小西康陽が大映写真集のこだわり語る、「映画で見る黒に」

大映映画のスチール写真集「いま見ているのが夢なら止めろ、止めて写真に撮れ。」の刊行記念イベントが、7月27日に東京・ブックファースト新宿店にて行われ、責任編集を担当した音楽家・小西康陽、「名画座かんぺ」発行人・のむみち、 映画愛好家・遠藤倫子が出席した。

この写真集は、75周年を迎えた大映映画がこれまでに製作した映画およそ2000作品、数万点に及ぶスチールのストックの中から、小西が作品の有名無名を問わず厳選したカットを掲載したもの。光と影を巧みに使い分けた独特の映像美を堪能できる大映作品を象徴する約80作品のスチール写真が収められた。小西は当初タイトルを「夢の決定的瞬間」にしようとしていたが、「ど根性物語 銭の踊り」の勝新太郎を表紙に使用したかったため、それに合うようタイトルを長くして、レイアウトも自分で担当したと説明する。掲載する写真を「大映映画で見る黒さにしたいと思った」と話す小西は「最初に色校が来たときに全然黒くなくて、これじゃダメだ！と思って（笑）。印刷所の人に参考にしてもらえるような写真集を持っていった」と述懐する。そして、「二度刷りした上にさらにニスを塗った。黒にも赤い黒と青い黒があるので、青い黒になるようにインクも調合してもらった」とそのこだわりを語った。

古本屋の古書往来座に勤務するのむみちは本書の造本について「スチール本は背が割れやすいけど、糸とじで背もがっしりしているので素晴らしい。表紙と帯がないので、何十年もいい状態でキープできる。百点満点」と絶賛する。元大映京都撮影所のカメラマン・西地正満、大映映画を中心に日本映画の黄金時代を支えた俳優・杉田康へのインタビューなども掲載されている本書のテキストを遠藤が称賛すると、小西は「杉田さんには書けない話ばかり聞いたからもっと面白かった」と明かし、イニシャルトークで会場を沸かせる一幕も。

続いて、来場者に配られたのむみちお手製の「わたくしたちの大映あれやこれや3選栞」をもとに3人がそれぞれ選んだ本書収録のスチール3選、大映キャラ3選などのトークが繰り広げられた。市川崑監督作「おとうと」の岸恵子、川口浩が写っている写真について小西は「コントラストを出すと雨が消えてしまうのですごくやりくりしてもらった」と説明し、同じく市川の監督作「あなたと私の合言葉 さようなら、今日は」を「正面を向いているカットばかりで小津（安二郎）のパロディと気付いた」と語った。

来場者からの質疑応答で「映画音楽の好きな作家は」と尋ねられたのむみちは「メロドラマが好きなので、五所平之助の映画を観ていて芥川也寸志が好きだと気付いた」と述べ、池野成の名前を挙げた遠藤は「やばいぞやばいぞと不穏な感じでウキウキする」とコメント。「実は武満徹がすごく好きだけど大映ではあまりやっていない」と話す小西が「映画がすごいよかったときって音楽全然覚えてないんですよ」と続けると、のむみちと遠藤は賛同の声を上げた。

「大映映画を観たことがない人にオススメの映画は」という質問に対し、小西は「勝新太郎、田宮二郎、市川雷蔵の映画。最高だと思うよ」と返答。遠藤は「兵隊やくざ」、のむみちは「青空娘」をそれぞれ薦めた。大映や映画への愛であふれたイベントは、和やかな雰囲気の中終了した。

いま見ているのが夢なら止めろ、止めて写真に撮れ。

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