本作は、ノーベル文学賞受賞作家のハロルド・ピンターが1959年に執筆した不条理劇。舞台は、うず高く積まれた書類の山や横倒しになったショッピングカート、古いトランクや乳母車などさまざまな生活用品が乱雑に詰め込まれ、染み付いた壁紙が剥がれかけている、廃屋のような部屋。そこへ、古ぼけてはいるがきちんとした身なりの青年アストン(
2人の会話から、そこがアストンの部屋であること、デーヴィスは働いていた食堂をクビになったばかりだということ、そしてアストンの厚意でデーヴィスはその部屋へ連れて来てもらったことなどがわかる。自らの状況を恨み、二言目には「シッドカップに行って身分証明書さえ手に入れば」とまくし立てるデーヴィスと、黙々と小さなプラグを修理しながら、庭に物置を作る計画をにこやかに語るアストン。2人の会話はまったく噛み合っていないが、ひょんなことからデーヴィスはアストンの部屋に居候することになる。
翌朝、その部屋にアストンの弟・ミック(
“ピンターポーズ”と呼ばれる、ピンター作品特有の“間”が印象的な本作。森は、その“間”により、あるときは笑いを、またあるときは鋭い緊迫感を生み出し、作品の可能性を豊かに広げる。また、溝端は社会的な立場があり力強い話ぶりのミックを、愛嬌を交えつつ堂々と演じ、忍成は自らのペースで言葉を紡ぐアストンを、内面に穏やかさと闇を秘めた不思議な存在として表現。そんな兄弟の狭間で追い詰められていくデーヴィスを、温水は人間味ある憎めない存在として体現した。
さらに彼ら3人の他愛ない、それでいて切実なやりとりを描いた徐賀世子のシャープな新訳、森が掲げた“ガラクタ”というキーワードを見事に具現化した香坂奈奈の舞台美術が、本作の不可思議な魅力をさらに押し広げる。公演は12月17日まで東京・シアタートラム、12月26・27日に兵庫県 兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホールにて。
あ🌸や @ayasakuramiyabi
途中までのストーリー書いてあるからこれで気になったら観に行ってほしい……
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