選者 / 野水伊織「フランケンフッカー」

文 / 野水伊織（コラム）、田尻和花（作品紹介）

スケベのことしか考えてない馬鹿男は死ぬ！ 女を軽んじる男も死ぬ!!

真に迫る痛みが伴うゴアホラーも好きだが、VFXなどに頼らない、アナログで馬鹿馬鹿しいスプラッタも好きだ。
そんなノリでとある作品を観ていたら、意外と（というのも失礼だが）目から鱗な体験をしたので共有したいと思う。
「バスケット・ケース」のフランク・ヘネンロッター監督作品、「フランケンフッカー」。

フランケンと聞けばおそらく皆、メアリー・シェリーの小説に登場するつぎはぎの身体の怪物・フランケンシュタインを想像するだろう。本当は怪物自体に名前は無く、その名は怪物を作った（ヴィクター・）フランケンシュタインにちなんでいるのだが。
まぁそんなことはさておき、今回紹介するフランケンは一味違う。
タイトル通りフッカー、つまり娼婦なのだ。

科学オタクの青年・ジェフリーは、ある日芝刈り機の事故で恋人・エリザベスを亡くしてしまう。
悲しみに暮れる彼は、遺体から盗んだエリザベスの首を使って彼女を蘇生させるため、パーツに使う娼婦の身体を手に入れようと画策する。

ここだけ書き出すと、小説「フランケンシュタイン」に近しい雰囲気を感じるが、この後の展開がはちゃめちゃに頭が悪くて（褒め言葉）サイコーだ。
呼び集めた娼婦たちが麻薬の過剰摂取で爆発！
部屋に駆けつけた元締めに吹っ飛んだ生首が激突！
そもそもキメすぎると爆発するという麻薬もトンデモだが、人体が花火よりも景気良く散ってゆくその様にはゲラゲラと笑わざるを得ない。これは「キングスマン」にて「威風堂々」が流れるあのシーンにも影響を与えたのではないか？とも思えるほど。
そうこうして爆発でバラバラになったパーツ（鍋蓋みたいな乳房の山がシュールだったな）を繋ぎ合わせ、その身体にエリザベスの首をくっつけると、あら不思議！ フランケンフッカーの出来上がり♪
フッカーとして蘇ってからのエリザベスは何故かバキバキに変顔をしまくっているのだが、演じるパティ・マレンがキュートなせいか、これもまた本作に花を添える要素となっている。

かくしてフランケンフッカーとなったエリザベスは、街へ繰り出し、寄ってくる男たちを手にかけてゆく。
この辺りまできて、私はハッとなった。あれ？ これはもしや、フェミニズムを取り扱った映画なのではと。
辻褄の合わない言葉しか発さず、明らかに様子のおかしいエリザベスのことを自分の都合いいように解釈して、何とかセックスに持ち込もうとする男たち。それをメタメタに殺しまくるエリザベス。うーん、実に小気味がいい！
スケベのことしか考えてない馬鹿男は死ぬ！ 女を軽んじる男も死ぬ!! 独りよがりで余計なことをする彼氏……!!!は死なないが、「反省しなさい」とばかりに説教めいたオチが待っているのでこれも非常にスッキりす。
ヘネンロッター監督はこの作品に、高尚なテーマを込めたわけではないかもしれない。人体が爆発する映画が撮りたかっただけかもしれない。だが、女性の意志を蔑ろにする男性たちに一泡吹かせる展開には、昨今のクソ野郎どもにも見せたいぞと得心してしまった。
世の男性諸君はフッカーちゃんにヤられないよう、どうか清く正しく生きてほしいものだ。

野水伊織（ノミズイオリ）

北海道出身、声優。2009年放送のアニメ「そらのおとしもの」で本格的に声優としてのキャリアをスタートさせ、以降テレビアニメ「デート・ア・ライブ」「ムヒョとロージーの魔法律相談事務所」、ゲーム「艦隊これくしょん-艦これ-」に参加している。現在は配信番組「まろに☆え～るのYouTube LIVE」に出演中。

「フランケンフッカー」（1990年製作）

若き医学生ジェフリー・フランケンは、電動芝刈り機に巻き込まれバラバラになって死んでしまった恋人エリザベスをよみがえらせようと画策。エリザベスの頭部に、売春婦（米俗語：フッカー）たちの人体パーツを組み合わせて再生を図る。しかし生み出されたのは、怪物のような“フランケンフッカー“だった……。
フランク・ヘネンロッターが監督を務め、キャストにはジェームズ・ロリンズ、パティ・マレン、シャーリー・ストーラー、ルイーズ・ラサーらが名を連ねた。

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税込価格：6600円
発売元：是空
販売元：TCエンタテインメント