「イロイロ」の母子が教師と生徒に、アンソニー・チェンが語る新作キャスティング秘話

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第20回東京フィルメックスのコンペティション部門出品作「熱帯雨」が本日11月27日に東京・有楽町朝日ホールで上映され、監督のアンソニー・チェンがQ&Aに出席した。

アンソニー・チェン

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「熱帯雨」

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2013年の長編デビュー作「イロイロ ぬくもりの記憶」で、カンヌ国際映画祭の新人監督賞にあたるカメラドールや東京フィルメックス観客賞を獲得したアンソニー・チェン。6年ぶりとなる長編第2作「熱帯雨」では、女性教師と男子中学生の繊細な関係がつづられる。結婚して8年経っても子供ができないことに大きな不安を感じている教師リン。夫は不妊治療に協力してくれず、心の隙間を埋めるように生徒のウェイルンと親しい関係を築いていく。第44回トロント国際映画祭のプラットフォーム部門でワールドプレミアが行われた。

「イロイロ ぬくもりの記憶」で母子を演じていたヤオ・ヤンヤンとコー・ジア・ルーが、本作では教師役と生徒役でそれぞれ起用されており、映画には2人のセックスシーンも存在している。この大胆なキャスティングを「まったく意図していなかった」と語るアンソニー・チェン。当初は演技未経験の素人の起用を考えており、多くの中学校を周り何百人もの生徒に会って、ワークショップを重ねたが役にしっくりくる人物がいなかった。

あるときシンガポールのテレビ局が制作した学園ものの番組のInstagramを眺めていたところ気になる俳優を見つけたそうで「この子の雰囲気はいいなと思ってリサーチしたらコー・ジア・ルーだったんです。成長した彼に気付かなかった(笑)。さっそく彼を呼んでワークショップに参加してもらい、起用を決めました」と述懐。「非常に才能に恵まれた俳優なんですが、少し怠慢なところがあって、彼だけが現場に台本を持ってこない。ただ唯一セリフを忘れない俳優でもあるんです」と称賛する。

「熱帯雨」Q&Aの様子。左から映画祭ディレクターの市山尚三、アンソニー・チェン。

「熱帯雨」Q&Aの様子。左から映画祭ディレクターの市山尚三、アンソニー・チェン。[拡大]

コー・ジア・ルーがウェイルン役に決まった時点で「ヤオ・ヤンヤンは起用しない」と考えていたアンソニー・チェンだが、シンガポールとマレーシアの両方で俳優を探しても見つからず、最終的にリン役はヤオ・ヤンヤンにお願いしたという。「1年半かけて2人以外の役者を探したけれど、結局2人になってしまった」と笑い混じりに明かした。

リンはシンガポールの男子校で中国語を教えているマレーシア人の女性だ。観客からリンがマレーシア出身の理由を問われたアンソニー・チェンは「あまり知られていないのですが、シンガポールで中国語の教師をしている人の半数以上はマレーシア出身」と回答。「シンガポールの人口の7割以上が中国系にもかかわらず、中国語のレベルは低い。友達同士はもちろん、私自身も家では英語を話して育ちました。ですから中国語の教師を輸入しなくてはならない。中華的な伝統がありながら中国語が話されなくなりつつあり、学校でも軽んじられています」と映画の背景となる問題を示した。

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Kawamura Makiko @Sayakancil

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