鈴木福が主演を務める映画「ヒグマ!!」が1月23日より全国で公開。本作では、闇バイトのミッションに失敗した青年たちが、真夜中の森ですべてが規格外の“最強ヒグマ”と遭遇する物語がつづられる。鈴木が主人公の小山内蒼空を演じ、彼とバディを組む戦闘力の高い相棒・若林桜子役で円井わん、ハンターの神崎役で宇梶剛士が出演。“使い捨て”の闇バイトメンバーに岩永丞威、上村侑、住川龍珠が扮したほか、占部房子、清水伸もキャストに名を連ねた。監督は「ミスミソウ」「毒娘」の内藤瑛亮が務め、撮影は「ベイビーわるきゅーれ」シリーズの伊集守忠、ヒグマのデザインは「ゴールデンカムイ」で知られる特殊造形・メイクアーティストの百武朋が担当している。
映画ナタリーでは鈴木、内藤にインタビューを実施。「闇バイトをしたらヒグマに襲われる」という斬新な設定である本作のオファーを受けた当時の心境や、現実の社会問題を伝えるためにフィクションという手段を取ったことの意義、現場をともにした互いの印象を語ってもらった。さらに“最狂”のモンスターとして登場するヒグマの造形についても。終盤には次回作の構想も飛び出した。
取材・文 / 大畑渡瑠撮影 / ツダヒロキ
映画「ヒグマ!!」予告編公開中
「なんだこの作品!」という感情がまず最初に湧きました(鈴木)
──本作の内容を一言で表現すると、「鈴木福が闇バイトをしたらヒグマに襲われる」。すごいインパクトですよね。
鈴木福 闇バイトという社会性のある役をいただけたことはすごくうれしかったんですが……。「なんだこの作品!」という感情が最初に湧きました(笑)。オファーを受けたときもすぐにピンと来なくて。
内藤瑛亮 プロデューサーの佐藤(圭一朗)さんと、もともとは別の作品開発をしていたのですが、出資会社が決まったタイミングで急に「闇バイトがヒグマに襲われる映画を先に作りませんか?」と。だから僕も全然意味がわからず「え、どういうこと?」と戸惑ったのが正直な感想(笑)。でも闇バイト×ヒグマという一見かけ離れた単語を組み合わせることで、映画としての強さが生まれますよね。気付けば「なぜ闇バイトがヒグマに襲われるのだろう?」というミステリアスさにワクワクしている自分がいました。
鈴木 内藤監督の作品は以前から拝見していたのですが、心の奥底にある狂気を描くものが多く、グロテスクな表現の印象が強くて。その世界観に僕がキャスティングされるというのも、ちょっと意外でした。でも監督から「ぜひ僕に」と熱がこもったオファーをいただいて、やりたい気持ちが強くなったのを覚えています。役作りをしていく中で、小山内という役にどんどん自分らしさが投影できるなとも思いました。
──小山内は善良な少年でしたが、家庭環境によって闇バイトに身を投じざるを得なかったキャラクターです。
鈴木 僕の子役時代のパブリックイメージを持っていただいている分、演じた小山内がただ闇バイトをしている不良少年ではないという共感ポイントや、「巻き込まれ感」を感じ取っていただけるのではと思います。家族との関わり方など、小山内が持つ思いやりの精神は僕も見習いたい。彼は最初にヒグマと対峙してから、ノンストップで戦い続けていくんです。何があっても前に進み続けるその性格はすごく素敵だなと思いますし、悲観的でないところはわりと僕自身に似ているのかなと思います。
──社会問題を描いている分、リアルさとフィクション要素のバランスを取るのが難しいように感じました。
内藤 今回はあくまでも小山内の物語として、リアルな問題を取り入れつつも現実とはしっかり距離を取り、フィクションとして楽しめるように徹底して作りました。若者が闇バイトに手を出してしまう社会や、ヒグマがこれだけ人々に被害を与えている現状などセンシティブな要素が詰まった本作ですが、あえてフィクションという形で展開することで、重くなりすぎず、安心して笑ったり泣いたりできる。そして物語を追う中で自然と問題の背景に考えをめぐらせたり、ある種の真実を見出したり、答えを自分なりに発見できるんです。
──現実を丁寧に伝えるうえで、あえてフィクションという手段を取る意味がそこにあったわけですね。なお内藤監督は過去作「ライチ☆光クラブ」「ミスミソウ」などでも若者の“闇”を描いていました。
内藤 若さ故に過ちを犯してしまうことがあっても、若いからこそ問題や罪と向き合って前に進める。大人として、そんな若者たちをサポートするような視点で映画を作りたいと思っています。今や闇バイトらしき求人を見せる手口はすごく巧妙化していて、オンラインゲームのメッセージや大手情報サイトの中に正規バイトと偽って載せたりしているものも。若者が手を出してしまう危険性は常にあるわけで、個人情報を抜かれて家族を脅され、罪に手を染めざるを得ない状況に追い詰められていく。だからこそ“一発アウト”で社会から追い出すことはしたくない。本作も、進む道を誤った若者が罪と向き合い、再び光に手を伸ばす物語になっています。
鈴木福は“受け身”が非常に上手(内藤)
──ここからはお互いの印象について伺いたいのですが、まず鈴木さんは内藤監督の現場に入ってみていかがでしたか?
鈴木 監督はとにかく「楽しいこと」が好きで、映画のエンタテインメントとしての側面を愛しているんだなと。撮影中も、完成した映画を観ていてもそれを感じていました。
内藤 ありがとうございます(照)。
鈴木 内藤監督の現場にはとにかく映画が好きな人たちがたくさんいます。ほかの現場では、作品として目指すゴールがボヤッとしていることもあったりするんですが、本作の撮影では最初にそれが決まっていて、みんなが完成品に向かう材料をずっとペタペタ貼り合わせているような印象。監督は率先してその材料を調達してくる方だなと感じました。
内藤 本当は監督としてスタッフに指示しなければいけない立場なんだけれど、気付けば自分でやってしまって……。例えばメイクの汚しや血糊を付ける作業、事前に壁を壊す準備など、好きでやってしまうんですよ。
鈴木 お芝居も自ら実演してくださることが多いですよね。
内藤 まあ失敗することもあるんですけどね……。(小山内とバディを組む若林桜子役の)円井わんさんがビールケースを蹴飛ばすアクションを現場で思い付いて、彼女がけがをしないよう、テストで僕が蹴飛ばしてみたんです。そしたら「バン!」と大きい音が鳴って「監督が怒って蹴り上げた!」と円井さんをおびえさせちゃって。しかもそれが撮影初日の出来事だったので、ちょっとまずかったなと(笑)。
鈴木 (笑)
──監督は鈴木さんにどんなイメージを抱いていましたか?
内藤 優しくてかわいくて、とっても真面目なイメージでしたが、会ったときもその通りの方でした。意外だったのは、アクション作品にこれほどまで意欲がある方だったこと。小山内はへっぽこで何をやっても失敗してしまうキャラクターですが、実際演じるのは受け身がちゃんとできる人でなければいけない。福くんはそのあたりが非常に上手でした。
鈴木 ありがとうございます!
内藤 あと「ミュージカルもやりたい」って言っていたよね? 撮影が休みの日に「エミリア・ペレス」というミュージカル映画を観て、面白かったので紹介したら、福くんも観てくれて。
鈴木 そうでしたね(笑)。
内藤 福くんと「面白かったよね!」と言い合ったりして楽しかったです。
──撮影を通して仲を深めたんですね。
内藤 でも出会った当初は「福さん」って呼んでいましたね。この年齢で“福くん”と呼ぶのはどうなのかな?と思っていたので。でも“さん付け”にはどこか違和感があったんですよ。福くん自身もなんか違和感を感じてたみたいで…。
鈴木 なので途中から「“福くん”でいいですよ」と伝えました(笑)。
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ヒグマはゴジラとかなり近い(鈴木)



