ミルクボーイ駒場孝の「えっ、この映画ってそんなこと言うてた?」第10回ビジュアル

映画超初心者・ミルクボーイ駒場孝の手探りコラム「えっ、この映画ってそんなこと言うてた?」 第10回 [バックナンバー]

レンタルビデオ屋で何度も借りるのをあきらめた「時をかける少女」

あの落語の登場人物も、タイムリープをかまされている

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これまで名作をほぼ観たことがないまま育ち、難しいストーリーの作品は苦手。だけど映画を観ること自体は決して嫌いではないし、ちゃんと理解したい……。そんな貴重な人材・ミルクボーイ駒場孝による映画感想連載。文脈をうまく読み取れず、鑑賞後にネット上のレビューを読んでも「えっ、この映画ってそんなこと言うてた?」となりがちな彼が名作を気楽に楽しんだ、素直な感想をお届けする。

第10回で観てもらったのは、2006年に公開されたアニメーション映画「時をかける少女」。時間旅行系など、時系列が複雑になる作品を苦手とする駒場は、本作もかつてレンタルビデオ屋で「理解できないだろうな」と借りるのをあきらめたというが、この機会にネットの考察の力も借りながら鑑賞。さらに「〇〇こそがタイムリープものの元祖かもしれない」と独自の説を展開した。

/ 駒場孝(コラム)、松本真一(作品紹介、「編集部から一言」

かつて「7泊8日借りても理解できないだろうな」と思いあきらめた記憶

こんにちは、ミルクボーイ駒場です。今回鑑賞した作品は2006年に上映された「時をかける少女」です。予備知識はほとんどないのですが、今まで何度かレンタルビデオ店で借りようかと思ったことがありました。ただ、タイトルですでに「時をかける」と言ってますし、レンタルビデオ店の店員さんの一言コメントみたいなところにも「時間を越えた青春の物語」的なことが書かれていたので「7泊8日借りても理解できないだろうな」と思いあきらめた記憶があります。あと、女の子が躍動しているイラストのポスターの感じはなんとなく見覚えがあったのですが、今回改めてその画像を見ると、公開から20年近く経っているという古さは感じず、かと言ってめちゃくちゃ最新という感じもなく、絶妙な雰囲気のポスターだと思いました。昔にも見えるしそこそこ新しくも見える、昔と今どちらとも取れるポスター、ここからすでにタイムリープを匂わせているのでしょうか。考察めいたことを言ってみましたが、たぶん考察ってこんなんとは違いますよね。勝手なこと言いすぎですもんね。でもそもそも考察って、誰が言えばある程度オフィシャルになるんでしょうか? 映画を知り尽くした説得力を持つ人が言わないと考察にならないのか。僕みたいな素人が言うことでも考察になるのか。誰か1人でも信じてくれた時点から考察なのか、考察に溺れてしまいそうです。ただ「考察」という言葉を調べてみると「物事をさまざまな角度から見て理解すること」とあるので、合っていようが間違っていようが自分がそう思うならそう、という感じなのですかね。そう思えば考察ってそんなに難しいものではないのかなと思えました。大間違いではない限り、自分なりにそう思ったということであればそれは考察なのかな。とりあえず考察の考察はこれくらいにしておきます。

そして「時をかける少女」ですが、2006年公開だということに驚きましたが原作は1967年の小説だったということにも驚きました。さらに「タイムリープ」という言葉自体がこの作品で作られた和製英語だということにさらに驚きました。「タイムスリップ」とか「タイムトラベル」という言葉はあったのに、「タイムリープ」という言葉を作ったのは前衛的ですし、「タイムリープ」のほうが「スリップ」とか「トラベル」より、より不思議に感じる響きなのがすごいです。観る前から難しいだろうということは覚悟していたので気合いを入れて観ましたが、元祖タイムリープということで最初ははちゃめちゃに難しい内容ではなかったように感じました。こうしたらタイムリープが作動してこうなる、というのがわかるし、丁寧に描いてくれた気がします。ただやはり中盤からどんどん展開して最後のほうは難しくなっていきました。何度か観返しましたがあまりわからず、結局ネットの考察なども見てなんとか付いていった感じです。やはり少し複雑にタイムリープされると今がいつでどの時間軸か、というのがかなり難しくなりますね。その感覚はまだまだ未熟だなと感じました。

あの落語こそが元祖タイムリープかも

でもそんな難しかったことは差し置いて、映画全体に感じられる夏らしさと青春の感じはとてもいいなと思いました。あと映画を通して最低でもワンシーンは自分の思い出とリンクする場面が皆それぞれにある気がして、それを表現しているのはすごいと思いました。ただ、今回の「そんなこと言うてた?」は、今までの中でも特に「そんなこと言うてた?」なのですが、今作に出てくるある人物が、原作の小説の人物と同一人物だ、ということです。本当に「そんなこと言うてた?」でした。僕は完全にネットで見て知りましたし、作中でも説明的なことはなかったように思います。まぁこれはファンへのお楽しみなのかもしれないですが、にしてもネットを見ていなかったら知りようがなかったのでびっくりしました。こういうこともあるんですね。

ちなみに「時をかける少女」は「時かけ」と略されるらしく、大学の頃落研だった僕は「時かけ」って落語の「時そば」と似てるなと思い略した途端、変に親近感が湧きました。ただこの「時そば」、そばを食べて会計するとき小銭を出しながら「一つ、二つ、三つ、四つ、五つ、六つ、七つ、八つ」と数えていって、店主に「今何刻(なんどき)?」と聞き、「九つ」と時間を言わせて九枚目の小銭を出された気にさせて「十、十一……」と数えていって一文浮かせる、というトリックが軸の話。よく考えてみるとこれもそば屋の店主からしたらめちゃくちゃ微妙に時が進んでるとも言えますよね。超最短のタイムリープをかまされていますよね。そう考えると「時そば」こそ元祖タイムリープの物語なのかもしれないなとか思いました。まぁおあとは決してよろしくはないですが、そんなことを思った「時かけ」でございました。これからもいろんな作品を楽しみたいと思います!

編集部から一言

「時間系の作品は苦手」と何度も聞いていましたが、「バック・トゥ・ザ・フューチャー」は楽しめたということでこれも……と思って観てもらいました。かつてレンタルビデオ屋で何度も「難しそう」とあきらめた作品を観てもらういい機会になったのではと思います。読者の皆さんも、かつては理解できなかった作品を、インターネットの考察や周りの知人の力を借りながら観直してみると楽しいかもしれません。

「時をかける少女」(2006年製作)

「時をかける少女」Blu-rayジャケット

「時をかける少女」Blu-rayジャケット

筒井康隆の小説を細田守監督が再構築し、初めてアニメーション映画化した本作。タイムリープという、過去に飛べる能力を手にした女子高校生の真琴は、自分の過去をやり直していくうちに「人生のかけがえのない時間」の意味を見つけ出していく――。アニメーション制作はマッドハウスが担当。第30回日本アカデミー賞では最優秀アニメーション作品賞を受賞している。Blu-rayはKADOKAWAから発売中。

Blu-ray「時をかける少女」(通常版)

品番:KAXA-1100
税込価格:7260円

駒場孝(コマバタカシ)

1986年2月5日生まれ、大阪府出身。ミルクボーイのボケ担当。2004年に大阪芸術大学の落語研究会で同級生の内海崇と出会い、活動を開始。2007年7月に吉本興業の劇場「baseよしもと」のオーディションを初めて受け、正式にコンビを結成する。2019年に「M-1グランプリ2019」で優勝し、2022年には「第57回上方漫才大賞」で大賞を受賞。現在、コンビとしてのレギュラーは「よんチャンTV」(毎日放送)月曜日、「ごきげんライフスタイル よ~いドン!」(関西テレビ)月曜日、「ミルクボーイの煩悩の塊」「ミルクボーイの火曜日やないか!」(ともに朝日放送ラジオ)など。またミルクボーイが主催し、デルマパンゲ、金属バット、ツートライブとの4組で2017年から行っているライブ「漫才ブーム」が、2033年までの10年を掛けて47都道府県を巡るツアーとして行われる。

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(c)「時をかける少女」製作委員会2006

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