佐々木蔵之介が一人芝居「ヨナ」東欧ツアーを振り返る「宝物のような経験でした」

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佐々木蔵之介の一人芝居「ヨナ-Jonah」東欧ツアー帰国報告記者発表会が、本日7月10日に東京・在日ルーマニア大使館にて行われた。

佐々木蔵之介ひとり芝居「ヨナ-Jonah」東欧ツアー帰国報告記者発表会より、佐々木蔵之介。

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佐々木蔵之介ひとり芝居「ヨナ-Jonah」東欧ツアー帰国報告記者発表会より、佐々木蔵之介。

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本作は、東京芸術劇場とラドゥ・スタンカ国立劇場の共同製作による新作。詩人マリン・ソレスクのテキストをもとに、シルヴィウ・プルカレーテが演出を手がけ、旧約聖書にあるクジラに飲み込まれたヨナの逸話をもとにした一人芝居を立ち上げる。なお、佐々木がプルカレーテとタッグを組むのは3度目となる。

佐々木は通訳者と共に会見場に姿を現し、まずはルーマニア語であいさつ。司会者が「あ……日本語で大丈夫です(笑)」と言い、「あ、日本語で大丈夫でしたか?」と佐々木が応じて会場に笑いが起きた。

佐々木蔵之介ひとり芝居「ヨナ-Jonah」より。

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会見は、稽古やツアーに同行した東京芸術劇場のスタッフが佐々木と共にツアーを振り返った。稽古が始まる3日前にルーマニア・シビウ入りしたという佐々木は「旅行ではなく仕事なので、食事をどうしようかと考えて、まずはモールに行って電子レンジを購入し、ホテルに設置しました」と話す。稽古は劇場の近くにあるスタジオで行われ、「稽古初日に顔合わせはしたんですけれども、30分くらいで終わってしまって、その日はセリフを一言もしゃべりませんでした(笑)。そのあとサラミやハム、チーズが乗ったプレートが出されて、生のネギやニンニクを食べつつ、ツイカというお酒で乾杯しました。その後、4・5日かけて読み合わせをしたのですが、稽古は毎日2・3時間程度。しかもルーマニア語と英語、日本語、フランス語が入り乱れる現場なので、通訳さんを介してやり取りすると、実質的な稽古時間は非常に短かった。その中で何とか集中してやらないといけないという状況でした」と振り返る。

佐々木蔵之介ひとり芝居「ヨナ-Jonah」より。

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言葉の違いで苦労はなかったか、と進行役が尋ねると「苦労はあったけれど、『これはルーマニアだからこそできるディスカッションだな』と思い、新鮮でした。劇場の衣裳さん、メイクさんはルーマニア語しかしゃべらない方でしたが、それでも身振り手振りでなんとかやっていましたね」と佐々木は笑顔を見せた。

プルカレーテの演出は日本で2回経験し、今回は佐々木がルーマニアを訪れる形になった。違いはあったか、と尋ねられると「それはもうまるっきり違いました」と佐々木。「ただ今回僕が飛び込んで行こうと思ったのは、一緒にやってきたプルカレーテさん、ヴァシル(・シリー)さん、ドラゴッシュ(・ブハジャール)さんの3人がいたから。マリン・ソレスクさんは日本でいうところの宮沢賢治くらい、よく知られている作家なので、そのような人の作品を日本人の僕がやるのはとてつもなく難しいことだと思いました。でも、東京芸術劇場とラドゥ・スタンカ国立劇場の長い交流があり、お互いへのリスペクトがあって、本当に家族のように観ていてくださって一緒に仕事ができたと思いますので、宝物のような経験でした」と感慨深げに語った。

佐々木蔵之介ひとり芝居「ヨナ-Jonah」より。

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また作品の内容については、稽古開始前に難しさを感じていたという佐々木。「決して論理的に書かれている作品ではなく、詩の部分があったり、旧約聖書から題材をとっている部分があったりと、自分にとってはちょっとわからない部分があるなと思っていたのですが、プルカレーテさんに『僕はこの話を、魚の中に飲み込まれた1人の漁師の話として読みました』と伝えたところ、それでいいんだと言っていただいて。そこから詰めていく中でだんだんと自分のこととして感じられるようになってきて、魚の体内で孤独に生きていたヨナが光を見出そうとしている姿が、ルーマニアでなんとか芝居を作り出そうとしている自分と重なり、ヨナ自身がすごくがんばっている人なので、ヨナに励まされながら自分の役を作っていたような気がします」と話した。

その後、地図を参照しながらツアーのエピソードが語られた。5月21日にラドゥ・スタンカ国立劇場で行われたプレミア公演には、幅広い年齢層の観客が詰めかけてカーテンコールが4回も行われた。しかし佐々木自身は全然緊張しなかったと言い、「なぜかというと、ラドゥ・スタンカ国立劇場でずっと稽古してきたので、いつも稽古している場所にお客さんが入られただけ、という感覚でした。なので全然緊張することもなかったですし、お客さんがスタンディングオベーションしてくださったことに『こんなふうに受け入れてもらえるんだ』と本当に感謝した瞬間でした」と振り返った。

佐々木蔵之介ひとり芝居「ヨナ-Jonah」東欧ツアー帰国報告記者発表会より。左からオヴィディウ-アレクサンドゥル ラエツキ駐日ルーマニア大使、佐々木蔵之介。

佐々木蔵之介ひとり芝居「ヨナ-Jonah」東欧ツアー帰国報告記者発表会より。左からオヴィディウ-アレクサンドゥル ラエツキ駐日ルーマニア大使、佐々木蔵之介。[拡大]

続くハンガリー・ブダペスト公演は、客席数150程度のマダッチ国際演劇会議で行われた。「一番ミニマムな会場で、老若男女のお客さんが来てくださり、ものすごく反応が良かったです」と佐々木は話し、アフタートーク20分の予定が1時間20分に拡大する盛況ぶりだったと明かした。

ルーマニアのクルジュ=ナポカ公演は、客席数1000くらいのルチアン・ブラガ国立劇場で行われた。「クルジュ=ナポカは学生の街で、学生さんも大勢観に来てくれました。日本でいうと松本のような、文化に熱心な街でした」と佐々木は印象を述べる。またルーマニア・ブカレスト公演はオデオン劇場で行われた。「この劇場は、劇場自体はかなり古いのですが、実は天井が開くんです。それで、作品の後半で“魚の腹の中に光が……”というシーンで天井を開けてもらうことにしたのですが、『そうは言っても夜だから暗いのではないか』と思っていたら、ヨーロッパは夜9時でも明るくて! 日本とは全然違いました」と語った。

佐々木蔵之介ひとり芝居「ヨナ-Jonah」東欧ツアー帰国報告記者発表会より、佐々木蔵之介。

佐々木蔵之介ひとり芝居「ヨナ-Jonah」東欧ツアー帰国報告記者発表会より、佐々木蔵之介。[拡大]

モルドバ・キシナウ公演は、サティリクス・イオン・ルカ・カラジャーレ国立劇場で行われた。「モルドバはウクライナに隣接している国なのですが、レストランに行ってメニューをくださいって言うと英語のメニューがなくて、ルーマニア語かロシア語なんです。電波も通じないところでしたが僕は面白かったですし、世界一の貯蔵量があるというワイン蔵にも行きました」と楽しげに語った。

ブルガリア・ソフィア公演はイヴァン・ヴァゾフ国立劇場で1日2回公演だった。「16時開演と21時開演の2回公演でした。21時開演!?と思ったのですが、21時でもまだ明るいので、この時期だからこそ皆さん、夜遅くまで楽しもうという感じなのかなと思いました」と話した。

佐々木蔵之介はウォーク・オブ・フェイムを受賞した。

佐々木蔵之介はウォーク・オブ・フェイムを受賞した。[拡大]

なお佐々木は今回、シビウ国際演劇祭が毎年、世界を代表するアーティストを表彰している「ウォーク・オブ・フェイム」を受賞。佐々木の名前を刻んだプレートが、シビウの中心地にある歩道に加わった。佐々木は「『「ウォーク・オブ・フェイム』が飾られている場所は、僕がいつも劇場の行き帰りにセリフを覚えている場所だったんですよね。そこに自分の名前と星を刻んでいただけたのは、名誉なことであると同時に、自分のメモリーでもあり、感謝の気持ちをここに刻んでいただいたなと感じています。これからもルーマニアとの関係をしっかり続けていきたいなと改めて思った次第です」と真摯に語った。

最後に日本公演に向けてのメッセージを求められた佐々木は「ルーマニアでみんなと一緒に作った作品で、ルーマニアの戯曲ではありますが、プルカレーテさんは日本でしかないものもちゃんと作品に組み込んでくださっています。僕自身、観たことがないような芝居になっているのではないかと思いますし、お客様には何の予備知識も必要ないので、東欧的な匂いや雰囲気を、劇場でただ体感していただけたらなと思います」と話し、笑顔を見せた。

「ヨナ-Jonah」の日本公演は、10月2日から13日まで東京・東京芸術劇場 シアターウエスト、18日に石川・北國新聞赤羽ホール、25・26日に長野・まつもと市民芸術館 小ホール、11月1・2日に茨城・水戸芸術館ACM劇場、8・9日に山口・山口情報芸術センター スタジオA、22日から24日に大阪・COOL JAPAN PARK OSAKA TTホールにて上演される。東京公演のチケットは7月18日に一般前売りをスタート。

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「ヨナ-Jonah」東欧ツアー

2025年5月21日 (水)・22日(木)※公演終了
ルーマニア ラドゥ・スタンカ国立劇場

2025年5月24日(土)※公演終了
ハンガリー ハンガリー国立劇場

2025年5月27日(火)※公演終了
ルーマニア ルチアン・ブラガ国立劇場

2025年5月30日(金)・31日(土)※公演終了
ルーマニア オデオン劇場

2025年6月3日(火)※公演終了
モルドバ サティリクス・イオン・ルカ・カラジャーレ国立劇場

2025年6月7日(土)※公演終了
ブルガリア イヴァン・ヴァゾフ国立劇場

2025年6月26日(木)※公演終了
ルーマニア ラドゥ・スタンカ国立劇場

ヨナ-Jonah

2025年10月2日(木)〜13日(月・祝)
東京都 東京芸術劇場 シアターウエスト

2025年10月18日(土)
石川県 北國新聞赤羽ホール

2025年10月25日(土)・26日(日)
長野県 まつもと市民芸術館 小ホール

2025年11月1日(土)・2日(日)
茨城県 水戸芸術館 ACM劇場

2025年11月8日(土)・9日(日)
山口県 山口情報芸術センター[YCAM]スタジオA

2025年11月22日(土)〜24日(月・振休)
大阪府 COOL JAPAN PARK OSAKA TTホール

スタッフ

原作:マリン・ソレスク
翻訳・修辞:ドリアン助川
演出:シルヴィウ・プルカレーテ
舞台美術・照明・衣裳:ドラゴッシュ・ブハジャール
音楽:ヴァシル・シリー

出演

佐々木蔵之介

※10月1日はプレビュー公演。

公演・舞台情報

※初出時、本文に誤りがありました。訂正してお詫びいたします。

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Hanamure @aiko3

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