本日10月28日、第28回東京国際映画祭のJapan Now部門に出品された「
本作は、通り魔殺人事件で妻を失った男・アツシ、姑と夫との平凡な暮しのさなか突如現れた男に心揺れる主婦・瞳子、親友への思いを胸に秘める同性愛者の弁護士・四ノ宮の姿を描く人間ドラマ。橋口にとっては2008年の「ぐるりのこと。」以来の長編監督作となる。
上映後に行われたQ&Aにて、橋口は本作を「もともとはワークショップに集まったメンバーで映画を作りましょうという企画から始まったものです」と説明し、「以前『ゼンタイ』を撮ったときのようにいくつかのエピソードをあわせて群像劇のように作ろうと思い、まず先に『恋人たち』ってタイトルを付けちゃったんです。でも脚本を書くのが本当に大変で。8カ月もかかりました……」と、苦笑いを浮かべながら苦労を明かす。
そして安藤の「この作品を淀川(長治)さんに観せたい!」という言葉をきっかけに、映画解説者・淀川長治との思い出話へ。橋口は「淀川先生と初めてお会いしたのは30歳のときでした。僕の『二十歳の微熱』を、先生は『ファーストシーンが傑作だった。でもあとがダメ、あんたには根性がない。あとあんた、終わりのほうでブーメランパンツを穿いて出てきたでしょ? あの役はパンツなんて穿かないの!』とおっしゃっていて」と懐かしそうに回想する。さらに橋口は「淀川先生は映画に人生を懸けていらっしゃったので、『あんたは一度映画を選んだんだから、最後までやり通しなさい。途中で水を飲んでもいい、盗みを働いてもいい。あんたならできる!』と言ってくださったことは、僕の財産として残っていますね」と、しみじみとした表情で語った。
続いて橋口は「自分の中にあるモチーフを作品に入れ込みながら出演者の個性も生かし、今の日本の空気も取り込みたい。その3本の柱を大事にしていた」と製作時の心情を吐露する。そして主要キャラクターのアツシについて「彼には『ぐるりのこと。』を撮ってから私が体験したさまざまな感情が反映されています」と言及。コンクリートをノックした反響音で破損箇所を探り当てるというアツシの仕事に関して、「あれは世界の音を聞いているというつもりで描きました。人間もコンクリートのように叩いて性質がわかったらどんなにいいだろうとも思って」と述べた。
「恋人たち」は11月14日より全国でロードショー。
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淀川先生は・・・『あんたは一度映画を選んだんだから、最後までやり通しなさい。途中で水を飲んでもいい、盗みを働いてもいい。あんたならできる!』
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