第4回コミナタ漫研レポート(ゲスト:新條まゆ)【4/5】

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K2への渡航費、私が出してあげたくなっちゃう

新條 そうですね。でも意外とこの主人公の文太郎って、日常にいそうな感じの性格ではあるんですよ。最近流行りのニート系……ではないですけど、かなりのダメ男。でもカッコいいんですよ。

唐木 顔はカッコいいんですよね。でも性格はちょっと……。

(スクリーン:体育座りをする文太郎の画像)

新條 ろくにコミュニケーションは取れないしすっごい不器用で。ちゃんとした服着て笑顔振りまけば、絶対カッコいいのに! って思うんですけど。

唐木 新條さんの好みのタイプって、どんな感じですか。

新條 私が描いてるマンガのヒーローみたいな感じ。なにもかもがカッコよくて、でもちょっと抜けてるところがあったりする人ですね。

唐木 え、でもそれじゃこいつはちょっと、ダメすぎません?

新條 すごいダメな部分があるんだけど、雪山に放り込むと生き生きしてますよね。

唐木 裏を返せば、雪山以外での文太郎はいただけないんだ。

新條 街中ではみんなが振り返るくらい変な人ですよ。いつもリュック背負ってハアハア言ってて。でも本当にK2を目指すことしか考えてなくて、ストイックなのはいいなと。家のこともどうでもよくて、家具とかもほとんどない。天才じゃないと私は惹かれないので、ダメ男だけどじつは天才、っていいなあって。

唐木 そうか、ギャップ萌えもあるんですね。文太郎は街では変人だけど、雪山に行けば……。

新條 カッコいい!っていう。K2への渡航費、私が出してあげたくなっちゃうぐらいです。ここまで思えることはなかなかないんですよ。

キャラクターができたら、ディズニーランドに行かせなさい

唐木 そうやって惚れられるっていうのが、いわゆる「キャラが立ってる」っていうことなんでしょうか。

新條 そうでしょう。マンガに大事なのは設定ではなくて、キャラクターなんですよね。面白いマンガにするには100%といってもいいくらい、キャラクターが大事だと言われています。

唐木 さっき新條プロでは必ず執筆前に先生のネームを読んで、どんな表現にしたらいいかみんなで考えるって話をお聞きしましたが、キャラクターの造形術みたいなものは、アシスタントさんに教えたりトレーニングしたりするんですか。

新條 ディズニーランドを舞台としたシミュレーションをやらせてますね。自分のマンガのキャラクターができたら、まずディズニーランドに行かせなさいって言うんです。複数人いたら、ディスカッションさせるたほうがもっと面白いんですけど。

唐木 3人アシスタントさんがいたらそれぞれの主人公3人で、ディズニーランドに遊びにいくんですね。

新條 少女マンガなので、主人公と相手役の男の子で。3人ならトリプルデートです。たとえばまず8時30分に開園したときに時間どおりに来るのか、どういう交通手段で来るのかを思い描いてみる。私の「快感♥フレーズ」の咲也だったら、フェラーリでおそらく遅刻、でも悪びれもせずに登場……みたいな。

唐木 うわ、すっごいイメージが湧きますね。

「快感♥フレーズ」1巻

「快感♥フレーズ」1巻[拡大]

新條 でしょ? それを他人にイメージさせられるのが、強いキャラクターってことなんです。たとえばチケットを買うときに、どう並ぶのか? 並ばない人もいればおとなしく待っていられる人もいるでしょう。じゃあミッキーマウスと遭遇したら? ふたりで大はしゃぎするのか? 女の子ははしゃぐけど男の子はそれを見守るのか? パレードは、レストランは、あのアトラクションなら? って。

他人の脳内に伝染していくのが強いキャラ

唐木 ディズニーランドだとたいていの人が行ったことあるから、舞台装置は共有できてますもんね。

新條 伸び悩む子は「えっと、スプラッシュマウンテンなら、どうだろ、うーん」って考え込んだりするんです。でも、その場で取ってつけた行動を言っても、他人に伝わらないんですよ。ところがディスカッションを続けていくうちに、本人じゃなくて他のディスカッション相手が「あなたのキャラクターってここではこうしそうだね」って言い出すことがある。

唐木 咲也なら僕だって言えますよ、たぶん、ディズニーランド貸し切り(笑)。

新條 それ、みんな言う(笑)。そうやって他人の脳内に自分のキャラクター像を植え付けることができる子は、だいたいデビューできるんですよ。うちのアシスタントで連載を取れてる子はだいたい自分のキャラクターをしっかり持ってて、それを他人に話せる子なんです。

唐木 自分のキャラクターを他人にどんどん伝染させられると強いということですね。話を「孤高の人」に戻すと、この森くんがもしディズニーランドに行ったら……。

新條 きっと体育座り状態ですよ(笑)。でも頭の中でメリーゴーランドが回ってたりする人なので、意外とたまにニコって笑ったりするんじゃないかとも思うんです。ディズニーランドも観たことがない景色だろうから、ミッキーとかに会って「あっかわいい」とか思うんじゃないかなって。でも基本的に自分からどこか行こうとか言えないし女の子から引っ張られてるでしょう。しかもペットボトルの入ったトレーニング用のリュックを背負ったままだと思う(笑)。

唐木 あはは。すごい細部まで想像できますね。

新條 「きっとこうだよね」って、いろいろと想像欲をかきたてられる。多分そういう気持ちが、おそらく同人誌とかに結びついてくるんだと思うんですけど。

唐木 あーなるほど。二次創作を呼びやすい作品ってありますよね。

新條 二次創作って「このキャラクターがもしもこうだったら、おそらくこういう行動をとるだろう」って想像が膨らんで生まれるものですよね。そしてその作家さんが生みだしたものに共感する人がいっぱいいて同人誌が売れるっていうのが、やっぱり作品力があるっていうことなんです。(つづく)

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