映画「プロジェクト・ヘイル・メアリー」特集 | 「一緒に宇宙を旅できる!」原作ファン・岸井ゆきの、“最高の映画体験”に大満足

「ラ・ラ・ランド」「ブレードランナー 2049」「バービー」などで知られるライアン・ゴズリングが主演を務めた映画「プロジェクト・ヘイル・メアリー」が、3月20日に日米同時公開される。

同作は、しがない中学校の科学教師ライランド・グレースが、地球滅亡を回避する鍵をつかむため奮闘する物語。ゴズリングがグレースを演じたほか、「落下の解剖学」「関心領域」のザンドラ・ヒュラーがグレースをミッションに引き入れたエヴァ・ストラット役に起用された。

映画ナタリーでは、SF小説・映画が好きで、「プロジェクト・ヘイル・メアリー」原作小説の大ファンでもある俳優・岸井ゆきのにインタビュー。封切りに先駆けて、東京・グランドシネマサンシャイン 池袋で行われたIMAX版の完成披露試写にて本編を鑑賞してもらい、その魅力をたっぷりと語ってもらった。

なお本記事には作品の内容に触れる箇所が含まれるため、これから映画を観る読者は注意してほしい。

取材・文 / 前田かおり撮影 / 須田卓馬
ヘアメイク / 茂木美鈴スタイリング / 杉浦優

映画「プロジェクト・ヘイル・メアリー」予告編公開中

「プロジェクト・ヘイル・メアリー」とは?

原作は、デビュー作「火星の人」が、マット・デイモン主演で「オデッセイ」として映画化された作家アンディ・ウィアーによる同名小説。2021年5月の刊行直後に、ニューヨークタイムズのベストセラー・リスト1位を獲得した。ロサンゼルスタイムズ、ウォールストリートジャーナルと名だたる大手媒体でもベストセラーリスト入りの常連となり、わずか半年でミリオンセラーを達成。マイクロソフト創始者のビル・ゲイツや、元アメリカ合衆国大統領バラク・オバマも絶賛した。ライアン・ゴズリングは刊行前の原稿を手にしてすぐ作品に夢中になり、映画化を強く推し進めた。

「プロジェクト・ヘイル・メアリー」より、ライアン・ゴズリング演じる主人公ライランド・グレース。中学校で科学教師として働いている

「プロジェクト・ヘイル・メアリー」より、ライアン・ゴズリング演じる主人公ライランド・グレース。中学校で科学教師として働いている

ゴズリングは原作を読み終える前から「この壮大な物語を映画にするには、彼らしか考えられない」と確信し、「スパイダーマン:スパイダーバース」で第91回アカデミー賞長編アニメーション賞を受賞したフィル・ロードとクリストファー・ミラーの監督起用をスタジオに働きかけた。さらに自身もプロデューサーとして参画し、「スパイダーマン」シリーズ成功の立役者であるプロデューサーのエイミー・パスカルも加わった。脚色は「オデッセイ」のドリュー・ゴダートが担当した。

「プロジェクト・ヘイル・メアリー」より、ライアン・ゴズリング演じる主人公ライランド・グレース。中学校で科学を教えるしがない教師だったが、ある日、地球滅亡を回避するためのミッションに抜擢される

「プロジェクト・ヘイル・メアリー」より、ライアン・ゴズリング演じる主人公ライランド・グレース。中学校で科学を教えるしがない教師だったが、ある日、地球滅亡を回避するためのミッションに抜擢される

物語は、未知の原因で太陽エネルギーが奪われる異常事態が起き、地球滅亡の危機が迫る中、主人公グレースが“イチかバチか(ヘイル・メアリー)”なプロジェクトのため、11.9光年先の宇宙への片道切符を握らされることから展開する。彼は、極限の孤独の中で、母星を救うために1人奮闘する異星人ロッキーと出会い、種族を超えた友情を育みながら宇宙最大の難題に挑む。

岸井ゆきのインタビュー

「公開初日に観る!」と決めていました

──「プロジェクト・ヘイル・メアリー」が映画化されると聞いてから、とても楽しみにされていたそうですね。

実は原作の単行本が出たときに、あとがきに「ライアン・ゴズリング主演で映画化が進行中」と書かれているのを読んでからずっと楽しみにしていました。ただ、同じ原作者のアンディ・ウィアーが「アルテミス」を出版したときも「映画化される」とあったけれど進んでいないし、途中で計画が立ち消えるのは“ハリウッド映画あるある”だと思っていたんです。それがいよいよ公開されるのでワクワクで、「3月20日の公開初日には、私はグラシネ(東京・グランドシネマサンシャイン 池袋)で絶対に観る!」と決めていました。なので、グラシネで完成披露試写を観る機会に恵まれてうれしかったです。

岸井ゆきの

岸井ゆきの

──本当に楽しみに待っていたんですね。

だって、これを見てください!(私物のスマートフォンを差し出して)ロック画面の画像を「プロジェクト・ヘイル・メアリー」クランクイン時のカチンコにするくらい好きなんです。

──おお、すごいっ!

それで、まず気になったのですが、この作品は何で撮っているんでしょうか? IMAXフィルムですか?

──今回の作品は“Filmed for IMAX”と言って、IMAX用のカメラで撮っているそうです。撮影監督がデジタルで撮ったものをフィルムに焼いてから、もう一度デジタルに変換しているようです。

そうなんですね。撮影監督は「DUNE/デューン 砂の惑星」「THE BATMAN-ザ・バットマン-」のグレイグ・フレイザーだったので、何か新しい技術だったりして、と思いました。ルックがフィルムなのではなくて、焼き直しをしているということなんですね。宇宙のシーンでは圧倒的な広がりを感じられたし、グラシネのIMAXで観ることができて本当によかったです。

序盤から「いいね!」

──原作が大変お好きだと伺っています。

私は、映画も本も好きな作品を何度も観たり読んだりするタイプで、もう3回は読んでいます。

岸井ゆきの

岸井ゆきの

──そこまで岸井さんを夢中にさせる魅力ってなんでしょう?

まず原作者のアンディ・ウィアーが好きなんです。彼が書く主人公は常にパワフル。映画「オデッセイ」の原作にあたる「火星の人」の主人公もそうですが、決して強い人間ではないけれど、1人で生き抜く力がある。それまでその人が培ってきたユーモアやアイデアで臨機応変に困難を乗り切って、自分の命や世界を救っていく。そこをライトに描き、夢を感じさせてくれるのがいいんです。「プロジェクト・ヘイル・メアリー」の主人公グレースも普通の中学教師なのに、たった1人で遠い宇宙まで行かされてしまう。「インターステラー」も大好きなSF映画ですが、あの主人公は人間として一歩前を行っている感じがして、「私には、あそこまでの試練を耐え抜く力があるだろうか?」と思ってしまいます。でも、アンディ・ウィアー作品の主人公は自分ととても近くて、対話をしているような感覚がある。そこが一番の魅力ですね。

──SF作品に出てくる主人公は、重い責任や人類を左右する運命を背負っていて、時には悲壮感が漂ってきたりします。でも「プロジェクト・ヘイル・メアリー」のグレースにはすごく人間味がありますよね。

そうなんです。映画の冒頭で長い昏睡状態から目が覚めたグレースは、自暴自棄になって宇宙船の中でウォッカをあおるんです。原作ではウォッカを飲むシーンはけっこう後半なのですが。映画では序盤から出てきたのを観て、思わず「お、いいね!」と思いました(笑)。それから、グレースが乗っている宇宙船が縦長にも横長にもなる設計なのも、すごく素敵だなと感じて。「私たちは今どこにいるんだろう?」と、視覚的にも楽しませてくれるオープニングが本当に素晴らしい。

「プロジェクト・ヘイル・メアリー」より、ライアン・ゴズリング演じる主人公ライランド・グレース

「プロジェクト・ヘイル・メアリー」より、ライアン・ゴズリング演じる主人公ライランド・グレース

──オープニングからのめり込んだんですね。原作ファンと聞いていたので、もしかしたらその逆も……なんてことも考えましたが。

それはまったくなかったですね。最後まで本当に楽しませてもらえたし、観終わったあとは「早く感想を話したい!」という気持ちでいっぱいでした。面白かったなあ……。原作だとグレースは自分が今どこにいるのか、何が起きているのか、自分が何者だったかもわからないところから始まるんです。そんな彼の目を通して、読者は物語を読み進めながらこれまでの出来事を追体験していく。それが映画になると、グレースの身に起きたことや何が問題なのかが映像としてすぐわかるので、「頭で想像していたことが、映画ではこんなふうになっているんだ」と興味深かったですね。それと、原作だとグレースとロッキーがずっとしゃべっていて、私の頭の中はその文字ですごくにぎやかなんです。実際には音がないのに。「ロッキーは少し高音になるんだ」とグレースが説明してくれるから、文字が躍っているような感覚があって。本来、宇宙は音のない世界のはずなのに、映画だと始まってすぐいろんな音が鳴っていて、奇妙な音も混ざっている。それがすごく楽しい! 映画体験として面白いし、音だけでなく音楽の使い方もすごく豊かでした。そのおかげで、物語にちゃんと観客が付いて行けるような道標を立ててくれていると感じました。