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映画超初心者・ミルクボーイ駒場孝の手探りコラム「えっ、この映画ってそんなこと言うてた?」 第23回 [バックナンバー]

原稿の締切を守れなくなるほど感想のまとめに時間が掛かった「サマーウォーズ」

僕は何を思えばいいんだろう

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これまで名作をほぼ観たことがないまま育ち、難しいストーリーの作品は苦手。だけど映画を観ること自体は決して嫌いではないし、ちゃんと理解したい……。そんな貴重な人材・ミルクボーイ駒場孝による映画感想連載。文脈をうまく読み取れず、鑑賞後にネット上のレビューを読んでも「えっ、この映画ってそんなこと言うてた?」となりがちな彼が名作を気楽に楽しんだ、素直な感想をお届けする。

第23回のお題は、「サマーウォーズ」。名作映画をいろいろ観たいが実は「アニメの優先順位は低い」という彼は、本作を観て夏の匂いは感じつつも「今まで20本以上観てきて初めての感覚になった」という。

/ 駒場孝(コラム)、松本真一(作品紹介、「編集部から一言」

アニメ映画は自分の中では優先順位が低い

こんにちは、ミルクボーイ駒場です。今回鑑賞したのは2009年公開「サマーウォーズ」です。ほぼ1年前に鑑賞した「時をかける少女」と同じ監督で、スタッフさんも多く引き継いでいるということで、絵はもちろん全体の雰囲気もとても似ていましたし、それと同時に「時をかける少女」を観てからもう1年経ったんだと、月日の早さも感じました。

「サマーウォーズ」に関して事前知識はありませんでしたが、もちろんタイトルは聞いたことはありましたし、レンタルビデオ屋さんでポップも見たことはあります。テレビでもつい最近放送していたとのことです。そんな感じで観るチャンスは何度もあったはずですが観てませんでした。これはめちゃくちゃ勝手な話ですが、映画初心者として、この世に数多ある映画の中でまず何から観ようとなったとき、なんとなくですが“押さえておきたい映画のジャンルランキング”がありまして、その1位はやはり洋画なんです。これは究極に僕個人の感覚です。人として知っておかないといけない洋画をある程度押さえたら2位は邦画の名作です。そして3位は邦画の名作の中でも白黒の作品。その辺りを押さえてから最後にアニメ映画かなと思うんです。そんなランキングなので、アニメ映画は自分の中での優先順位が低く、なかなか真っ先に観ようとはならなかったんですよね(この場合の「アニメ映画」は、ディズニーやジブリ、「クレヨンしんちゃん」などは除く(こんな共感しにくい感覚の話でいちいち丁寧に括弧でくくって細かく言うことでもないですが(括弧の中に括弧入れてみました、どうでしょう?(括弧の中の括弧ボケって斬新かと思ったけどインスタのハッシュタグ遊びってこんな感じですね(面白いと思ったのに(悔しい(あと「括弧」てこんな字なんや)))))))。

まぁそんな具合でアニメ映画にはなかなか手を出してこなかったんです。でも「サマーウォーズ」は夏の風物詩とのことですので楽しみに観させてもらいました。

これはどういう気持ちになるのが正解なのかな

内容は、最初、仮想世界みたいな設定が難しいのかなと思いましたがそこはそこで存在するものとして、仮想世界に行ったり現実に戻ったりということではなかったので大丈夫でした。あと登場人物が多すぎて大変だなと思いましたが、もちろん把握するに越したことはないでしょうが、そこまで完璧に相関図を覚えておかなくてもほぼ親戚だということと、主要な人物をある程度わかっていれば大丈夫な話だったのでよかったです。全体的にストーリーもわかりやすくてスムーズに観ることができました。

あと、「時をかける少女」を観たときもそうでしたが、「夏を感じられるなぁ」ととても思いました。日差しとか雲とか、甲子園の描写もあったりして、タイトルに“サマー”と入ってるだけのことはありました。しかも昨今の暑すぎる夏ではなく、昔のほどほどの暑さのさわやかな夏の感じでとてもいいです。画面から“田舎の夏”の匂いがしてきそうなくらいとても夏の映画でした。

ただそれ以外のことで言うと、なんと言いますかとても言い方が難しいですが、観終わったあと、「これはどういう気持ちになるのが正解なのかな」というのが率直な感想でした。話もわかりやすいし観やすいし、一件落着してよかったということなのですが、「ほーう」という感じでした。以前「グッド・ウィル・ハンティング 旅立ち」を観たときに、映画は受け身なだけではダメだと学んだのでそれ以来前のめりで観るようにしていましたが、そんな感じでした。

なんでしょう、もちろん素敵ないいお話なので、作品が悪い訳ではなく、受け手の僕の問題ですね。なんとなく、誰に感情を入れて観たらいいかわからなかった気がしました。もちろん「がんばれ」とかは思いましたが、観終わったあと、「僕は何を思えばいいんだろう」とイエモン状態になりました。もっと子供の頃観ていたら楽しめたのか、あるいは花札が好きなら楽しめたのか、そんなことではないですよね。この気持ちをどう伝えたらいいかが難しく、感想をまとめるのに時間が掛かりこのコラムの提出期限も過ぎてしまいました。えげつない言い訳、申し訳ないです。

そして今回の「そんなこと言うてた?」ですが、作中に出てくる「よろしくお願いします!」というセリフ、そんな有名って言うてた?です。レビューなど見ると「これこれ!」とか「名台詞!」と書かれていましたが、本当にまったく知らなかったです。映画を知らなくても「エイドリアーン」のようなフレーズだけは知ってるとかは今までもたくさんありましたし、むしろそういうのは知ってるほうやと自負していました。ただ、この「よろしくお願いします!」だけはまったく知らなかったです。もしかしたら今まで誰かがこれを真似してボケたりしたのを反応せずにスルーしていたことが何度もあったのかもしれません。その点では、新たな映画知識が増えてよかったと思いました。実際に前も舞台で「『マッドマックス』の改造車の前に張り付いてギター演奏してるやつ」という例えをされたとき、めっちゃ笑えました。「あれね!」とすぐ思えました。やはり映画知識は吸収しておくべきですね。

「サマーウォーズ」、今まで20本以上観てきて初めての感覚になった映画でした。本数を重ねてくると自分の好みとかタイプみたいなこともわかってくるんですね。また勉強になりました。

これからも色んな作品を観ていこうと思います!

編集部から一言

お題を出した時点である程度の駒場さんの感想は予想するもので、今回だと過去の傾向から「仮想世界のことが理解できるかな」「親戚が多すぎて覚えられないかな」と心配していました。ですが、それを乗り越えたうえで、原稿の締切を守れなくなるほど感想に悩んだようでした……。
ただ、「駒場さんの好きそうな映画を観てもらって褒めてもらう」という連載ではなく、「映画初心者がいろいろ観る」というコンセプトなので、リアルな感想もそのまま残したいと思います。個人で映画を探すと「なんとなく自分が好きそうな映画だけを観る」ということに陥りがちなので、そうならないためにこの連載の意義があるのかも……と改めて感じました。駒場さんの中でディズニーやジブリ以外のアニメ映画の優先順位が低いのが初耳でしたが、連載第11回の「THE FIRST SLAM DUNK」など好評だったものもあるので、隙を観てアニメも観てもらいたいと思います!

「サマーウォーズ」(2009年製作)

「サマーウォーズ」Blu-rayジャケット

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「時をかける少女」の細田守による初の長編オリジナル作品となる本作の舞台は、OZと呼ばれる仮想世界が世界中の人々の暮らしに深く浸透している世界。東京に住む高校生の健二は、憧れの先輩・夏希の頼みで、彼女の故郷を訪れる。その頃OZがハッキングAI・ラブマシーンに乗っ取られる事件が起こり、ひょんなことから事件の犯人だと濡れ衣を着せられた健二は夏希や彼女の親戚とともに、ラブマシーンに立ち向かうことになる。「時をかける少女」に引き続き制作はマッドハウス。同じく脚本の奥寺佐渡子、キャラクターデザインの貞本義行らも参加している。Blu-ray / DVDはVAPから販売中。また細田の最新作「果てしなきスカーレット」が11月21日に公開される。

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駒場孝

1986年2月5日生まれ、大阪府出身。ミルクボーイのボケ担当。2004年に大阪芸術大学の落語研究会で同級生の内海崇と出会い、活動を開始。2007年7月に吉本興業の劇場「baseよしもと」のオーディションを初めて受け、正式にコンビを結成する。2019年に「M-1グランプリ2019」で優勝し、2022年には「第57回上方漫才大賞」で大賞を受賞。現在、コンビとしてのレギュラーは「よんチャンTV」(毎日放送)月曜日、「ごきげんライフスタイル よ~いドン!」(関西テレビ)月曜日、「ミルクボーイの煩悩の塊」「ミルクボーイの火曜日やないか!」(ともに朝日放送ラジオ)など。またミルクボーイが主催し、デルマパンゲ、金属バット、ツートライブとの4組で2017年から行っているライブ「漫才ブーム」が、2033年までの10年を掛けて47都道府県を巡るツアーとして行われている。

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