受け継ぐプロデューサーの長井龍は「障害福祉に従事されている方にも本作をご覧頂き『この映画を通して、障害者の置かれている世界を知ってもらいたい』という言葉も預かりました。本作を届けていく必要性を改めて噛み締めています」と思いをつづった。作品を鑑賞した見城徹、
このたび初公開となった場面写真には、森の中でこちらを見つめて佇む洋子の姿が切り取られた。
石井裕也 コメント
この話をもらった時、震えました。怖かったですが、すぐに逃げられないと悟りました。撮らなければいけない映画だと覚悟を決めました。多くの人が目を背けようとする問題を扱っています。ですが、これは簡単に無視していい問題ではなく、他人事ではないどころか、むしろ私たちにとってとても大切な問題です。この映画を一緒に作ったのは、人の命や尊厳に真正面から向き合う覚悟を決めた最高の俳優とスタッフたちです。人の目が届かないところにある闇を描いたからこそ、誰も観たことがない類の映画になりました。異様な熱気に満ちています。宮沢りえさんがとにかく凄まじいです。
長井龍(プロデューサー)コメント
目の前の問題に蓋をするという行為が、この物語で描かれる環境に限らず、社会の至る所に潜んでいるのではないか、という問いが映画「月」には含まれています。
障害福祉に従事されている方にも本作をご覧頂き「この映画を通して、障害者の置かれている世界を知ってもらいたい」という言葉も預かりました。本作を届けていく必要性を改めて噛み締めています。そして、映画製作を通して、この数年で障害福祉の環境が変わろうとしている現実も目の当たりにしました。そのこともまた、社会の持つ可能性のひとつだと信じています。
見城徹(編集者)コメント
この社会に蔓延る[嘘と現実]、[善と悪]、[建前と本音]の判断を宙吊りにしたとてつもない映画だった。「月」は誰もが当たり前のように見ているが、実は誰も本当に存在しているのか解らない曖昧なものでもある。しかも、「月」は太陽の光に照らされて様々に姿を変える。だから、「月」はロマンチックな影を人間の心に落とすのだ。オダギリジョーと宮沢りえ夫婦が直面する[圧倒的な現実]と磯村勇斗の心に影だけを落とす[月]はライバルのように激しくせめぎ合う。後半は磯村勇斗の狂気(=ルナティック=月)を誰も否定出来なくなるが、ラストに宮沢りえがオダギリジョーにかける一言がこの映画を万感の想いで支えている。
身動きも出来ないまま観終わって、まだ映画に犯されている。世に問うべき大問題作にして大傑作の誕生。石井裕也監督、此処にあり。凄過ぎる。
高橋源一郎(作家)コメント
「月」を観て、名状し難い感銘を受けた……と書いて、これは正確ではないと思った。ぼくが感じたものは、もっとずっとやっかいで、ことばにするのが難しいものだった。
「月」では、障害者施設を襲い、そこに収容されている人たちを殺傷した現実の事件とその犯人らしき人物がモデルとして描かれている。そこには重い問いかけがある。どんなことばもはね返してしまうような強烈な問いである。だが、その問いよりもさらに強く、訴えてくるのは「月」だと思った。映画全体をひたしている「月の光」だ。
「太陽の光」はまぶしく、すべてのものを照らし尽くす。そこではすべてが見えてしまうだろう。世界の隅々までまでくっきりと。けれども、「月の光」はちがう。ぼくたちひとりひとりを個別に照らすか細い光である。その淡い光の下でだけ、ぼくたちは「個」になるのだ。
登場人物の多くは、「ものをつくる人」である。そして、同時に「うまく作ることができない人」でもある。彼らは淡い「月の光」の下でそのことを知る。そこで生まれてくるものがある。そこでしか生まれないものが。それがなになのかぼくにはよくわからない。「月」は、あまりに強烈なテーマを扱っているので、もしかしたら観客は、そちらに視線を奪われるかもしれない。そうではない。もっとずっと繊細で、実はおぼろげなものが、そこにある。それは「生きる」ということなのかもしれない。もう一度書くが、ぼくにはその正体がはっきりとはわからない。わからないまま、ぼくはうちのめされていた。ぼくもまた、この映画が発する「月の光」の下にいたのだ。
森直人(映画評論家)コメント
石井裕也が命がけでぶん投げてきた灼熱の問題提起の豪球。
我々にできるのは、火傷しながらも全身で受け止めること。
「月」は告げる。もう見え透いた嘘はやめにしよう。
本気の表現しか響かない新しい時代が目の前に来ている。
恩田泰子(読売新聞編集委員)コメント
石井裕也監督の「月」は、広く公開され、たくさんの人に届けられなければならない。
この映画は、苛烈にして誠実な表現をもって、人や社会をぬくぬくとくるんできたきれいごとを剥がし、見ているふりをして見ていなかったこと、考えているふりをして考えていなかったことを突きつけてくる。もう逃げたり、ひるんだりしているわけにはいかない。
カオスの中でつつましくまたたく希望のかけらを見つけ出すために。この映画から、しっぽを巻いて逃げ出したら、それこそもう絶望しか残らないのだ。
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宮沢りえの映画作品
リンク
東京エキストラNOTES■やなけん @YanaKen_
昨日解禁されました……映画『#月』10月13日~公開
#宮沢りえ #磯村勇斗 #オダギリジョー #二階堂ふみ 他
脚本・監督:#石井裕也
障害者施設を舞台にした #辺見庸 の社会派小説を映画化。
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