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新国立劇場「かさなる視点」第1弾、三島由紀夫×谷賢一「白蟻の巣」が開幕

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「白蟻の巣」より。左から村川絵梨、半海一晃、平田満、安蘭けい、石田佳央。(撮影:谷古宇正彦)

「白蟻の巣」より。左から村川絵梨、半海一晃、平田満、安蘭けい、石田佳央。(撮影:谷古宇正彦)

「白蟻の巣」が、昨日3月2日に東京・新国立劇場 小劇場にて開幕した。

本作は日本近代演劇の礎となった3作品を30代の気鋭の演出家3人が連続で上演する、新国立劇場による「かさなる視点―日本戯曲の力―」シリーズの第1弾。三島由紀夫が1955年に青年座に書き下ろした初の長編戯曲を、新国立劇場初進出となる谷賢一が演出する。

ブラジルに夫婦養子で入った刈屋義郎(平田満)と妻・妙子(安蘭けい)、そしてその家に仕える運転手・百島健次(石田佳央)とその妻・啓子(村川絵梨)を描く本作。妙子と百島はかつて心中未遂を起こしていたが、刈屋は彼特有の“寛大さ”でそのまま住まわせていた。しかし4人の思惑はやがて奇妙で複雑な三角関係へと変化していき……。

不安定な精神状態で眠れない日々を過ごす妙子を、安蘭はときに虚ろに、ときに激しく細やかな演技で表現。一方、啓子役の村川は、情熱的な若妻を全身で演じる。平田は妻を寛容する穏やかな夫から、やがて啓子の情熱に傾き激情を露わにするまでの刈屋の心情変化を、説得力のある演技で見せた。また邸宅に出入りする大杉安之助(半海一晃)のコミカルな演技や、刈屋と啓子、百島と妙子による、昼ドラのような展開とラブシーンに、客席から笑いが起こる一幕も。三島戯曲の多彩な魅力を感じることができる。

そして本作を象徴する、堅牢で苔むした抜け殻“白蟻の巣”を、美術の土岐研一は舞台奥の紗幕裏に設置。観客に常にその存在を感じさせることで、本作に漂う逃れられない空虚さを顕在化させる。さらに1場では整然と並んでいた夫婦のベッド、一家のダイニングテーブル、応接間のソファーは、物語が進むにつれ微妙に位置がずれていき、4人の関係性の変化を暗示させた。

作品を貫く、“許されてしまった罪”への無力感と“偽物の平和”に対する違和感は、三島の戦後日本観であると同時に、現在の日本に対する谷の視点にも重なる。30代の谷が、本作にどのような息を吹き込んだのか、最後まで目が離せない展開となっている。

上演時間は約2時間30分。新国立劇場での公演は3月19日まで。3月8日の公演終了後には、谷、安蘭、平田、そして新国立劇場演劇芸術監督の宮田が出演するトークイベントが開催される。なお「かさなる視点―日本戯曲の力―」シリーズはこのあと、上村聡史演出「城塞」、小川絵梨子演出「マリアの首ー幻に長崎を想う曲ー」と続く。

「2016/2017シーズン かさなる視点―日本戯曲の力― Vol.1『白蟻の巣』」

2017年3月2日(木)~19日(日)
東京都 新国立劇場 小劇場

2017年4月4日(火)・5日(水)
兵庫県 兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホール

2017年4月8日(土)
愛知県 穂の国とよはし芸術劇場PLAT 主ホール

作:三島由紀夫
演出:谷賢一
出演:安蘭けい平田満村川絵梨、石田佳央、熊坂理恵子、半海一晃

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