折坂悠太が自身最大11人編成で奏でた“のこされた者のワルツ”「これは私の救いです」

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折坂悠太の単独公演「のこされた者のワルツ」が4月4日に東京・NHKホール、本日4月11日に大阪・ザ・シンフォニーホールにて行われた。この記事では東京公演の様子をレポートする。

折坂悠太「のこされた者のワルツ」東京公演の様子。(Photo by Yukitaka Amemiya)

折坂悠太「のこされた者のワルツ」東京公演の様子。(Photo by Yukitaka Amemiya)

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「のこされた者のワルツ」には、折坂のほかsenoo ricky(Dr)、宮田あずみ(Contrabass)、山内弘太(EG)、ハラナツコ(Sax, Flute)、yatchi(Piano)、宮坂遼太郎(Perc)、波多野敦子(1st Violin, String arrangements)、鈴木絵由子(2nd Violin)、角谷奈緒子(Viola)、巌裕美子(Cello)が参加。折坂にとって最大となる11人編成で、2時間半にわたってライブが繰り広げられた。

10人の楽器隊とともに

折坂悠太(Photo by Yukitaka Amemiya)

折坂悠太(Photo by Yukitaka Amemiya)[拡大]

うっすらとした光が降り注ぐステージに楽器隊が姿を現すと、やがてあたりは暗闇に包まれる。そこへ折坂が登場し、舞台中央に立って深々と一礼。「呼び名」でゆったりとライブの幕を開けた。歌唱後に彼は「折坂悠太です。何卒、何卒、何卒」と挨拶し、両腕を大きく広げて全身で拍手を浴びる。続く「ハチス」では、ふくよかなサウンドが会場を包み込むように広がっていった。その後折坂は、辻征夫「春の問題」の朗読を挟みつつ、「人人」「あけぼの」などをパフォーマンス。「沖の方へ」にてマンドリンを手に取った彼は、光を反射させる水面のようにキラキラとした音を奏でる。そこにストリングスの麗しい調べが重なり、船出を祝福するような優しくも力強い音が広がった。

折坂悠太「のこされた者のワルツ」東京公演の様子。(Photo by Yukitaka Amemiya)

折坂悠太「のこされた者のワルツ」東京公演の様子。(Photo by Yukitaka Amemiya)[拡大]

さらに「針の穴」が披露されると、ストリングスの音はダイナミズムを増していく。スケール感のあるパフォーマンスの最中、折坂の頭上で動き回るのは、歌詞の通り「針の穴を通すような」まっすぐとした光。「鯱」ではその光がサイケデリックな色に変容し、得も言われぬ高揚感が醸し出される。演奏が終わるや否や客席からは拍手喝采が沸き起こり、折坂は笑みを浮かべながらぐっと水を飲み込んだ。「星屑」の穏やかな演奏ののち、彼らは「スペル」を披露。徐々に熱を帯びていくサウンドで観客を惹き付け、折坂は「またあとで会いましょう」と1部を締めくくった。

音楽家のズルいところは

折坂悠太(Photo by Yukitaka Amemiya)

折坂悠太(Photo by Yukitaka Amemiya)[拡大]

時にダイナミックに、時に華麗に、千変万化のパフォーマンスでオーディエンスを魅了した1部と打って変わって、2部は深く穏やかなトーンでライブが展開された。ストリングス隊と折坂の5人のみで披露された「世界のつづき」や、朴訥とした歌と演奏が胸を打つ「正気」などがじっくり届けられ、観客は息をのむようにそのパフォーマンスにじっと聴き入る。ひとしきり歌唱を続けたのち、折坂が語ったのは「のこされた者のワルツ」というライブタイトルに込めた思い。「過ぎ去った時間とか会えなくなった人とか、そういうことを考えながら、そういうものの中で生きていると思っています。自分のことを振り返ると、そういうものに宛てた曲が多いなと思ったので、『のこされた者のワルツ』というタイトルは自分の音楽を表すうえでいい言葉なんじゃないかと思って、このタイトルにしました」と語った彼は、「すごく個人的な歌が多いです。音楽家のズルいところは詩に託したりメロディに託したりして、それをはっきりとは言わずに、だけど個人的な思いを歌に入れて、こうやってみんなに観てもらうことができるわけですね。これは私の救いです」と真摯な口調で続け、再び演奏へと移っていった。

交差する光と光

折坂悠太「のこされた者のワルツ」東京公演の様子。(Photo by Yukitaka Amemiya)

折坂悠太「のこされた者のワルツ」東京公演の様子。(Photo by Yukitaka Amemiya)[拡大]

その後「光」が披露され、折坂の個人的な思いと観客1人ひとりの心象とが重なり合う中、客席へと放出された光が交差する。光はやがて強さを増していき、その中で折坂は「朝顔」を歌唱。ミニマムなサウンドに引き立てられた歌声が会場中にこだまする。しなやかさと強さを併せ持った圧巻の歌唱が展開され、歌をじっくり聴かせた2部のハイライトが作られた。その後ライブは、タイトルに冠された「のこされた者のワルツ」の演奏などを経て、ラストナンバー「さびしさ」へ。たおやかなボーカルとサウンドを届け、折坂たちはステージから退場した。

折坂悠太「のこされた者のワルツ」出演者一同。(Photo by Yukitaka Amemiya)

折坂悠太「のこされた者のワルツ」出演者一同。(Photo by Yukitaka Amemiya)[拡大]

アンコールの拍手を受けて再び登場した折坂らは、NHK「みんなのうた」でオンエアされている楽曲「やまんばマンボ」を演奏。陽気かつユーモラスなリズムとサウンドでオーディエンスの心を躍らせる。そして彼は「このライブに関わってくださったすべての皆さま、そして来てくださったお客さま、いつも遊んでくれる友達、いつも側にいてくれる家族に感謝します。本当にどうもありがとうございました」と語り、「坂道」を演奏。ガットギターの乾いた音色、サックスとストリングスの華やかな調べ、パーカッションの色鮮やかなサウンドが複雑に絡み合いながらも、口当たりは不思議とまろやか。そんな折坂らしい音に観客が浸りライブは終了。出演者一同がお辞儀をすると、スタンディングオベーションが発生し、大盛況でライブは幕引きへ。しばし会場を見渡したのち、折坂たちは跳ねるような小気味いいステップで舞台袖へと去って行った。

ライブレポート
ライブレポート
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セットリスト

折坂悠太「のこされた者のワルツ」東京公演 NHKホール 2025年4月4日

<第1部>
01. 呼び名
02. ハチス
03. 人人
04. あけぼの
05. 沖の方へ
06. 針の穴
07. 鯱
08. 星屑
09. スペル
<第2部>
10. 世界のつづき
11. 正気
12. 窓
13. 光
14. 朝顔
15. のこされた者のワルツ
16. 鶫
17. さびしさ
<アンコール>
18. やまんばマンボ
19. 坂道

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折坂悠太いんふぉ @orisakayuta

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    折坂悠太
のこされた者のワルツ
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@natalie_mu にて
東京公演のライブレポートが
公開されています🪑🪟
https://t.co/vWidhHWYiJ

photo: Yukitaka Amemiya https://t.co/RcuQMK3yhM

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