ぬまがさワタリによるイラスト

ビニールタッキーの「月刊おもしろ映画宣伝」 最終回 [バックナンバー]

ビニールタッキーの「月間おもしろ映画宣伝」最終回 特別寄稿:ぬまがさワタリ

映画宣伝はよくなり続けている

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ここからは、2015年から2025年までの10年間で、ビニールタッキーの印象に残った「おもしろ映画宣伝」を紹介するニュース記事11本を紹介。小見出しの「◯◯を感じる宣伝」というフレーズもビニールタッキーの手によるものである。また前ページのぬまがさワタリによるコラムで抜粋した、「アングスト/不安」「ボヘミアン・ラプソディ」宣伝担当のコメント全文も掲載している。

ビニールタッキーが選ぶ、2015年~2025年のおもしろ映画宣伝

2015年:日本語エンディング曲、ゲスト声優が全盛期だったことを感じる宣伝

イベントレポート
マッドマックス 怒りのデス・ロード」のジャパンプレミアが本日6月4日、東京・TOKYO DOME CITY HALLにて開催され、監督のジョージ・ミラー、日本語吹替版キャストのAKIRA、竹内力が登壇した。

2016年:スポーツ選手と宣伝の変化を感じる宣伝

イベントレポート
スーサイド・スクワッド」のイベントが行われ、リオデジャネイロオリンピックで柔道90kg級を制し、金メダルを受賞したベイカー茉秋とその祖母である小林リナ、そしてなだぎ武が登壇した。

2017年:いわゆる「おもしろ映画宣伝」の変化を感じる宣伝

イベントレポート
本日3月30日、「ゴースト・イン・ザ・シェル」の顔面ハッキングイベントが東京・ニッショーホールにて行われ、長州力、武田梨奈が登壇した。
終盤には、武田が長州を相手にハイキックを炸裂させる場面も。会場が拍手で包まれる中、長州は「キックはキレてましたよ(笑)」とコメントした。

2018年:オマージュ宣伝の変化を感じる宣伝

イベントレポート
「ボヘミアン・ラプソディ」のジャパンプレミアが本日11月7日に東京・TOHOシネマズ 六本木ヒルズにて行われ、キャストのラミ・マレック、グウィリム・リー、ジョゼフ・マッゼロが出席した。
終盤には、法被を着たキャストたちが鏡開きをする場面も。「ウィー・ウィル・ロック・ユー」に合わせて木槌が振り下ろされ、鏡開きは無事に成功。「ウィー・アー・ザ・チャンピオン」がフィナーレに流れる中、キャストたちは観客に手を振りながら会場をあとにした。

「ボヘミアン・ラブソディ」20世紀フォックス宣伝担当(当時)コメント

「ボヘミアン・ラブソディ」が社会現象的なロングラン大ヒットになるなんて、宣伝担当の誰も予想していませんでした。しかし、予告編への熱い反応や、来日前に行われた完成披露試写会のただならぬ熱気の中で、私たちはヒットの兆しを感じていました。映画ナタリーの記事のリードが示すように、クイーン役のキャストが来日するという事実だけで、キャストが誰であろうと関係なく、クイーンのヒット曲を知っている熱烈なファンが多数いたのです。

来日キャンペーンでは、何度も来日経験のある親日家のクイーンの「ベタ」なキャンペーンをあえて意識しました。外国からのゲストが法被を着て鏡開きをするという、ビートルズ来日以来のお決まりの日本風の演出です。揃いの法被にはキャスト名ではなく、クイーン/フレディ・マーキュリー、クイーン/ブライアン・メイ、クイーン/ジョン・ディーコンといったバンド・メンバー名を左右に入れました。鏡割り用の祝い酒樽は、ひょっこりはんがフレディに扮して運び入れ、持ちネタを披露した後、観客と一緒に「ウィ・ウィル・ロック・ユー」を大合唱して鏡開きを行うなど、まさに“胸アツ”、大盛り上がりのイベントとなりました。

とはいえ、いくつかのハプニングもありました。別の映画の撮影が延びて急遽欠席となったロジャー・テイラー役のベン・ハーディ。彼が乗るはずだった飛行機に乗っていないという連絡を受け、現場ではかなり慌てました。そこで、3人のキャストからの依頼もありベン・ハーディのカットアウトパネルを作成し、東京タワー前でのクイーンオマージュフォトシュートで使用しました。驚いたことに、キャストはそのパネルを非常に気に入り、プライベートで居酒屋や箱根旅行にまで持っていき、最後はスーツケースに畳んで持ち帰りました。まさに、彼ら4人が“クイーン”のメンバーとして、映画の役柄を超えた絆を築いていたことを強く感じました。

ジョー・マッゼロ(「ボヘミアン・ラプソディ」ジョン・ディーコン役)Instagram

裏話として、来日キャンペーンは映画公開の直前2日前という最高のタイミングだったにも関わらず、テレビ取材(朝の情報番組など)のブッキングにはかなり苦戦しました。しかし、オンライン媒体、ラジオ、ジャーナリスト、アナウンサー、インフルエンサーからの反応は非常に熱く、公開後には、TVでの大ヒット劇場取材や、社会現象特集、クイーン特集など含む大量露出につながりました。

オープニングから5週目となる週末が最高興収となる尻上がり興行で、最終興収は134億円の大ヒット、伝説のチャンピオン(We are the Champions)となった良い思い出です。

2019年:キャラクター来日の変化を感じる宣伝

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某日到着したヘルボーイは、初めての羽田空港でキョロキョロ。日本でのPR活動に奮起しつつ、展望デッキからの景色を楽しむことも忘れなかった。

2020年:事前の注意喚起の変化を感じる宣伝

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予告編が解禁されたあと、SNS上では愛犬家たちから劇中に登場する犬を心配する声が上がっていた。そのため映像では、惨殺事件の犠牲となった、とある一家で飼われている犬に着目。愛犬家が映画を安心して鑑賞できるように、犬の安否を事前に知ることができる。

「アングスト/不安」宣伝担当コメント

もともと犬の安否を保証する動画を公開する予定は宣伝計画案としてありました。しかし予告編を解禁した後、あまりにも犬の安否を心配する声が多かったことから、必死にSNSで「犬は無事です」と一人ひとりリプライを送っていたのですがその様子がさらに注目を集めてしまったため、動画出しスケジュールを早め、緊急で製作と解禁を早めた記憶があります。

その後、犬が無事なことが広まり、あまりの犬需要に驚き犬無事ステッカーと犬無事Tシャツを作り、犬の飼い主だったサウンドトラックの作曲者の方にTシャツを送って着ていただきました。
予告編には、アクセントとして犬の姿を入れたのですがこんなことになるとは思わず、皆さんの犬への愛に圧倒され励まされました。

2021年:コラボ動画の変化を感じる宣伝

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映像は未確認巨大生物が新日本プロレスの道場へ向けて東京湾を北上する様子から幕開け。大のゴジラ好きとして知られる獣神サンダー・ライガーが緊急出動を要請される。引退後初めてバイオアーマーに身を包んだという獣神サンダー・ライガーは新日本プロレスの入団テストとして、初代ゴジラを迎え撃つ。

2022年:大掛かりな宣伝の変化を感じる宣伝

イベントレポート
来日中のブラッド・ピットが「ブレット・トレイン」のプロモーションのため、東海道新幹線のぞみに乗車。東京発・京都行きの高速列車という映画の舞台にちなみ、本日8月23日、史上初となる走行中ののぞみ内でのレッドカーペットイベントに出席した。

2023年:ゲスト声優の変化を感じる宣伝

イベントレポート
映画「トランスフォーマー/ビースト覚醒」の等身大立像お披露目イベントが本日8月1日に東京・新宿の歌舞伎町シネシティ広場で行われ、日本語吹替版キャストの中島健人(Sexy Zone)、仲里依紗が登壇した。
本編を鑑賞した中島は「原作ファンとして、ただただ夢が叶った作品でした。小さい頃から『ビーストウォーズ 超生命体トランスフォーマー』という作品を愛していて、20数年後にハリウッドで実写化したこの映画で吹替を担当できたことに、本当に感動しています」と述べる。バンブルビー推しの仲は「自車をバンブルビー風にしているくらい『トランスフォーマー』シリーズが大好き。今回こうして携われたことが本当にうれしかったし、NYプレミアでキャスト、スタッフにお会いできたことが自分史上最強レベルにうれしかったです。バンブルビーってやっぱカッコいい!」と頬をゆるませた。

2024年:「映画監督」の扱い方の変化を感じる宣伝

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映画「ボーはおそれている」の監督であるアリ・アスターが、明日1月26日に発売されるファッション雑誌・CLASSY.3月号に登場。連載企画「着回しDiary」に本人役で出演している。

2025年:真っ当な宣伝の意義を感じる宣伝

コラム
ヒット作の裏側を関係者に取材する本企画では、「教皇選挙」の配給会社であるキノフィルムズの宣伝部・赤羽根英之にインタビューを実施。社会派ミステリーとしてのターゲット構築や、「把握しきれないほど」と語る本作の影響、作品の持つ力を信じる宣伝について語ってもらった。

「ビニールタッキーの『月刊おもしろ映画宣伝』」最終回に寄せて

映画ナタリー10周年企画として記事を書いてもらうための打ち合わせで、ビニールタッキーが繰り返し言っていたのは「この10年で映画宣伝はよくなっている」ということだった。選んでもらったニュースも「おもしろい順に上から11本」ではなく「昔と比べてよくなっている点、変化している点がわかりやすい11本」といったところだろうか。「よくなっている」というのは例えば、以前なら舞台挨拶に著名人が呼ばれる場合、話題性や知名度が優先されることが多かったが、昨今ではその映画のことが好きなタレントや、持ちギャグが映画と関連している芸人など、なんらかの工夫が見られるようになっているということだ。もっと単純な部分で言うと、宣伝用に作られた動画や、タレントによる吹替のクオリティも上がっている。そのほかあらゆる意味で「映画宣伝はよくなっている」ということを彼は連載中から常に訴えていた。

また、「おもしろ映画宣伝」というタイトルでありながら悪い意味での「おもしろ」は取り上げず、基本的には褒める姿勢だった。わかりやすさを優先すれば「昔はこういうニュースが炎上したけど、それと違ってこれはよかった」と悪い例を出すようなことがあってもよさそうなのに、だ。

この連載で取り上げるニュースは基本的にすべて担当編集である自分が宣伝担当に連絡していたが、いい取り上げ方しかしていないために報告する際に一切気まずさがなかった。編集者としては非常にありがたかったし、宣伝側からもお礼を言われることしかなく、誰も傷付けていない連載だったということは記録しておきたい。

ビニールタッキーさん、ありがとうございました。

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読者の反応

ぬまがさワタリ@『いきものニュース図解』など3/19発売 @numagasa

昨年10月に残念ながら亡くなった友人ビニールタッキーさんが、映画ナタリーで連載していたコラム「月間おもしろ映画宣伝」。
このたび不肖私が、その最終回(とささやかなイラスト)を代わりに書かせてもらいました。
ウォッチャーの旅路は終わっても、映画宣伝の物語は続く!
https://t.co/egAZsX1QH2

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