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ベルリン映画祭出品作「わたしたちの家」予告編、黒沢清らのコメントも到着

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第69回ベルリン国際映画祭フォーラム部門に正式出品される「わたしたちの家」の予告編がYouTubeで公開。あわせて著名人からコメントが到着した。

第39回PFF(ぴあフィルムフェスティバル)のコンペティション、PFFアワード2017でグランプリを受賞した本作は、父親を失った少女と記憶を失った女性がたどる、まったく別々の物語が一軒の“家”の中で交錯する室内劇。父親が失踪して以来、母親の桐子と2人暮らしをしている少女セリは母親に新しい恋人ができて複雑な気持ちを抱えている。一方、フェリーの上で目覚めた女性さなは自分に関する記憶を喪失し、船内で出会った透子の家に住むことになる。東京藝術大学大学院で黒沢清諏訪敦彦に師事した清原惟が監督を務めた。

黒沢は「一軒の日本家屋を舞台にして、目もくらむような物語の迷宮が展開される。まるでヨーロッパの前衛小説を読んでいるようだ」、諏訪は「1+1が2になるのではなく、互いに依存することも葛藤することもなく、ただ1と1としてあることで世界を開いてゆく。その『開かれ』に風が吹き込むとき、ふたつの淡い物語の旋律はやがてひとつの響きとなって、世界をみずみずしく息づかせるのだ」とそれぞれ絶賛のコメントを寄せている。そのほかのコメントは以下を確認してほしい。

「わたしたちの家」は、1月13日より東京・渋谷ユーロスペースほか全国にて順次公開される。

清原惟 コメント

グランプリという素晴らしい賞をいただき、本当に光栄に思っております。ありがとうございます。私はPFFアワードに3度目の入選で、今まで賞をいただいたことはなかったので今回こそは思っていましたが、最後の最後で、グランプリをいただくことができ、驚きとともに信じられない気持ちでいっぱいです。この作品は私だけの力ではなく、多くの関わってくださった皆さんと作り上げた作品なので、まずは皆さんに深く感謝をお伝えしたいです。ポリフォニックに響いていく2つの世界がテーマになった作品なので、多くの方々にご覧いただき、皆さんそれぞれの映画になったことで、ポリフォニー性が広がったと思います。今後もより多くの方々に観ていただきたいと思っていますし、この賞に甘んじることなく、100年後も私の知らない誰かに観ていただける映画を作れるよう頑張りたいと思います。

黒沢清 コメント

一方が現実なら、もう一方はマボロシで、そっちが現在なら、あっちは過去だということになるのだが、いやひょっとすると全員が幽霊!?……一軒の日本家屋を舞台にして、目もくらむような物語の迷宮が展開される。まるでヨーロッパの前衛小説を読んでいるようだ。

諏訪敦彦 コメント

1+1が2になるのではなく、互いに依存することも葛藤することもなく、ただ1と1としてあることで世界を開いてゆく。その「開かれ」に風が吹き込むとき、ふたつの淡い物語の旋律はやがてひとつの響きとなって、世界をみずみずしく息づかせるのだ。

瀬田なつき コメント

「わたしたちの家」は、言葉と映像と音の張り詰めた連鎖と交錯で、わたしたちを、どこでもないどこかへ連れ出してくれる。
そのどこかは、この作品を見た人の数だけある気がする。でも、見ないとわからない。

飴屋法水 コメント

この映画には、家には、二つが住んでいて、どちらが表でも裏でもなく、どちらが主でも副でもなく、映画の原理と、人生の原理が住んでいて、私の映画、が見ることで生きていたので、私は映画、を見ながら暮らした。

柴崎友香 コメント

女たちはこの家では何度でも出会うことができる。見えるものと見えないもの、そこにいる人といない人のあいだに、この映画は誘い出してくれる。これから出会うかかもしれないわたしたちに、その場所を開いてくれる。

山下澄人 コメント

清原惟監督は「それ」にかたちをあたえず映画にした。「それ」は「それ」としか言えないからこそ「それ」であり続けることができる。名付けられる前の風景が「わたしたちの家」だ。

滝口悠生 コメント

どのカットも凛々しく、何も起こらない奇跡を見ているよう。
音や衣服の不思議な色気。
舞台となるひとつの/ふたつの家の、無人の間にさす光と陰。
何かは起こっているのだけれど、それは見えない。
そこに誰もいないというのは、いったい、どういうことなのか。
そこに誰もいない、と誰かが思う時、そこに本当に誰もいないなんてことがありえるのか。

蓮沼執太 コメント

この家には部屋があり、窓があり、障子があり、境界がある。並行する2つの世界は1つの場所で共振していく。複数の時間が流れながら、物語は2つの喪失からはじまる。創作に対する真摯な姿勢が作品から表れています。

野口順哉 コメント

その薄氷を踏んでしまうことへの勇気と慎み。
私しかいない青春のおぞましさと他者への畏怖を込めた闇の描写、
その切り結びは一見の価値あり。
本当は怖いことに、初々しさと野心でもって触れている。

額田大志 コメント

美しい映像と構成の妙はもちろん、どうやって思いついたの?と聞きたくなる数々のカット、どうやって撮ったの!?と聞かずにはいられないカメラワーク。静かでささやかな革命が「わたしたちの家」では起きている。

大江治 コメント

地味そうで不思議……
どこにでも居そうでどこにもいない……
不思議な可能性に満ちた普段着のスリラー

三浦哲哉 コメント

清々しい傑作。
一見して平凡な日常に穿たれた穴を少女たちはいとも簡単に発見し、
どこでもない場所へ軽々とすり抜けてゆく。
この少女たちがどこへ行くのか、まったく予想がつかない。
サスペンス映画の最良の伝統を想起させつつ、
(「レベッカ」「セリーヌとジュリーは舟で行く」「マルホランド・ドライブ」等々……)、
よく見ればどれにも似ておらず、捕らわれていない。
この映画を見て、自分までとても身軽になった気がした。

(c)東京藝術大学大学院映像研究科

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