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本作は、筒井と古舘演じる下町で金属加工業を営む夫婦のもとに突然1人の男が現れたことで、それぞれの秘密があぶり出されていくさまを描いた人間ドラマ。
キャスティングのアプローチについて尋ねられた深田は「『歓待』での古館さんは周囲を振り回す役なので、逆の役をやってほしいと早い段階でオファーしていました。筒井さんは章江にぴったりだと思った。2人を最初に決めていて、その間に誰が入ってきたら面白いんだろうと考えて浅野さんをキャスティングしました」と語る。筒井は「監督のご両親の話を聞かせていただいて、こういう夫婦を描きたいんだなということが明確で、それを頼りにして演じました。古舘さんとは、お互い劇団育ちという話しやすさもあって、言いたいことを言い合えるちょうどいい感じが自然にできた」とコメントし、古舘も「深田監督の魔法のような才能。ぴったりの配役で、キャスティングの才ですかね」と監督を絶賛した。
筒井と古舘に対し「悲劇が起きて激変を遂げる役を演じるうえでのアプローチを教えてください」と質問が飛ぶと、筒井は「撮影は時系列に沿って行われましたが、章江という役はメンタルがすごく変化するので、内面だけでは表現できない。監督と話し合って肉体も変えることにしました」と回答。深田が「筒井さんは前半と後半で雰囲気を変えるために、3週間で13kg体重を増やしてくれました。本当に感謝しています」と明かすと、場内からは驚きの声が。古館は「自分が体験したことがないようなことが起こる難しい役柄。役者は想像を使って仕事をしなければならないけれど、自分としては正しいチョイスの想像ができたのかなと思っています」と述懐。
悪を描くことに対してどうアプローチしているのかという質問に対し、深田は「八坂がハンニバル・レクター博士のような悪のヒーローにならないようにしたいと思っていた。絵に描いたような善人や悪人はいないと思っているし、関係性の中で変化するもの。時には本人でもコントロールできないような暴力を冒してしまう、両義性のあるキャラクターにしたいと思った」と語る。
続けて、劇中で八坂に赤いシャツを着せたことについて問われると「印象に残るが一瞬しか出てこない赤いシャツは、浅野さんがイラストを描いて提案してくれた。この映画を最初に考えていたときに、アルフレッド・ヒッチコックの『レベッカ』をイメージしていた。レベッカ自身は劇中には出てこないが、不在のままで支配するキャラクターが面白いなと思った。赤い色をさまざまなところにちりばめているので、八坂が出てこなくても気配を残すことができたと思う」と満足げな様子を見せる。
最後に深田は「この映画で描きたかったことのひとつは暴力。唐突に理由もなく日常を破壊してしまう暴力を、一切映さずに撮りたいと思った。今年は直接的な暴力を描く日本映画が多いので、違う視点から暴力を描けたのではないかと思います」と語り、会見を締めくくった。
「淵に立つ」は、10月8日より東京・有楽町スバル座ほか全国でロードショー。
※古舘寛治の舘は舎に官が正式表記
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mihoko imai 今井美穂子 | 芸能通訳者 @mihoko_imai
今夜のお仕事。外国特派員協会にて『淵に立つ』の監督&キャスト会見。これは見るべき映画です。数回見るべき映画です。https://t.co/e4LKZDDJYw