本作は、ヴィレッヂの浅生博一プロデューサーが立ち上げた“浅まる企画”の第1弾。作劇を
開演前から客席に流れていたリズミカルな和楽器音楽のボリュームが上がり明転すると、舞台上ではとある旅一座が芝居の真っ最中。晩年脇役であることに嫌気が差した喜多さん(中川)が座長を相手に突然の乱闘騒ぎを起こすと、そのまま入れ替わるように、幼なじみの弥次さん(牧島)がヤクザと揉めながら姿を現す。走り回る2つの集団が舞台上で賑々しく交差するシーンでは、久々に再会した喜多さんと弥次さんが力を合わせてそれぞれのピンチを切り抜ける様が、歌、踊り、殺陣を交えて華やかに描かれ、観客を江戸の活気あふれるスペクタクルの世界に誘った。
本作では、“きたやじ”の友情や、彼らが旅先で出会う人々との滑稽なやり取りを通し、義理人情・恋愛話が明るくエネルギッシュに展開する。中川と牧島が本作で演じる喜多さんと弥次さんは、正義感あふれるお調子者バディ。中川は自由闊達な喜多さんを無邪気な笑顔とすらりとした長身でのびのび演じ、牧島はそんな喜多さんをサポートする冷静さも持つ弥次さんをキリリとした目つきと力強い声で威勢よく立ち上げる。ヤクザたちをこてんぱんにする立ち廻りのあと、2人は背中合わせでバッチリ見得を切り、息の合った様子を見せつけた。
劇中にたびたび差し込まれる東海道を徒歩で移動する場面では、きたやじを筆頭に「よいよいやっさやっさそらよいよい!」という小気味よいテーマ曲を歌う人々がステップを踏んで歩き回り、楽しい道中を表現。また、きたやじが出会ったスリの名人・⼗吉(尾上)と千里眼を持つ瞬太郎(和田)が互いの懐から金を盗り合うシーンでは、歌舞伎のだんまりのようなスローモーションで十吉と瞬太郎が攻防を繰り広げる中、きたやじから「速すぎて見えない」「手ぐせと手ぐせのやり合いだ」という声が飛び、客席から笑いが起きた。
ゲネプロ前に行われた取材会には中川、牧島、和田が出席した。本作の手応えを問われた中川は「自信はめちゃくちゃあります。いただいた時点で面白かった台本が、稽古場でさらに喜劇に仕上がり、すべての世代の人に楽しんでいただける舞台になったと思う。みんなで全エネルギーを使ってお祭り騒ぎをしているので、ワーっと押し迫るものを感じてもらえたら『元気が出たな』と思っていただけるはず」と期待を込める。
牧島は「キャスト一同、毎日死ぬほど汗をかいて『舞台のスピードではないだろう』というくらい全力で走ってきました。稽古後は疲労で何の記憶もない日々を繰り返し、気が付いたら今日ここにいます。千秋楽までまだまだ加速を続けていきたい」と力強く意気込む。「“ディー”(大輔)と戦うシーンが多いです」と中川を独特な愛称で呼ぶ和田は、「普段の作品では相手の動きに反応して動いていますが、今回演じる瞬太郎は少し先の未来を見通せる人物なので他人の動きやセリフもすべて覚えて挑んでいます」と新鮮さを語った。
話題は、本作で仲を深めた中川と牧島が共作した公演グッズのイラストに。共作の言い出しっぺは中川だが、牧島は「本当に大変でした。何パターンも絵を描いて(中川に)送ったのに全然レスが返ってこなくて……(笑)」と、中川のマイペースぶりを吐露。「ちょうど年末年始だったので(笑)」と答えた中川は、「制作に1カ月くらいかけて、最後は2人で稽古場で仕上げました。初めての共作だったので思い出深いです」と満足げな表情で牧島を見つめる。そんな中川に牧島は「最後に仕上げたのも僕!」とビシッと指摘し、2人の関係性にその場は笑いに包まれた。
上演時間は休憩含む約2時間40分。東京公演は3月16日まで。その後、本作は21日から23日まで大阪・SkyシアターMBSで上演される。
舞台「きたやじ オン・ザ・ロード~いざ、出立!!篇~」
2025年3月1日(土)〜16日(日)
東京都 日本青年館ホール
2025年3月21日(金)〜23日(日)
大阪府 SkyシアターMBS
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どぅ @Do_Engeki
楽しそうすぎる
今から電車乗ったら夕方のやつ間に合うかなw https://t.co/d1tJv7hwdt