京極夏彦初の歌舞伎脚本「狐花」に松本幸四郎、“京極歌舞伎”への意気込み語る

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「八月納涼歌舞伎」第三部「『狐花』葉不見冥府路行」の取材会が本日7月9日に東京都内にて行われ、本作の脚本を手がける京極夏彦と、出演する松本幸四郎が登壇した。

「八月納涼歌舞伎」第三部「『狐花』葉不見冥府路行」取材会より。左から松本幸四郎、京極夏彦。

「八月納涼歌舞伎」第三部「『狐花』葉不見冥府路行」取材会より。左から松本幸四郎、京極夏彦。

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「八月納涼歌舞伎」第三部「『狐花』葉不見冥府路行」取材会より。左から松本幸四郎、京極夏彦。

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「狐花」は、京極が脚本、今井豊茂が演出・補綴を手がける歌舞伎作品。7月26日には公演に先がけ、小説版が刊行される。本作では、京極の「百鬼夜行」シリーズの主人公である“京極堂”こと中禅寺秋彦の曾祖父・中禪寺洲齋が生きる時代を舞台にしたストーリーが展開する。

「八月納涼歌舞伎」第三部「『狐花』葉不見冥府路行」取材会より、京極夏彦。

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まず、なぜ歌舞伎の脚本を手がけることになったのかと記者が質問すると、京極は「最近、同業者の方のいろいろな作品が歌舞伎化されているので、最初にお話があったときは『そういうことかな、光栄だな』と思っていたんです。そうしたら最初の打ち合わせで『新作でお願いします』と言われて、その段階で嫌だとは言えなかった(笑)」と話して場を和ませる。「しかも『八月納涼歌舞伎』の第三部ということで、実はけっこう尻込みをしたんですけれど、プレッシャーはありつつも、いつも通りやらせていただきました」と話した。

今回幸四郎が演じる中禪寺洲齋は、6月に刊行された京極の人気シリーズ「巷説百物語」の完結巻にも登場しているキャラクター。中禪寺洲齋を巡る物語にした点について、京極は「私が書く意味を考えたときに、私のこれまでの仕事を多少なりとも反映させたほうが受け入れてもらえるのではないかと思い、中禪寺洲齋の物語にしようと思いました」と説明した。

「八月納涼歌舞伎」第三部「『狐花』葉不見冥府路行」取材会より、松本幸四郎。

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続いて京極作品の魅力を問われた幸四郎は「京極先生の作品からは艶っぽい音楽が聞こえてくる感じがしておりましたのと、歌舞伎とは違う色彩的な美しさを感じていました。歌舞伎は、感情をそのまま表現するのではない表現方法を用いるので、京極先生の作品が持っている音楽性や色彩は、歌舞伎に必然ではないかとずっと思っていたんです。ですので、京極先生の作品(を歌舞伎で演じるの)は初めてですけれども、やっとこの日が来た、という思いでいます」と京極作品への思いを語った。また本作の脚本については、「初めて読んだときはシェイクスピア劇のようだなと。“京極歌舞伎”という、この世に新たに誕生する歌舞伎を作る、という姿勢で取り組もうと思っています」と意気込みを述べた。

記者が京極に「初めて歌舞伎の脚本を手がけたことで発見は?」と尋ねると、「私は小説家なので、文字ですべてを表さないと読者に申し訳が立たないと思って、これまで映像化や舞台化しにくいものを書こうとしてきました。ただ今回は舞台化が前提なので、当初は最初に脚本を書いてから小説に落とす、という取り組みを考えていたのですが、出版社の都合で(笑)、公演前に本を出すことになり、結果的には小説を先に書くことになりました。これはね……大変でした。これまで僕の小説を映画化や舞台化された脚本の方たちが七転八倒して苦労されたことが、私の中で起きたという(笑)」と話し、会見場を笑いで包んだ。

さらに京極は「歌舞伎をやらせていただくことは全然想定していませんでしたが、歌舞伎自体は何度も観ていて、歌舞伎の台本もよく読んでいました」と明かし、「おおむね“お化け系の人”だと思われているかもしれないんですけど、私はミステリー作家でもあるので(笑)、歌舞伎でないとできない仕掛けを作るべきだろうなと思って……あ、でもこれ以上言うとネタバレになってしまうので」と途中で口をつぐみ、ニヤリとした。

「八月納涼歌舞伎」第三部「『狐花』葉不見冥府路行」取材会より。左から松本幸四郎、京極夏彦。

「八月納涼歌舞伎」第三部「『狐花』葉不見冥府路行」取材会より。左から松本幸四郎、京極夏彦。[拡大]

そんな京極の脚本を受け取った幸四郎は、「目に見えない匂いや空気を含めて、あまりリアルな形ではない音や道具を使いつつ、この『狐花』という作品を歌舞伎として観ていただくことに挑戦したいなと。『八月納涼歌舞伎』の第三部はこの『狐花』だけなので、歌舞伎座が『狐花』の専用劇場だと思っていただけるような世界観を作りたいと思います」と思いを語り、「どれだけ自分が頭の中で自由に発想できるかにこだわって作っていきたい」と言葉に力を込めた。

「八月納涼歌舞伎」第三部「『狐花』葉不見冥府路行」特別チラシビジュアル

「八月納涼歌舞伎」第三部「『狐花』葉不見冥府路行」特別チラシビジュアル[拡大]

最後に「歌舞伎の魅力をどんなところに感じているか」と問われた京極は、「歌舞伎は伝統芸能と言われますが、博物館に入れてしまうような形にして守りに入ってしまったら、伝統はもうおしまいだと思うんです。その時代時代に合わせて変わっていくことこそが伝統だと思うので、そういう意味で歌舞伎は、その時代の空気や文化、観る人たちの気持ちみたいなものも汲む芸能だと思うので、そこがものすごい魅力だと思っています。ハードルが高いイメージがあるかもしれませんが、全然そんなことはないので皆さんにもっと歌舞伎を観てほしいし、楽しんでもらいたいと思います」と話して、会見を締めくくった。

本作のチケット一般販売は7月14日10:00にスタート。

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「八月納涼歌舞伎」第三部

2024年8月4日(日)~25日(日) ※公演終了
東京都 歌舞伎座

スタッフ

「『狐花』葉不見冥府路行」

脚本:京極夏彦
演出・補綴:今井豊茂

出演

「『狐花』葉不見冥府路行」

中禪寺洲齋:松本幸四郎
萩之介 / お葉:中村七之助
近江屋娘登紀:坂東新悟
監物娘雪乃:中村米吉
辰巳屋番頭儀助:中村橋之助
辰巳屋娘実祢:中村虎之介
的場佐平次:市川染五郎
上月家老女中松:中村梅花
辰巳屋番頭仁平:大谷廣太郎
信田家下男:松本錦吾
雪乃母美冬:市川笑三郎
近江屋源兵衛:市川猿弥
辰巳屋棠蔵:片岡亀蔵
雲水:市川門之助
上月監物:中村勘九郎

※中禪寺洲齋の「齋」は、上部中央が「了」が正式表記。

公演・舞台情報
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松竹演劇部 @shochiku_stage

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