ミュージカル界の“超人”も稽古中パニック?キャスト全員で作る「カム フロム アウェイ」
2024年1月31日 16:51
1 ステージナタリー編集部
ブロードウェイミュージカル「カム フロム アウェイ」の製作発表が昨日1月30日に東京・在カナダ大使館で開催され、12人のキャストが登壇。本作が上演されることへの心境や意気込み、それぞれの役柄についてなどを語った。
「カム フロム アウェイ」は、2001年の同時多発テロの裏で起きた実話をもとにしたミュージカル。目的地を失い、カナダのニューファンドランド島にある小さな町・ガンダーに降り立った38機の飛行機には、7000人の乗客や乗員が乗っていた。人種も出身もさまざまな彼らは、その地でどんな5日間を過ごし、飛び立つのか。なお、キャストは12人で100人近くのキャラクターを演じ分ける。
安蘭けいは「ブロードウェイで本作を観てとても感動し、日本での上演機会があればぜひ出演したいと思っていたので、本当にうれしく思っています。私はダイアンというテキサスの女性をメインに、ニューファンドランド島の住民たち複数人の役を演じますが、それぞれ違う人物だとわかるように、『今の安蘭さんだったの?』と言われるくらい違いを出していきたいと思います」と意気込む。
石川禅は、本作を「セットは13脚の椅子と3卓のテーブルのみで、転換を役者が自ら行うというとてもシンプルな舞台」と紹介し、「椅子のデザインは1つひとつ異なりますが、飛行機に乗り合わせた人々の人種の違いや、ここにいる12人の個性豊かなキャストを表しているかのよう。そのバラバラな椅子が舞台上に現れた瞬間、一機の飛行機が出現します。素晴らしいです。魔術です。このメンバーが1つの旅客機を作り上げて、無事テイクオフしていくことを皆さんどうぞ祈っていていただければと思います」と呼びかける。
浦井健治は「いろいろな意味で豊かな稽古場だなと思います。個性も豊かで、差し入れも豊かで……(笑)。我々の感覚や個性を尊重しながら作っていくこと、その1個1個の積み重ねや、試行錯誤する過程がなんて豊かなんだろうと。演劇は、人生もそうですが、答えそのものよりそこに向かう時間が尊いと感じます。この12人とスタンバイキャスト4人を含めた16人で一緒にやれていることが幸せです」とかみ締める。
加藤和樹は「先日まで別の公演に出演していて、実は皆さんほど稽古場のことを知らないのですが(笑)」と切り出しつつも、「このキャストでは再演できないんじゃないかというくらい、本当に活躍されている方ばかりで1人ひとりの力がすごいので、これが1つになったときにどのくらいのエネルギーになるのだろうかと。作品が持つ力との相乗効果で、とんでもない力を生み出すのではないかと思います」と期待を込める。
咲妃みゆは「2001年当時小学生でしたが、あの事件をニュースで知って抱いたショックを今でも鮮明に覚えています。大きな悲しみ、苦しみ、憎しみを生み出してしまったのは人であり、それを解きほぐしたのもまさしく人であったというのがこの物語のポイントだと思います。たくさんの方が傷つき戸惑う中で、たくさんの人が寝る間を惜しんで手を差し伸べた。遠い国で起こった出来事ということではなく、どの場所もどの国も、ニューファンドランド島になり得るんだということを感じながらご覧いただければと思います」と思いを語った。
シルビア・グラブは「元々前知識なくブロードウェイへ観に行ったのですが、オープニングの曲を聴いた途端、心臓の鼓動が速まりワクワクしました。この題材をこれだけ愛のある舞台にしていることに感動して、もし日本で上演することがあったら絶対参加したいと思っていました。キャスト全員が椅子やセットを動かして、それが飛行機や、街のバーに姿を変えていくのもすごくカッコいい。客席から観ると簡単そうでしたが、実際にやると四苦八苦(笑)。ニューファンドランド島の人々が手を差し伸べて助け合ったように、私たちも舞台上で助け合って乗り切りたいと思います」と言葉に力を込める。
田代万里生は「この作品に登場するほとんどの役を、現在実在する方をモデルに実名で演じさせていただいており、光栄に思います。演出補のダニエルさんが『この作品は9.11ではなく9.12を描いた作品だ』とおっしゃっていました。いわゆる復興につながる作品だと思うのですが、全員で全幕の本読みをしたあとにすぐに思い浮かんだのは、9.11はもちろん、3.11の東北の地震や、先日の能登地震やその後の飛行機事故のことでした。僕たちもいつでもガンダーの人たちのような気持ちになれる作品だと思っています」とコメントする。
橋本さとしは「稽古が大変だとか作品が大変だとかはあまり言いたくないのですが……めっちゃ大変です(笑)。稽古場にステージ上に立ち位置を表すバミリが満天の星空のように貼られていたのを見たときは、ちょっと引いてしまいました。ただ、いろんなキャリアを積んできたミュージカル界の、演劇界の超人たちが、みんな意外とパニックになったり迷子になったりしているので安心しました。ポンコツな町長ではありますが、みんなで素敵なガンダーの町を表現できたらと思います」と気合いを口にする。
濱田めぐみは「私の演じるビバリーはアメリカンエアライン初の女性パイロットの役です。物語上の役割としては緊張感をもって切り込んでいく、ポイントとなる役でもあるのですが、カンパニー内では先ほどの(橋本)さとしさんのような可愛らしい先輩方がたくさんいらして、幸せだなあと思ってやっています。舞台上では9.11の被災地での状況が描かれますが、3.11や能登の地震に対して私たちが抱える心の辛さや苦しみと一緒なんだと気付きました。日本の方が観ても、誰もが共感できるものをちゃんと受け取って、持って帰ることができる作品だと思います」と述べる。
森公美子は「マンハッタンの消防士である息子を亡くした母ハンナをメインに演じるのですが、演じる役柄が複数あるので毎日『私、今誰?』『どこに行けばいいの?』という状況が続いて泣きそうです。主役ばかりやっている皆さんが集まっているのでギクシャクしちゃうかなと思ったのですが(笑)、すごく楽しい稽古場になっています」とアピールする。
柚希礼音は「コミュニティセンターの会長ビューラという、地元代表のおばちゃんという感じの役をやりますが、自分がこんなにすごいメンバーを仕切ったりできるんだろうかと稽古が始まる前も今もドキドキしています」と率直な気持ちを述べ、「この出来事を取材したドキュメンタリーの中で町長さんが『人の優しさはどんな悲劇でも乗り越える』とおっしゃっていて、9.11は人が起こしてしまった事件ですが、やはり人の優しさで癒されることもあるんだということを大切に演じていきたいです」と思いを語った。
吉原光夫は「先ほどクミ(森)さんが『私、誰?』とおっしゃっていましたが、実際に、テロや地震が起きて自分の居場所がなくなったり、帰れなくなってしまったりすることで自分が誰なのかわからなくなったり、誰かが亡くなったことで自分がなぜ生きているのかわからなくなることはあると思います。そんな時にガンダーの人々がその思いを引き受けて、寄り添ってくれたという実際の話があったことがすごいなと。マジで最高のメンバーで、無条件で何かつながって、命削ってやっている本当に良い稽古場なので、ぜひ楽しみにしてください」と呼びかけた。
本作の上演時間は約1時間40分。公演は来年3月7日から29日まで東京・日生劇場、4月4日から14日まで大阪・SkyシアターMBS、19日から21日まで愛知・愛知県芸術劇場 大ホール、26日から28日まで福岡・久留米シティプラザ ザ・グランドホール、5月3・4日に熊本・熊本城ホール メインホール、11・12日に群馬・高崎芸術劇場 大劇場で行われる。
ブロードウェイミュージカル「カム フロム アウェイ」
2024年3月7日(木)~29日(金)
東京都 日生劇場
2024年4月4日(木)~14日(日)
大阪府 SkyシアターMBS
2024年4月19日(金)~21日(日)
愛知県 愛知県芸術劇場 大ホール
2024年4月26日(金)~28日(日)
福岡県 久留米シティプラザ ザ・グランドホール
5月3日(金・祝)・4日(土)
熊本県 熊本城ホール メインホール
2024年5月11日(土)・12日(日)
群馬県 高崎芸術劇場 大劇場
脚本・音楽・歌詞:アイリーン・サンコフ、デイビット・ハイン
演出:クリストファー・アシュリー
ミュージカルステージング:ケリー・ディヴァイン
翻訳:常田景子
訳詞:高橋亜子
キャスト(五十音順)
ダイアン&その他:安蘭けい
ニック&その他:石川禅
ケビンT&その他:浦井健治
ボブ&その他:加藤和樹
ジャニス&その他:咲妃みゆ
ボニー&その他、ビバリー&その他カバー:シルビア・グラブ
ケビンJ&その他:田代万里生
クロード&その他:橋本さとし
ビバリー&その他:濱田めぐみ
ハンナ&その他:森公美子
ビューラ&その他:柚希礼音
オズ&その他:吉原光夫
スタンバイ:上條駿、栗山絵美、湊陽奈、安福毅
全文を表示
ステージナタリー @stage_natalie
【会見レポート】ミュージカル界の“超人”も稽古中パニック?キャスト全員で作る「カム フロム アウェイ」
https://t.co/lu1TynmqQX
#カムフロムアウェイ #安蘭けい #石川禅 #浦井健治 #加藤和樹 #咲妃みゆ #シルビア・グラブ #田代万里生 #橋本さとし #濱田めぐみ #森公美子 #柚希礼音 #吉原光夫 https://t.co/5nld24uv4f