鶴松は2022年に初めて自主公演「鶴明会」を開催し、今回は2度目となる。上演演目は「仮名手本忠臣蔵 五・六段目」と、舞踊「雨乞狐」。出演者には鶴松のほか、
鶴松は「ソロの取材会は初めてで……」と緊張した表情を浮かべつつ、記者用の公演資料を自作したと明かして報道陣を驚かせる。上演作品について鶴松は「今やりたい作品トップ2を選んだ。どちらも肉体的にハードで、両方を勤めた経験がある勘九郎の兄からは『バカなんじゃないの!』と言われた」と笑いを誘い、「仮名手本忠臣蔵」について「勘九郎の兄が3月に歌舞伎座で早野勘平を勤めましたが、観れば観るほど自分もやりたくなった。僕は勘平と年齢がほぼ同じですし、若さゆえの熱とパワーを見せられたら。彼が追い込まれ、自ら腹を切る絶望をリアルに表現したい」と述べた。
「雨乞狐」では鶴松が、野狐、雨乞巫女、座頭、小野道風、狐の嫁、提灯の6役を演じ分ける。鶴松は子供の頃、勘九郎が勤める「雨乞狐」に提灯役で出演したときのことを「博多座で、勘九郎の兄と毎日劇場のお風呂に入って話していた」と回想し、「器械体操のようなところもある舞踊で、6役の早替わりは歌舞伎になじみのない方にとっても面白いはず。中村屋が受け継いできたこの演目を守りたいし、若いうちにやっておきたいと思った」と語った。
共演者については「僕が思う最強メンバー」と言い、「勘九郎の兄に直接お願いに行ったら快く受けてくれた。それに『仮名手本忠臣蔵』で女房おかるを勤める莟玉くんとは部屋子時代から切磋琢磨してきた関係。今回は彼に初めて、僕の女房役を演じてもらいます」「今回出演していただく皆さんは、(中村)勘三郎さんというスーパースターの背中を見て育ってきた方々が多い。同じ方向を向いて舞台を作れると思います」と厚い信頼を寄せた。
前回の「鶴明会」の前には、会場を予約するために鶴松が自ら浅草公会堂に赴いたそうで「ガラガラ抽選機で番号が出たら、黒板のカレンダーにシールを貼るんです。こんなアナログな抽選会なんだ!と驚いた」と裏話を明かす。鶴松は「もっと早く自主公演を始めれば良かった。リスクを全部自分で背負うのが自主公演なので、ビビりの僕はなかなか行動できず……でも前回は好評をいただき、勘九郎の兄、(中村)七之助の兄からも人生で初めてあんなに褒められた(笑)」と振り返り、「自主公演は自分の今後にもつながると思うので続けたい。ケンケン(尾上右近)は自主公演でやった『春興鏡獅子』を歌舞伎座でも勤めていて『理想の姿だな』と思いました。僕も一番の目標は『鶴明会』でやった役を歌舞伎座でやることです」と目標を掲げた。
また「鶴明会」という名称は、勘九郎と2人で考えたと鶴松。鶴松の“鶴”と、十八世中村勘三郎の本名である波野哲明から“明”を取り、“革命”の意味を込めて「鶴明会」と名付けたという。鶴松は「勘三郎さんは僕らにとって、一生憧れの大スター。舞台に立っていると『もう引っ込みたい』とか『足が痛い』とか心が折れそうな瞬間がありますが、勘三郎さんにちなんだ会の名前が支えになってくれると思う」と話した。
取材会では鶴松が、歌舞伎の世界を描く映画「国宝」に言及する場面も。同作で吉沢亮が演じた立花喜久雄は、部屋子として歌舞伎の世界に足を踏み入れている。鶴松は自身も喜久雄と似た立場であることに触れて「映画を観ながら、自分自身も覚えがあるようなシーンがいくつもあって、10回くらい離席しそうになった(笑)。手が震えてお化粧ができない場面に共感しました」とコメント。また鶴松は「映画『国宝』を観た方は、全員僕の自主公演にも来てほしい! せっかく『国宝』を観て歌舞伎に興味を持った方がいても、実際の舞台を観て『やっぱり難しい』と離れてしまったらもったいない。足を運んでくださるお客様を味方にして、未来のお客様につなげていきたい」と言葉に力を込めた。
今年30歳の鶴松は「たびたび壁にぶつかる時期があり、『歌舞伎俳優はもうできないかも』と思ったこともあった。でも昨年には歌舞伎座の『新版歌祭文 野崎村』で(ヒロインの)久作娘お光を勤めさせていただきました。ひと皮むけてきたと思う」と自信をのぞかせ、「今まで、歌舞伎に対して畏怖の気持ちがあった。でもやらずに後悔するよりやって後悔したい。僕は考え過ぎてしまうタイプだからこそ、この恐れの気持ちをなくしてチャレンジしていけたら」と晴れやかな表情を浮かべた。
中村鶴松 自主公演 第2回「鶴明会」
2025年9月18日(木)・19日(金)
東京都 浅草公会堂
スタッフ
二、「雨乞狐」
作:大沼信之
振付:梅津貴昶
作曲:五世鶴澤燕三
中村福助 @fukusuke9_
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