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映画超初心者・ミルクボーイ駒場孝の手探りコラム「えっ、この映画ってそんなこと言うてた?」 第24回 [バックナンバー]

皆さん「七人の侍」観たほうがいいですよ!

これはどえらい作品です

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これまで名作をほぼ観たことがないまま育ち、難しいストーリーの作品は苦手。だけど映画を観ること自体は決して嫌いではないし、ちゃんと理解したい……。そんな貴重な人材・ミルクボーイ駒場孝による映画感想連載。文脈をうまく読み取れず、鑑賞後にネット上のレビューを読んでも「えっ、この映画ってそんなこと言うてた?」となりがちな彼が名作を気楽に楽しんだ、素直な感想をお届けする。

連載2周年を迎えた第24回のお題は、「七人の侍」。日本映画きっての名作と言っていい同作ではあるが、公開から70年以上経った今、駒場の目にはどう映るのか……という編集部の懸念をよそに、「これはどえらい作品」というストレートな大絶賛が届いた。

/ 駒場孝(コラム)、松本真一(作品紹介、「編集部から一言」

2年の連載で映画に対するハードルが下がった

こんにちは、ミルクボーイ駒場です。今回でこちらのコラムが24回目ということで、開始から2周年だそうです! これはこれはありがたいことです! そもそも僕が「映画を知りたいのにちょっと複雑なことをされたらわからなくて、『君の名は。』とかは何回観ても泣けるくらいわからない」とか、「ダース・ベイダーは史上最強の悪の存在と思っていたら普通に上司みたいなおじさんに怒られててびっくりした」みたいな映画初心者話をラジオでしていて、それをたまたま劇場でご一緒させてもらった映画エキスパートのこがけんさんに話したところ「そんな視点はなかった、面白い!」と言ってもらえて、それが映画ナタリーさんに伝わったことからどんどん話が進み連載が始まり、2年が経ったという感じです。

有名すぎる映画を観て、今さらその感想を書くコラムなんて見たことがないので、そんなことをやらせてくれた映画ナタリーさんには感謝ですし、毎月読んでもらっている皆様にも感謝です。ありがとうございます。

感想を書くとき、一応ネタバレしないように内容の細かなことは書かないようにしようと思ったりしているのですが、基本は誰もが知ってる名作ばかりを観ているので、たまにふと「僕以外みんな内容知ってるやろ、何を隠してんねん」と思うときもあります。でももし僕のような映画初心者の方がいたらと考えて、これからもそんなささやかな配慮をしながら書かせてもらいます。

2年やってきて感じるのは、「映画が観れるようになったな」ということです。というのも今までの僕は「観た結果面白くなかったらどうしよう」とか「どうせ途中から意味わからないんやろう」とか思って、はなから映画に費やす時間がもったいない気がしていたんです。それが、毎月1本映画を観るというルーティンができてから観ることに対するハードルがなくなりました。1日のタイムスケジュールを円グラフで表したときに「映画鑑賞」という項目を入れられるようになった感じです。「2年やってその程度か」と思わないでください、個人的にこれがかなりでかいんです。今までなら「それならその時間ほかのことしたいな」と思ってましたから。そして映画を観るようになり、内容的にわかる・わからないはまだムラがあるにせよ、確実に人生が豊かになっています。今まで映画を観てこなかったからこそ今になって毎月観て色々感じるものがある、このタイミングまで映画を観てこなかった自分にナイスと伝えたいです。

新作として上映されても違和感がないのでは

さぁそしてそんな2周年の節目に鑑賞させてもらう映画は、1954年公開の「七人の侍」です。日本代表みたいな映画だということは知ってますが、観ずにここまできました。これもいいことか悪いことかわかりませんが、今観ることになってよかったです。

黒澤明さんが監督で、三船敏郎さんが出ている作品ということぐらいは知っていますが、ほかの情報はありませんでした。上映時間は207分、途中でかでかと「休憩」と書かれた5分間がありますがたっぷり観させてもらいました。率直な感想としては、「どえらい」ですね。これはどえらい作品です。僕が映画監督でこれが撮れたとしたらもう引退すると思います。それくらい出し切ってました。そりゃ伝説やわと思いました。話もわかりやすく面白いし、すごい点はたくさんありますが、それにしてもけっこうメインの疑問として「この時代にこれをどうやって撮ったの?」とずっと不思議でした。最後のとんでもないアクションとか、途中のなかなかの炎とか、馬の動かし方とか、CGとかそんなんもないので全部本人であり本物ですよね? そこがすごすぎました。

これを観てて、ベタに映画のコントみたいに、

監督「はいカットー、いやー今のよかったねー」
三船さん「そうですか? ありがとうございます」
監督「よかったよかった、お疲れ様、今からちょっとみんなで飲みに行こうか」
三船さん「いいっすねー!」

とか絶対ないんやろうなと思いました。全員、この作品の撮影期間中は、映画「七人の侍」の中で生きている気がしました。そんな緊張感とリアルさ、細部まで血が通っている感じがとても伝わりました。なので白黒なのに古臭さが感じられず、仮に今新作として上映されても違和感がないんじゃないかとも思いました。

そして今回の「そんなこと言うてた?」ですが、「そんなこと言うてた?」ではなく、「今なんて言うてた?」ですね。定期的に何を言ってるかわからない箇所がありました。巻き戻したりして聞くのですがそれでもわからず、テレビじゃなくスマホで観てるから悪いのかなと思ってそれとなくレビューなど見たところ、やはり出演者さんが何を言ってるかわからないところが多々あるのはあるあるなんですね。昔のしゃべり方やったり、録音機器の古さも理由みたいですが、でもあるレビューによると黒澤監督があえてわかりづらいままにして何度も観てもらうようにしたとか。真相はわかりませんが、なんかそんな逸話も込みで面白いですね。

たぶん何度も観て、そういう裏話などの書籍、出演者さんのインタビュー記事なども読んだりしてまた観たりしたらもっと入り込めて、しがもうと思えばどこまででも味のする映画なんやろうなと思いました。今コラムの2周年を飾るのにふさわしい作品に出会わせてもらいました。ほんまに観てよかったです。皆さん「七人の侍」観たほうがいいですよ!

というわけで、これからもいろんな映画を観ていきたいと思います! 3年目もよろしくお願いします!

編集部から一言

映画に詳しくない人が、(観たあとにネット上のレビューも参照しながら)詳しくないなりに素直な感想を書くという、この連載も2周年です。「映画を観るハードルが下がった」といううれしい言葉をありがとうございます。
前回のコラムで「邦画の名作の中でも白黒の作品」も優先して観たいという言及があったので、「七人の侍」をチョイスさせていただきました。数多くの作品に影響を与えたエンタテインメント作だけあって、さすがの駒場さんも大満足だったようです。「皆さん『七人の侍』観たほうがいいですよ!」という、「ジョーズ」回での「スピルバーグ監督、めっちゃすごいですね」を彷彿とさせる名言が出ました。「もうみんな観てるよ」と言いたいところですが、1954年公開の作品ですので、映画ナタリー読者の中にも未見の方は多いと思われます。これまで敬遠していた人も、このコラムをきっかけに視聴してみては。

「七人の侍」(1954年製作)

「七人の侍 4K リマスター 4K Ultra HD Blu-ray」パッケージ ©1954 TOHO CO., LTD.

「七人の侍 4K リマスター 4K Ultra HD Blu-ray」パッケージ ©1954 TOHO CO., LTD. [拡大]

時は戦国時代末期、野武士たちの襲撃に悩まされている村があった。村人たちはその対策として、個性豊かな7人の侍を雇う。数で勝る野武士に対し、侍と村人が協力して挑む姿を描く。黒澤明が監督を務め、三船敏郎、志村喬らが出演した。当時としては破格の製作費と年月を掛けて製作され、1954年の第15回ヴェネツィア国際映画祭では銀獅子賞を受賞。1960年には本作を西部劇にリメイクした「荒野の七人」が製作されたほか、国内外を問わず数多くの映画、マンガ、アニメにも影響を与えたと言われている。2018年にイギリス・BBCが発表した「史上最高の外国語映画ベスト100」では1位に選ばれるなど、世界でもっとも有名な日本映画の1つ。東宝から4Kリマスター版の4K Ultra HD Blu-rayおよびBlu-rayが販売中だ。また全国で開催中の特集上映「午前十時の映画祭15」では、10月17日から11月6日まで「七人の侍(新4Kリマスター版)」がスクリーンにかけられる。上映劇場は特設サイトで確認を。

七人の侍 4K リマスター 4K Ultra HD Blu-ray

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七人の侍 4Kリマスター Blu-ray

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価格:税込5500円

駒場孝

1986年2月5日生まれ、大阪府出身。ミルクボーイのボケ担当。2004年に大阪芸術大学の落語研究会で同級生の内海崇と出会い、活動を開始。2007年7月に吉本興業の劇場「baseよしもと」のオーディションを初めて受け、正式にコンビを結成する。2019年に「M-1グランプリ2019」で優勝し、2022年には「第57回上方漫才大賞」で大賞を受賞。現在、コンビとしてのレギュラーは「よんチャンTV」(毎日放送)月曜日、「ごきげんライフスタイル よ~いドン!」(関西テレビ)月曜日、「ミルクボーイの煩悩の塊」「ミルクボーイの火曜日やないか!」(ともに朝日放送ラジオ)など。またミルクボーイが主催し、デルマパンゲ、金属バット、ツートライブとの4組で2017年から行っているライブ「漫才ブーム」が、2033年までの10年を掛けて47都道府県を巡るツアーとして行われている。

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読者の反応

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松本 @matsushin1978

担当しております駒場さんの連載更新されました。
令和7年ですが「『七人の侍』が面白いから観たほうがいい」という話をしています。 https://t.co/tkE41DejUB

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