本作は、カナダの作家アリス・マンローの短編小説3編をもとにした人間ドラマ。12年前に何も告げず突然姿を消した娘に宛て、これまで忘れ去ろうとしていた自身の過去をつづる女性ジュリエッタの数奇な人生を描く。ジュリエッタの中年時代を
4月に世界各国で情報流出が報じられた“パナマ文書”にアルモドバルと彼の弟アグスティンの名前が記載されていたことから、「ジュリエッタ」のスペインでの取材はすべてキャンセルされていた。記者会見にて司会者が「映画についての質問以外は答える義務はありませんが、どうしますか?」と判断を委ねると、アルモドバルは「弟と私の名前はパナマ文書の中でもっとも重要でない名前だし、この事件が映画化されたとしてもエキストラにもならない存在だ。スペインのマスコミは私たちが主役のように仕立て上げているがね」と回答。続けて「パナマ文書のスキャンダルがあっても私の映画を観てくれて、気に入ってくれたからここにいるんだよね? ほかの観客もそうだといいのだけれど(笑)」と報道陣に呼びかけ、場内に拍手を巻き起こした。
また、ウディ・アレンの「Cafe Society(原題)」、スティーヴン・スピルバーグの「BFG:ビッグ・フレンドリー・ジャイアント」がアウト・オブ・コンペティションであることに関して聞かれると「私にはウディ・アレンやスピルバーグのような才能はない。彼らの姿勢は尊重するけれど、私はカンヌに作品を出すのならばコンペティションに参加したいと思う。そのほうが、私にとってもメディアにとってもエキサイティングだろう。競争の場に出るということは、批評を受ける立場でいるということでもあるから。つまり、私はまだアウト・オブ・コンペティションに作品を出すような監督のレベルには達していないということだ」と答えた。
アルモドバルは本作の制作について「ニューヨークで英語劇を撮影するというアイデアもあり、英語圏の女優も名乗りを上げていた。だが、映画を作るなら自分のテリトリーであるスペインで作らなくてはと思い、設定を変えた」と述懐。「ずっと列車の中で映画を撮りたいと思っていたが、あの小さな空間で撮影するのはとても困難だった。だが、アリス・マンローの小説の中に素晴らしいシーンがあった。列車の中で、人生で起き得るもっとも素晴らしいことが起きるというシーンだ。そして、(アルフレッド・)ヒッチコックの『見知らぬ乗客』にも匹敵するような2人の主人公が生まれた。それが創作の活力になった。私はマンローを敬愛している。彼女は家事のかたわら小説を書いていた。私と同じ“小説を描く主婦”なんだ」と笑った。
「ジュリエッタ」は今秋より東京・新宿ピカデリーほか全国で公開される。
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