選者 / 桃月なしこ「Curve」【動画全編 公開中】

取材・文 / 田尻和花

日常生活でも想像できてしまう怖さ

すごく簡単にあらすじを説明するなら、目が覚めたら絶妙な角度のカーブの淵にいました。以上（笑）。この作品は（映画アクティビストの）DIZさんのTwitterで知ったんですが、すごく紹介が上手なので、そこで知る映画もけっこう多いんです。短編映画はなじみがなかったのでどんなものだろうって観てみたら、ずっと心臓を握られている気持ちになったというか、本当にダメで（笑）。

高所恐怖症とか、閉所恐怖症といった恐怖症を刺激する系の作品です。誰かが死んだり、めちゃくちゃ血液が出る描写があるわけではないんですが、なんとなく想像できちゃうから気持ち悪くて。例えばダムが怖いみたいな、日常生活でも想像できちゃう怖さだからダメなんだなと。10分間でトラウマを植え付けられるじゃないですけど、なんかずっと残るんですよ。「Curve」を観たのは数年前だったんですが、インパクトがありすぎて、ふと思い出して紹介しようと思いました。

私は最初はシンプルに観て深い意味を考えてなかったんですが、ネットの考察でなるほどと思ったのは“中絶を意味しているんじゃないか”というもの。それを踏まえてもう1回観ると、またさらに苦しくなるというか。劇中の雨は滑りやすさで恐怖心をあおるものだと思っていたんですが、羊水をイメージしているんじゃないかと言ってる方もいて、そういう見方もあるのか！と驚きました。主人公とは反対側にあるカーブに血痕がどんどん増えていく場面がありますが、彼女がもがいて追い詰められている描写として表現されたものかなと私は思っています。左足にけがをしているのも、目が覚める前に何かがあったことをイメージさせるというか、この作品の裏のモチーフを表現しているんでしょうね。最後ははっきり描かれていませんが、あのカーブでは逃げ出せないので……。百歩譲って助かるとしたら、救助ヘリが来るくらいですかね（笑）。すごくシンプルなんですが、いろいろな捉え方、考察ができる作品でした。

桃月なしこ（ももつきなしこ）

1995年11月8日生まれ、愛知県出身。“可愛すぎる現役ナース”として一躍脚光を浴び、ファッション雑誌bisのレギュラーモデル、コスプレイヤーとして活躍している。サカイ引越センターのテレビCMに出演しているほか、「魔進戦隊キラメイジャー」で敵幹部ヨドンナ役に抜擢され、スピンオフ作品「ヨドンナ」シリーズ第1作から第3作で主演を務めた。東映の配信ブランド・Xstream46作品「ようこそ東映殺影所へ」にも主演。2022年放送アニメ「恋は世界征服のあとで」の乱乱役で声優デビューを果たした。テレビ東京系「おはスタ」には金曜レギュラーで出演しており、金曜のレギュラーコーナー「なしことホテイソンの！アニポケチャンネル」を担当。また出演しているMBS地上波番組「ゼロイチファミリアは褒められたい」が放送中、番組公式YouTubeチャンネル「ゼロイチTV」が配信中。

「Curve」（2016年製作）

ふと目を覚ました女性は、自分が曲線の構造物に横たわっていることに気付く。どうにかしようともがくが、滑り落ちれば、真っ暗な深淵の中に吸い込まれることになる。
ティム・イーガンが監督を務め、ローラ・ジェーン・ターナーが出演。2016年のトライベッカ映画祭で短編部門にノミネートされていた。

「Curve」はプロダクション公式Vimeoで全編公開中