「舞台『刀剣乱舞』士伝 真贋見極める眼」が7月から8月にかけて東京・大阪・福岡で上演される。これは、刀剣育成シミュレーションゲーム「刀剣乱舞ONLINE」を原案とした「舞台『刀剣乱舞』」(以下刀ステ)シリーズの最新公演。「士伝」では「刀剣乱舞ONLINE」より、「特命調査 天保江戸」を題材にしたストーリーが展開する。本作の注目ポイントは、何と言っても同じ刀派・虎徹兄弟が集結するところだ。本格的な稽古開始を控えた5月下旬、蜂須賀虎徹役の後藤大、長曽祢虎徹役の松田岳、浦島虎徹役の竹中凌平に、「士伝」にかける思いを聞いた。
取材・文 / 興野汐里撮影 / ヨシダヤスシ
ヘアメイク / 橋本紗希(LaRME)[後藤大]、
吉田梨々花(LaRME)[松田岳]、
太田夢子(株式会社earch)[竹中凌平]
スタイリスト / 津野真吾(impiger)[後藤大]、
吉田ナオキ[松田岳、竹中凌平]
僕たち3人の勝負どころだ!
──2016年にスタートした刀ステは、末満健一さんが脚本・演出を手がける緻密なストーリー構成で人気を博し、原案となる刀剣育成シミュレーションゲーム「刀剣乱舞ONLINE」のファンからシアターゴアーまで、幅広い層の方々から愛されている作品です。蜂須賀虎徹役の後藤さんは2023年8月に開催された「舞台『刀剣乱舞』七周年感謝祭 -夢語刀宴會-」、長曽祢虎徹役の松田さんは2024年6・7月に上演された「舞台『刀剣乱舞』心伝 つけたり奇譚の走馬灯」以来の出演となり、浦島虎徹役の竹中さんは今作「士伝 真贋見極める眼」で刀ステシリーズに初参加します。
後藤大 「舞台『刀剣乱舞』七周年感謝祭 -夢語刀宴會-」の最終公演にサプライズで出演させていただいたとき、「自分もこの座組の中で一緒に戦うことができるんだ!」とすごくうれしかったことを覚えています。客席降りをしたときに、お客様からさまざまなリアクションをいただいて、応援してくださっている方々の気持ちにしっかり応えないといけないという責任感が芽生えました。この取材の数日前に「士伝」の台本をいただいて、「刀剣乱舞」という作品と向き合う覚悟ができましたし、何よりも今、楽しみだという感情が勝っています。
松田岳 「心伝」に出演させていただいて、改めて刀ステは大河ドラマのような壮大な作品群であることを実感しました。任務を遂行するにあたって刀剣男士が背負っているものを表現するためには、ものすごい体力と精神力が必要でしたね。極限まで無駄なものを削ぎ落とす、まるで刀を研いで、切れ味を上げていくかのような稽古の日々でした。今作の稽古もきっと大変なことが予想されるので、ご飯をいっぱい食べてしっかりと準備しようと思います(笑)。
竹中凌平 僕は今回が初参加なので、やっぱりすごく緊張しています。「刀剣乱舞」という大人気コンテンツに携わらせていただく喜びももちろんありますし、お客様に愛されている作品だからこそ、しっかりとやり遂げなければならないという思いもあります。
──刀ステ最新公演「士伝」では、「刀剣乱舞ONLINE」より「特命調査 天保江戸」を題材にしたストーリーが展開します。蜂須賀虎徹を隊長とした長曽祢虎徹、浦島虎徹、小竜景光、石田正宗の部隊は特命調査へ出陣し、天保時代の江戸・愛宕山近辺へやって来ました。歴史が改変された江戸の町で、5振りは先行調査員である水心子正秀と源清麿、12代将軍・徳川家慶の子である初之丞の遊び相手として江戸城に出入りしていた青年・麟太郎と出会います。
松田 以前出演した「心伝」は新選組を軸にした活撃でしたが、今回の「士伝」は政治色が強く、複雑に絡み合うドロドロとした人間関係が見どころの1つになるのではないかと思っています。また「心伝」では、長曽祢虎徹と彼の元主である近藤勇の関係性が描かれましたが、「士伝」では同じ刀派に属する蜂須賀虎徹、長曽祢虎徹、浦島虎徹に焦点を当てた物語が紡がれます。「僕たち3人の勝負どころだ!」と台本を読んで意気込んでいました。
竹中 岳くん(松田)が出演していた「心伝」を観させていただいたとき、個人的に幕末の歴史が大好きなので心が躍りました。少し毛色は異なりますが、「士伝」もまた幕末を舞台にした作品になるということで、今からテンションが上がっています!
後藤 「真贋見極める眼」というタイトルの通り、自分が演じる蜂須賀虎徹としては、刀工・虎徹が打った真作の刀としての誇りをどう表現するかが大きなテーマになるのではないかと思います。自分の内面と向き合い、深く悩む蜂須賀虎徹の心情を大切にして、お客様にお芝居を届けたいですね。
浦島虎徹は癒やし
──松田さんがおっしゃったように、虎徹兄弟として親しまれる蜂須賀虎徹、長曽祢虎徹、浦島虎徹の3振りが勢ぞろいする場面が「士伝」の見どころの1つになると思います。今作の稽古に臨むにあたって、ご自身が演じるキャラクターをどのように捉えているか、また、どんな部分を意識して役を立ち上げていきたいと考えているかについて教えてください。
竹中 浦島くんはピュアで天真爛漫、誰とでも仲良くなれる本当に良い子。でも、決めるときは決める、ギャップがあるところがすごくカッコいいなと思っていて。実年齢は30歳を超えてしまったんですけど(笑)、浦島くんを演じることをきっかけに、彼のようなピュアな心を取り戻したいと思います!
松田 台本を読んでいて、浦島虎徹のセリフが出てくるたびに「なんて可愛いんだ……!」と癒やされてました(笑)。
後藤 めっちゃわかります! 本当に可愛くて、一挙手一投足にキュンキュンしますよね。
──蜂須賀虎徹と長曽祢虎徹の間に確執があるぶん、浦島虎徹が2振りの救いになっている部分が大きいのではないかと思います。
後藤 そうですね。浦島虎徹の存在がオアシスになっているし、彼のセリフには、蜂須賀虎徹と長曽祢虎徹の心を解く、素敵な言葉がちりばめられているなと感じます。
松田 先ほど後藤くんから「真贋見極める眼」というタイトルの話が出ましたけど、長曽祢虎徹役の僕は、“真贋”の“贋作”のほうを担当させていただくわけですが……。
竹中 贋作担当って!(笑)
松田 不思議な言い方になっちゃった(笑)。長曽祢さんは「心伝」でずっと、自分は贋作だけれども、刀としてどう働くかが重要であるということを説いていて。贋作であるがゆえに、自分の価値を心から信じきることができずにいて苦しんでいる。そんな長曽祢さんの生き方に自分自身を重ねてしまう部分が多くて、自分とリンクすればするほど、稽古に臨むことが苦しくなるときもありました。ですが、その苦しみはきっと無駄なことではないと信じているので、自分を通して長曽祢さんの思いをお客様に届けられたらと思います。改めて、長曽祢さんは本当に大好きなキャラクターです。
後藤 蜂須賀虎徹の魅力は、高貴な佇まいと繊細な心を持っているところだと思います。基本的には温厚な性格なのですが、虎徹の真作としての誇りがあるがゆえに、贋作という存在を許容することができない。長曽祢虎徹を本丸の仲間だと認識はしているけど、贋作であることを受け入れられない……と苦しんでいる一面もすごく魅力的だなと。所作や佇まいの美しさはもちろん、蜂須賀虎徹が抱える葛藤もしっかりと表現できたら良いなと思っています。
新しい時代を作る
──5月下旬に開始される本格的な稽古に向けて、現在入念な殺陣稽古が行われているそうですね。ちなみに、お三方が顔を合わせるのは、本日が初めてでしょうか?
竹中 3人だけでお話しをするのは今日が初だったんですが、もうすでに落ち着いた雰囲気が漂っていますよね。
後藤 確かに! 今回の「士伝」には刀剣男士役のキャストとしてあと4人(小竜景光役の梶田拓希、石田正宗役の湊丈瑠、水心子正秀役の佐藤祐吾、源清麿役の岩崎悠雅)が参加するんですけど、皆さんそれぞれ落ち着いた魅力がある気がします。
松田 「やるぜ! うおー!」という感じではなく、お茶の間でゆったり過ごすような、“ぬ~ん”とした雰囲気の座組になる予感がしています(笑)。
──朗らかで良いですね(笑)。同じシリーズであっても、登場キャラクターや出演キャストの方々によって座組の雰囲気が変わると思います。刀剣男士役のキャスト7名に加え、歴史上の人物を演じる麟太郎役の日暮誠志朗さん、窪田清音役の賀集利樹さん、鳥居耀蔵役の曽世海司さん、水野忠邦役の山路和弘さんらが参加する「士伝」ですが、作品全体を通して楽しみにしているシーンがあれば教えてください。
松田 虎徹の3振りが真剣必殺を披露するのか、ものすごく楽しみですね!「心伝」の真剣必殺のシーンでは、長曽祢さんはほぼほぼ布をまとっていない状態で……当時も恥ずかしさは1ミリもなかったですが、今回は2振りも一緒にいてくれるのでさらに心強いです(笑)。
竹中 安心してください!(笑) そういえば、岳くんが出演した「心伝」を観劇したとき、やぐらが回転する演出がすごくカッコよかったのが印象的で。今回の戦闘シーンではどういう特別な演出になるのか楽しみにしています。
後藤 とにかく虎徹兄弟で立ち上げるシーンが楽しみで仕方ないですね。台本を読んでいるだけでも感極まってしまって……「ああ、これは外で読んじゃダメだ!」と思って。
松田 俺も同じシチュエーションになった! 手元のコーヒーがまったく減らなかったもん(笑)。
竹中 ははは! 今お二人も話していたように、僕たち自身も本作の上演をすごく楽しみにしているので、お客様から愛してもらえる浦島くんになれるよう、精一杯稽古に励みたいと思います。ぜひ劇場まで足をお運びください。
松田 長曽祢虎徹としての生き様をお見せできるよう、稽古、そして公演に臨みます。皆様の期待に応えられるようにがんばりますので、何卒よろしくお願いいたします!
後藤 「新しい時代を作る」。その言葉が自分自身にとっても大きなテーマになると思っていて。歴代のキャスト・スタッフの方々が紡いできた刀ステの歴史を背負いながら、新しい刀ステをお見せできるように、ファンの方々と同じく自分たちも「刀剣乱舞」という作品を愛したいと思います。楽しみにしていてください。
プロフィール
後藤大(ゴトウダイ)
1995年、千葉県生まれ。「ミュージカル『テニスの王子様』3rdシーズン」仁王雅治役で俳優デビュー。主な出演作に「『ヒプノシスマイク -Division Rap Battle-』Rule the Stage -track.5-」「ミュージカル『黒執事』~寄宿学校の秘密~」、特撮ドラマ「仮面ライダーギーツ」などがある。NHK Eテレ「ビットワールド」にレギュラー出演中。
後藤大 | DAI GOTO. (@dai_vivigalaxy) | X
松田岳(マツダガク)
1992年、兵庫県生まれ。自身が所属するブルーシャトルプロデュース作品のほか、「舞台『文豪ストレイドッグス 共喰い』」、「ミュージカル『薄桜鬼』」「あんさんぶるスターズ!THE STAGE」「舞台『ブルーロック』」シリーズ、特撮ドラマ「仮面ライダー鎧武 / ガイム」などに出演している。NHK Eテレ「天才てれびくん」にレギュラー出演中。
竹中凌平(タケナカリョウヘイ)
1993年、千葉県生まれ。自身が所属する劇団アレン座の公演に加え、「舞台『ブルーロック』」「ミュージカル『東京リベンジャーズ』」「家庭教師ヒットマン REBORN! the STAGE」「あんさんぶるスターズ!THE STAGE」シリーズなどに出演している。11月に上演される「舞台『ブルーロック -EPISODE 凪-』」に出演予定。