「月刊アフタヌーン」(講談社)で連載されている高松美咲のマンガ「スキップとローファー」が、清水美依紗と吉高志音のW主演によりミュージカルとして立ち上げられる。2023年4月にテレビアニメ化され、第2期の制作も予定されている人気作「スキップとローファー」は、石川県から上京し、東京の進学校に首席入学した女子高生・岩倉美津未を軸にした青春物語。脚本・作詞を高橋亜子、演出・振付をTETSUHARU、音楽を兼松衆が手がけるミュージカル「スキップとローファー」では、岩倉美津未役を清水美依紗、美津未のクラスメイト・志摩聡介役を吉高志音が務める。
ナタリーでは「スキップとローファー」の舞台化を記念して、原作者の高松、キャストの清水、吉高による座談会を実施。コミックナタリーで公開された前編(参照:高松美咲×清水美依紗×吉高志音 「スキップとローファー」は大人になって失ってしまった大切なものに気づかせてくれる)に続く今回の後編では、3人それぞれが楽しみにしているシーン、キャストの2人には役作りについて聞いた。
取材・文 / 岸野恵加撮影 / ヨシダヤスシヘアメイク / 伊藤こず恵スタイリスト / 小谷雄太(清水美依紗)、MASAYA(吉高志音)
スキローの楽曲は、ゴールではなく発見が多い(清水)
──ミュージカルの顔合わせや稽古はまだ始まっていないそうですが(編集注:取材は12月上旬に行われた)、高松先生は台本などに何かリクエストを出されたんでしょうか?
高松美咲 ほぼしていなくて、「マンガやアニメとはまったくの別物として、思い切りやっていただければ」とお任せしています。歌に関して私は専門外なので、たとえば歌詞の言葉尻を拾って「ここはちょっと解釈が違う」とお伝えすることで、専門家の方の中にあるイメージを潰してしまうのは嫌だなと。
──なるほど。台本を拝読しましたが、セリフのニュアンスなどは原作に忠実ですよね。
高松 かなり原作に近づけてくださっていますよね。時系列やエピソードの順番が多少前後している部分もありますが、基本的にそのままの印象を受けました。
吉高志音 僕は台本を読んでまず、テンポがよくて、学校生活のスピード感が出る作品になりそうだなと思いました。そしてキャラクターの心の揺れが、歌になることでより浮かび上がってきそうだなと。(小多桜子演じる久留米)誠がある曲を歌い終わったあと、相手とわかり合いたいけれど、首を横に振るというシーンがあるのですが、普通のミュージカルだったら、歌い終えてから「じゃあ次に行こう」と前に進むんですね。歌うことで時間が経過して、曲とともにそのシーンが終わる。そうじゃないところが今回の「スキップとローファー」(以下スキロー)のミュージカルにしかない魅力だと思うし、感情の機微が繊細に詰め込まれていると思いました。
清水美依紗 確かに。ミュージカルでは必ず、1曲の中に目的と葛藤とゴールがあるんですよね。でもスキローの楽曲の歌詞は、ずっと何かを探していて、ゴールではなく発見が多い。これはたぶんすごく新鮮なことで、ほかにないミュージカルになる予感がします。高橋(亜子)さんの脚本と歌詞が本当に素敵です。
吉高 日常パートにリアリティがあるからこそ、歌とのつながりを作るのが難しそうな気もするんですが、それができたらすごく素敵だろうし、そこがこの作品のゴールになる予感もします。まだ曲を聴いていないからわからないけど、ほぼしゃべっているくらいのニュアンスの歌唱になるといいのかも……と、現時点ではイメージしています。
清水 ドラマチックさはなくてもよさそうだよね。
高松 すごいですね。俳優さんたちが台本を読むとそんなふうに解釈するんだと、興味深いです。
──みつみと志摩くんだけではなく、ほかのキャラクターの物語もしっかりと掘り下げられていますよね。高松先生は、劇場で観るのが特に楽しみなシーンはありますか?
高松 自分の作品がミュージカルになるということ自体が未知なので、もう全部としか言いようがないんですけど……時間がどう使われるかが気になるシーンはいくつかありますね。たとえば、1話で入学式に遅刻しそうなみつみと志摩が走るシーン。マンガでは大きな1コマで済んでしまうけど、アニメでは時間をゆっくりと使って表現されているのが印象的だったんです。舞台ではどうなるのか楽しみです。
──お二人は、演じるのが特に楽しみなシーンは?
清水 私も……全部としか言いようがないかもしれない(笑)。
吉高 うん(笑)。志摩くんに関して言うなら、心の内を吐露するシーンの曲がすごく楽しみです。自分が志摩くんにリンクする部分があるからこそ、苦しくはなるだろうけど、それを本物の感情として生かして表現したい。実際に歌ったら、志摩くんとの向き合い方がまた変わりそうな気がします。
──毎日公演を重ねることで、見えてくるものがさらに変わっていきそうですね。
吉高 そうですね。よく考えたらスキローでは作中でキャラクターが初めて出会う感情が多いから、新鮮さをキープするのがなかなか大変かもしれない。だって毎日幕が降りて、次の日はまた入学式から幕が開くんだよ。
清水 確かに、ずっとフレッシュさをキープしないといけないね(笑)。私はどんな現場でも、本番が始まってからも毎日台本を読むタイプなんですけど、スキローはたぶん、読み飽きることがないと思います。演じるたびに「大事なことはすべて台本に書いてある」と思うんですが、スキローはまさにそんな作品なんじゃないかな。早く読み合わせしたいですね。きっと入学式みたいな気持ちで、ドキドキしながら顔合わせに足を運ぶんだと思います。
吉高 みつみちゃんみたいに吐かないでね?(笑)
清水 (笑)。
志摩くんとして入る現場では、たぶん落ち着いた感じになる(吉高)
──お二人は普段ファンタジーや現実離れした設定の作品に出ることが多いと思うので、等身大の高校生役を演じることは珍しいですよね。今回はどういう部分を意識して臨みたいですか?
清水 高校生役は初めてです。大事にしたいのは、やっぱりコミュニケーション。人とどう接するか、どう人を見るか、そういう部分を大切にして表現したいです。
吉高 僕は舞台のシリーズ作品で15歳くらいの役を演じたことがあるんですが、その子はヤクザの息子だったので、少し現実離れはしていました(笑)。そのときは、その年齢でしか出せないかわいらしさや、素直になれないような部分を意識しましたね。志摩くんはまたアプローチが変わってくると思うので、どうなるのか自分でも未知数です。
高松 ほかのキャストさんとの関係性によっても、空気感が変わってくるものですか?
吉高 変わるかもしれません。僕は演じる役によって、現場での自分の立ち居振る舞いが変化するんですよね。変わった性格の役だったら、自分も様子がおかしくなっちゃう。だから元の自分がわからなくなるんです。
清水 ああ、それは少しわかるかも(笑)。
吉高 一緒の現場が続いた人に「この前の作品ではすごくおとなしかったけど、今回はすごくうるさいね!?」と驚かれたりして(笑)。志摩くんとして入る現場では、たぶん落ち着いた感じになるのかなと。
清水 憑依型なんだね。私は周りの人によって少し変わるかも。年下が多い現場では、「自分が率先して話さなきゃ」と思います。
高松 カンパニーの皆さんで、あらかじめ「こういう舞台を作っていきましょう」とねらいを擦り合わせていくんでしょうか?
吉高 「こうしていきましょう」という方向性を作るのは演出家の方ですけど、僕はそれを空気で察しているかな。稽古期間を通して、各々が持っている「こうしたい」という思いが、次第に合わさっていきます。
清水 確かに「ここをこう仕上げていきましょう」という会話って、あまりキャスト同士ではしないですね。
吉高 1対1で「ここはこう演じようと思うんだけど、どう思う?」と相談することはあるけどね。でもあまり相手に言わないほうが、板の上で新鮮なものが生まれると思います。作り込みすぎると予定調和になったり、うそになりがちなんですよね。
高松 なるほど。そうすることでライブ感が出てくるんですね。観劇する側としても、観に行って「この雰囲気は今日だけなんだろうな」と感じるとうれしくなります。多くの人が関わる演劇は、そうやって作っていくんですね。面白いです。マンガはアシスタントさんや担当編集者さんと一緒に作っていく、とても狭い世界なので。
吉高 僕もマンガ家になって、「締め切りに間に合わなさそう!」と焦るピリピリ感をちょっと体験してみたいです(笑)。
高松 マンガ家は締め切りに間に合わないイメージがあるんですね。間違いじゃないです(笑)。
吉高 それはいい作品を世に出すために、ギリギリまで考えているからですよね。本当にすごいと思います。
高松 時間があるだけ、突き詰めて考えたくはなってしまいますね。でも舞台も稽古期間がそんなに長いわけではないから、その時間内に完成させなければならないですもんね。
清水 はい。私は稽古期間中が一番、「見つけなきゃ」と焦っているかも……。本番が始まれば「これが今の自分のベストだ」と思えるんですが、だいたいいつもゲネプロまでは焦っています。



