フィッシュマンズは進化を止めない、東京から世界に発信した最新型サウンド

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フィッシュマンズが2月18日に東京・東京ガーデンシアターでワンマンライブ「Fishmans『Uchu Nippon Tokyo』」を開催した。

「Fishmans『Uchu Nippon Tokyo』」の様子。(撮影:西槇太一)

「Fishmans『Uchu Nippon Tokyo』」の様子。(撮影:西槇太一)

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本公演はフィッシュマンズにとってバンド史上最大規模でのワンマンライブ。サブスク解禁をきっかけに2010年代以降、新たなリスナーを獲得している彼らだが、ここ数年は海外の音楽ファンの間でも多大な人気を集めており、この日の会場にも多くの外国人ファンの姿が見られた。フィッシュマンズは、UAハナレグミマヒトゥ・ザ・ピーポーGEZAN)、君島大空GOMAをゲストに迎え、アンコール2曲を含む全13曲を演奏。バージョンアップした楽曲の数々を届け、最新型のフィッシュマンズサウンドを提示して見せた。

最大規模ワンマンいよいよ開演

茂木欣一(Dr, Vo)(撮影:西槇太一)

茂木欣一(Dr, Vo)(撮影:西槇太一)[拡大]

柏原譲(B)(撮影:西槇太一)

柏原譲(B)(撮影:西槇太一)[拡大]

HAKASE-SUN(Key)(撮影:西槇太一)

HAKASE-SUN(Key)(撮影:西槇太一)[拡大]

原田郁子(Vo / クラムボン)

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木暮晋也(G / ヒックスヴィル)(撮影:西槇太一)

木暮晋也(G / ヒックスヴィル)(撮影:西槇太一)[拡大]

関口“dARTs”道生(G)(撮影:西槇太一)

関口“dARTs”道生(G)(撮影:西槇太一)[拡大]

定刻を迎えると静かに客電が落ち、アルバム「宇宙 日本 世田谷」のオープニングナンバー「POKKA POKKA」が会場に流れる。佐藤伸治の穏やかな歌声が流れる中、メンバーの茂木欣一(Dr, Vo)、柏原譲(B)、バンドメンバーのHAKASE-SUN(Key)、木暮晋也(G / ヒックスヴィル)、関口“dARTs”道生(G)、原田郁子(Vo / クラムボン)がステージに姿を現す。この日の1曲目に届けられたのは「Weather Report」。シーケンスのイントロに場内のテンションが一気に高まり、雷鳴を思わせるような木暮のギターやHAKASE-SUNが奏でるクリアなシンセサイザーの音色がその上を飛び交う。茂木と柏原が繰り出すタイトで屈強なリズムがやがて大きなグルーヴの渦を生み出し、まるで台風の目の中にいるような不思議な高揚感が会場を包み込んでいった。

2曲目に届けられたのは「いかれたBaby」。1993年にリリースされた「いかれたBaby」は、さまざまなアーティストにカバーされるなど、長い時間をかけてアンセムと化したフィッシュマンズ屈指の名曲だ。茂木は「この曲が持つ普遍的な素晴らしさを1人でも多くの音楽ファンに伝えていきたい」と、ことあるごとに語っており、世代や国境を超えて会場に詰め掛けた多くの観客たちが心地よさそうに体を揺らしている光景は、ただただ圧巻だった。

盟友ハナレグミ登場

ハナレグミ(撮影:西槇太一)

ハナレグミ(撮影:西槇太一)[拡大]

「Fishmans『Uchu Nippon Tokyo』」の様子。(撮影:西槇太一)

「Fishmans『Uchu Nippon Tokyo』」の様子。(撮影:西槇太一)[拡大]

「MAGIC LOVE」は、オートチューンを使った木暮の歌い出しでスタート。小気味いいレゲエのリズムの上で茂木と原田が軽やかに掛け合い、歌声を届ける。間奏では木暮と関口がギターバトルを繰り広げ会場を沸かせた。インストの「IN THE FLIGHT」から「バックビートにのっかって」に突入すると、最初のゲストボーカル、ハナレグミ・永積崇がステージに登場。ハナレグミは原田とともに、2005年のフィッシュマンズ再始動からライブに参加してきた盟友的存在だ。彼はタイトル通り、バックビートにのっかって、たゆたうように体を揺らし、メロウな歌声を響かせた。「崇と一緒にぜひこの曲をやりたかった」という茂木の言葉から次曲「ひこうき」へ。ハナレグミは軽やかにステップを踏みながら、フィッシュマンズのサニーサイドを代表する楽曲をとびきり晴れやかに歌いあげた。

新たな風を吹かせた君島大空

君島大空(撮影:西槇太一)

君島大空(撮影:西槇太一)[拡大]

「Fishmans『Uchu Nippon Tokyo』」の様子。(撮影:西槇太一)

「Fishmans『Uchu Nippon Tokyo』」の様子。(撮影:西槇太一)[拡大]

2人目のゲストボーカルとして登場したのは、フィッシュマンズのライブに初めて参加する君島大空。ガットギターを爪弾きながら彼が「BABY BLUE」を歌い始めると、美しいアルペジオの調べと物憂げなウィスパーボイスが静まり返った場内に漂う。君島はそのまま「BABY BLUE」の弾き語りを続け、卓越したギタープレイと表現力豊かな歌声で観客を魅了。楽曲の途中で「なんてったの」の一節を歌い継ぐと、そこにバンドの演奏が加わり、次のナンバー「なんてったの」へ。終盤で再び「BABY BLUE」のマッシュアップを盛り込むなどフレキシブルなプレイで観客を楽しませた君島とフィッシュマンズ。演奏が終わると、茂木は「めちゃくちゃ、いい風が吹いてるね!」とフィッシュマンズの楽曲に新たな色彩を加えた君島を絶賛した。続く、「感謝(驚)」は、君島の軽快なギターカッティングでスタート。演奏が進むにつれバンドのグルーヴ感が増していき、それに伴い場内のボルテージもぐんぐんと高まっていった。

MCでは茂木が満面の笑みで会場を見渡し「フィッシュマンズを観るために6000人が集まってくれています。本当にありがとう!」と喜びを爆発させる。この日の模様は海外に配信されており、茂木は「Thank You」「謝謝」「Gracias」「Obrigado」「Khob Khun Krab」と、さまざまな言語で世界中のファンに感謝の言葉を伝える。続けて、「世界中が今、フィッシュマンズを求めていると確信しています!」と彼が力強く語ると場内から盛大な拍手が沸き起こった。

圧倒的な歌声を聞かせたUA

「Fishmans『Uchu Nippon Tokyo』」の様子。(撮影:西槇太一)

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フィッシュマンズとUAのセッションの様子。(撮影:西槇太一)

フィッシュマンズとUAのセッションの様子。(撮影:西槇太一)[拡大]

後半は「Go Go Round This World!」でスタート。緊張感漂うスリリングなイントロがしばし繰り広げられたのち、UAが威風堂々とステージに登場する。重く引きずるようなレゲエのリズムに乗せて彼女が歌い始めた途端、会場の空気が一変。圧倒的な存在感を放つパワフルな歌声が轟いた。歌唱を終えたUAは「サザエさん」を真似て「UAでございます!」と挨拶。鬼気迫るパフォーマンスとはうって変わったキュートなMCで観客を和ませる。続く「WALKING IN THE RHYTHM」は、木暮が奏でるドス黒くブルージーなギターリフを中間部にフィーチャーしたディープなアレンジで届けられた。UAは衝動に身を任せるように多彩なフェイクを織り交ぜながら歌唱。自らの楽曲「リズム」の一節をスキャットで披露する一幕もあった。

さらなる進化を遂げた「LONG SEASON」

「Fishmans『Uchu Nippon Tokyo』」の様子。(撮影:西槇太一)

「Fishmans『Uchu Nippon Tokyo』」の様子。(撮影:西槇太一)[拡大]

茂木欣一(Dr, Vo)(撮影:西槇太一)

茂木欣一(Dr, Vo)(撮影:西槇太一)[拡大]

GOMA(撮影:西槇太一)

GOMA(撮影:西槇太一)[拡大]

ステージ後方の幕が開き巨大なスクリーンに海の中を思わせるような映像が映し出され「LONG SEASON」へ。海鳴りの音に重なるようにして、「Get round in the season」という茂木のコーラスが繰り返されるごとに緊張感が高まっていく。フィッシュマンズはジャズファンク調のグルーヴィなイントロをしばし展開し、ダイナミックなブレイクを何度か繰り返したのち、関口の印象的なギターフレーズから楽曲本編に突入。のっけから斬新なアレンジを繰り出し、バージョンアップした「LONG SEASON」の片鱗を見せつける。

中盤のドラムソロのパートには、ディジリドゥ奏者のGOMAが登場。茂木が嵐のように激しくドラムを打ち鳴らす中、GOMAは呪文を唱えるようにしてトライバルな音色を吹き鳴らす。2人がステージから放つサイケデリックな音の粒子を全身で浴びる観客たち。ステージ後方のスクリーンにはVJのC.O.L.O(COSMIC LAB)が手がけたイマジネイティブな映像が投影され、観る者を異世界に引きずり込むような、すさまじいパフォーマンスが展開された。

GOMAと入れ替わりに再びメンバーがステージに現れると、テンポアップした演奏で楽曲は次のパートへ。激しくライトが明滅し、四つ打ちのダンサブルなリズムが会場を揺らす。ブレイクを挟み、木暮がかき鳴らすアコースティックギターで演奏が再開。シンプルなドラムのリズムと木暮の口笛の音が観客たちの郷愁を誘う。「僕ら半分夢の中」という茂木のボーカルと入れ替わるように、関口が奏でるノイジーなギターが狂おしく鳴り響き、最後はすべての楽器が再び合流し、やがて楽曲は静かにフィナーレを迎えた。終盤で佐藤の姿がスクリーンに映し出され、また茂木と佐藤の歌声がシンクロするなど、この日の「LONG SEASON」では、フィッシュマンズの“過去・現在・未来”が、進化を遂げたアレンジで見事に表現されていた。

マヒトゥ・ザ・ピーポー絶唱

マヒトゥ・ザ・ピーポー(GEZAN)

マヒトゥ・ザ・ピーポー(GEZAN)[拡大]

本編ラストはGEZANのマヒトゥ・ザ・ピーポーをゲストに迎え、「DAY DREAM」が届けられた。「DAY DREAM」は、アルバム「宇宙 日本 世田谷」の最後を飾るナンバーで、この曲がライブで演奏されるのは極めて稀なことだ。ステージ後方に設置されたミラーボールが回り出し、マヒトとメンバーたちのシルエットを白昼夢のようにゆらゆらと映し出す。おなじみの真っ赤な衣装に身を包んだマヒトは、喉が張り裂けんばかりの絶唱で、楽曲に流れるメランコリックな雰囲気をエクストリームに表現してみせた。

「サトちゃんは、どんなふうに見ていてくれたかな?」

「Fishmans『Uchu Nippon Tokyo』」アンコールの様子。(撮影:西槇太一)

「Fishmans『Uchu Nippon Tokyo』」アンコールの様子。(撮影:西槇太一)[拡大]

「Fishmans『Uchu Nippon Tokyo』」アンコールでの記念撮影。(撮影:西槇太一)

「Fishmans『Uchu Nippon Tokyo』」アンコールでの記念撮影。(撮影:西槇太一)[拡大]

アンコールでは、この日の全出演者がステージに。茂木はゲストを改めて紹介すると、病気療養のため共演が叶わなかった、こだま和文に「次のライブは絶対一緒にやりたいと思います!」とエールを送った。アンコール1曲目は「ナイトクルージング」のセッション。フィッシュマンズを代表する名曲が、マヒト、君島、ハナレグミ、UAの順に歌い継がれていく。演奏後には全出演者そろっての記念撮影が行われ、興奮を抑えきれない茂木は「写真、撮ろうぜー!」とオフマイクで絶叫していた。

茂木欣一(Dr, Vo)、柏原譲(B)(撮影:西槇太一)

茂木欣一(Dr, Vo)、柏原譲(B)(撮影:西槇太一)[拡大]

ゲストを送り出した茂木は、「夢のような時間でした。フィッシュマンズがさらに進化している、ということになったらみんなに喜んでもらえるだろうし、サトちゃん(佐藤)もライブのたびに、いろいろ(サウンドを)更新することが本当に好きな人だから、今日のライブ、どんなふうに見ていてくれたかな?」と充実した表情でこの日のライブを振り返る。続けて、福岡の野外イベント「CIRCLE '25」への出演、フィッシュマンズ初の海外ワンマンとなる台湾公演がアナウンスされると客席から盛大な拍手が寄せられた。最後にフィッシュマンズは「新しい人」を演奏。3時間におよぶワンマンを静かに締めくくった。

セットリスト

Fishmans「Uchu Nippon Tokyo」2025年2月18日 東京ガーデンシアター

01. Weather Report
02. いかれたBaby
03. MAGIC LOVE
04. IN THE FLIGHT -interlude- ~バックビートにのっかって(Vo:ハナレグミ)
05. ひこうき(Vo:ハナレグミ)
06. BABY BLUE~なんてったの(Vo:君島大空)
07. 感謝(驚)(Vo:君島大空)
08. Go Go Round This World!(Vo:UA)
09. WALKING IN THE RHYTHM(Vo:UA)
10. LONG SEASON(Didgeridoo:Goma / VJ:C.O.L.O)
11. DAY DREAM~それはただの気分さ -epilogue-(Vo:マヒトゥ・ザ・ピーポー)
<アンコール>
12. ナイトクルージング(ALL CAST)
13. 新しい人

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📝原田郁子 掲載情報📝
先日のFISHMANS公演のライブレポートがナタリーで掲載されました! https://t.co/JdUKmuB8wG

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