サイレント映画が主流だった大正時代の日本を舞台に、小さな町の映画館に流れ着いた活動弁士志望の青年の奮闘を描く本作。成田は主人公・染谷俊太郎役で映画初主演を果たし、黒島結菜、永瀬正敏、高良健吾、井上真央、音尾琢真、竹野内豊、竹中直人、渡辺えり、小日向文世らが脇を固める。
2018年10月下旬、撮影は福島・福島市民家園内にある国指定重要文化財の旧広瀬座で行われた。旧広瀬座は、明治20年頃に町内の有志によって建てられた芝居小屋。映画館として使用されていた歴史も持つ。広瀬川のたび重なる氾濫で被害を受け、昭和61年に発生した洪水のあとで取り壊されることが決まっていたが、貴重な芝居小屋を残すため民家園で復元された。
福島県民を中心とした大勢のエキストラが客席にひしめく中、成田演じる俊太郎の活弁シーンの撮影が始まる。客席には舞台上をじっと見つめる竹野内や高良の姿も。活動弁士の正装であるフロックコートを身にまとった俊太郎が舞台下手の弁士台に登場すると、客席から「待ってました!」「日本一!」といった掛け声が上がった。いざ活動写真の上映に合わせて活弁を始める俊太郎だったが、このあと活動弁士として危機的な状況に陥ることとなる。成田いわく「これさえできればあとはできる」というほど、難易度が高い同シーン。成田は声の状態を器用に変化させ、物語の肝となる場面の撮影をスムーズにこなしていた。
これまで脚本を自身で書いてきた周防だが、本作では「それでもボクはやってない」などで助監督を務めた片島章三が脚本を手がけている。撮影現場にて、周防は「脚本を読んで素直に面白かったのが大きいです。片島さんは気心も知れているし、意見交換もスムーズに行くだろうなと思いました」と本作のメガホンを取るに至った決め手を説明。また「シコふんじゃった。」「Shall we ダンス?」「舞妓はレディ」など、“素人ががんばる話”が多かったと自身の作品を振り返り、「今回は素人の話じゃない。天才的な活弁の才能の持ち主が間違った方向に行っちゃいそうになるけど、本物の活動弁士になっていくという物語なんです」と従来の主人公とは一線を画すことを強調する。そのため主演には“最初から活動弁士として能力が高い”という力量が求められ、成田は現役で活躍するプロの活動弁士に教えを受けながら活弁の練習に打ち込んだ。
成田は「講談や落語のしゃべりはなんとなく聴いたことがありましたけど、やったことはなくて。いざやれと言われても、どのぐらいの声の大きさで言ったらいいかもわからない。だから徐々につかんでいった感じです」と練習漬けの日々を回想する。そんな成田の“天才ぶり”を、周防は「本番に強い」と評価。「テスト段階で声を張ると本番が弱くなっちゃうという計算もあると思いますけど、本番のあと弁士の方が満面の笑みでOKサインを出していたので、レベルに達しているんでしょうね。僕は素人だから先生にお任せしていますが、今のところ本番で先生が喜んでいるので、うまくいっているんだと思います」と“座長”への信頼感を全面に出した。
それを受け、「その通りだと思います(笑)」と成田。「この4カ月くらい活弁だけやってきたエネルギーを、できる限り出しています。教えてくださった先生が本番中に大きくうなずいてるのが見えるので『あ、大丈夫だな』と思いながら。監督にも先生にも最初に言われたのは『自信を持ってやればいい』ということだったので、大きく自信を持って演じています」と、手探りながらも手応えを感じているようだ。成田の指導にあたった活動弁士の
なお本作で周防は初めてデジタル撮影に挑んだ。一方、劇中で上映される活動写真はフィルム撮影で制作している。周防は「フィルムがなくなろうとしている今、映画の原点であり『日本映画のスタートはこうだったんだよ』という作品を作っておかないと、もう作れないんじゃないかなと。映画は技術革新とともにあるんだという、その原点を観てほしかったんです」と本作を制作することの意義を伝えた。
「カツベン!」は2019年12月に全国でロードショー。
関連記事
周防正行の映画作品
関連商品
リンク
- 「カツベン」公式サイト
※記事公開から5年以上経過しているため、セキュリティ考慮の上、リンクをオフにしています。
活動弁士 坂本頼光 公式 @sazaza_fuguta
#成田凌 さんは実に良い役者さんです。良い役者で、スタアの華も磁力も持つ人だと思います。これからもさらに、様々な作品で光彩を放って行かれるでしょう。
#活弁 #カツベン! #周防正行 #活動弁士 #無声映画 https://t.co/Kxd4n65mqD