野田秀樹が語るコロナ禍で感じた思い、そして新たな国際舞台芸術祭構想

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野田秀樹をゲストに迎えた記者会見が、昨日9月27日に東京・日本記者クラブにて行われた。会見では、文化芸術が“不要不急”とされたコロナ禍を振り返ると共に、野田が考える新たな国際芸術祭の構想が語られた。

野田秀樹

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野田はまず、2020年2月26日に政府から出されたイベント等自粛要請について言及し、「あの日、ニューヨーク公演があり、私は羽田空港にいたのですが、当時の首相が劇場など不要不急のものは閉じ、経済活動に必要なものだけを残すと話したことをそこで知りました。演劇でずっと生きている人間にとって、舞台は不要不急のものではなく生活や人生そのもの。当時は劇場以外にもパチンコ屋さんやホストクラブなどが指をさされましたが、特に根拠なく不要不急のものとして“閉じる”ように進められたことが腹立たしく思われて。と同時に、文化芸術があっさりと不要不急のものとされることに、この国の文化芸術に対する人々の思いのあり方を感じ、憤りに近いものも感じました。文化は共同体の礎であり、文化が崩れると共同体そのものが危うくなる。今のままでは日本は、気付いたら足元をすくわれてしまうのではないかと思いました」と話す。

野田秀樹

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また野田は、科学の分野でも“今すぐ役に立つもの”が評価される状況にあると、科学者と話した際のエピソードを交えながら、「文化は直接的に何かの役に立つということは成し得ないし、文化でどれだけのお金を稼げるかということを数字として示すことは難しい。でもだからと言って切り捨てられるものではありません」と話す。

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コロナ禍でそのような考えに至ったという野田は、緊急事態舞台芸術ネットワークに参画。民間劇場、公共劇場をはじめ舞台芸術に関わるプロデューサーや制作者を集めて、舞台芸術界の状況を把握し、公演中止に対する損害の補填を政府に掛け合い、その一環として、EPADが立ち上がったことなどを説明した。

さらにその過程で、国際舞台芸術祭に対するアイデアがむくむくと大きくなったと話す。「コロナ以前から東京に演劇祭はいくつかありますが、もう少し大きな規模にして世間に認められるような芸術祭が東京にできたらいいのになという夢を以前から持っていました。特に、コロナ禍を経て芸術文化がいかに認知されていないかということを感じましたし、緊急事態舞台芸術ネットワークのような横のつながりや、演劇以外のジャンルとのつながりもできましたので、呼びかけるには今がチャンスではないかと。夢のような企画ではあるかもしれませんが、粘り強く呼びかけて実現させるのが私の演劇的な最後の夢の1つ、と思っています」と話した。

スコットランド・エジンバラで公演した際の写真を披露する野田秀樹。

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会見の後半は、野田が記者からの質問に答える形で展開。記者から国際舞台芸術祭の具体的な構想について問われると「現段階では、夢がちょっと進んだくらいの段階で、どういうふうに資金を集めたら良いか、どういうステップを踏んで実現に近づければ良いかを、フェスティバルを熟知している人たちと会って意見を聞きながら考えているところです。実現のためには、政府や地方自治体に頼るだけでなく、民間への呼びかけも必要だと考えています。まだまだこれからではありますが、なるべく早く……万博が行われる2025年は1つの目処になるのかな」と語る。

また国際舞台芸術祭のイメージの1つとして、東京・東京芸術劇場の前や上野などに、プラットフォームを設けたいという構想を語った。「現在開催中の『東京芸術祭』なども巻き込んだような、大きな芸術祭を考えています。単発に終わらせず、継続させていけるような芸術祭になれば」と展望を語った。

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東京芸術劇場 @geigeki_info

【会見レポート】野田秀樹が語るコロナ禍で感じた思い、そして新たな国際舞台芸術祭構想 https://t.co/KnYRWng6Jl

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