くるりが25年の歴史を総ざらい、豊潤なアンサンブルを奏でた「くるりの25回転」

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くるりの結成25周年記念ライブ「くるりの25回転」の東京公演が、2月11日に東京ガーデンシアターにて行われた。

「くるりの25回転」東京ガーデンシアター公演の様子。(撮影:岸田哲平)

「くるりの25回転」東京ガーデンシアター公演の様子。(撮影:岸田哲平)

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1996年に岸田繁(Vo, G)と佐藤征史(B)が通う立命館大学にて結成され、2021年に25周年という節目を迎えたくるり。この日、オーディエンスを前に立った2人は、バンドの歴史を紡いできた楽曲の数々を石若駿(Dr)、松本大樹(G)、野崎泰弘(Key)、ハタヤテツヤ(Key)、山崎大輝(Per)、加藤哉子(Cho)、ヤマグチヒロコ(Cho)、副田整歩(Sax、Clarinet)、大石俊太郎(Sax, Clarinet)、沢圭輔(Manipulator)という手練れのメンバーとともに精魂を込めてパフォーマンスした。

岸田繁(Vo, G)(撮影:岸田哲平)

岸田繁(Vo, G)(撮影:岸田哲平)[拡大]

静かに客電が落ち、白いセットアップ姿の2人がステージに登場すると、期待と熱気に満ちた拍手がホールにこだまする。岸田が「皆さんこんばんは、くるりです」と挨拶をしたことを機に奏でられたのは、1999年リリースの1stアルバム「さよならストレンジャー」の1曲目「ランチ」。穏やかなグルーヴがたちまち広がっていき、会場をノスタルジックな世界へと誘う。さらに「虹」や「窓」といった初期の楽曲が演奏され、観客はそれぞれの席で自分たちの思い出と重ね合わせながら、懐かしいナンバーに耳を澄ませた。もちろん演奏される楽曲たちはすべて“現在のくるり”のサウンドにアップデートされており、単に過去曲の再現に止まらないのが彼ららしいところ。「惑星づくり」では石若のタイトなリズムに乗せて、丸味を帯びたマリンバの音や勇壮なサックスの音色などが溶け合い、そのタイトル通りスペイシーで奥行きのある音像が描き出された。「ばらの花」を筆頭に、「ワンダーフォーゲル」「ワールズエンド・スーパーノヴァ」と代表曲を序盤に立て続けに届けたあと、岸田は「こうやって開催できて本当にうれしい気持ちです」とライブを開催できた喜びを口に。そして、エフェクトをかけたボーカルがファニーな雰囲気を醸す「水中モーター」を披露した。

佐藤征史(B)(撮影:岸田哲平)

佐藤征史(B)(撮影:岸田哲平)[拡大]

ここで岸田が「くるりの25回転」では、過去の曲から時系列にに演奏していることを説明。「わりとくるりにしては人気の曲をやってます」と冗談めかしながら、「節目を皆さんとお祝いできることに心から感謝しています」と述べ、2004年リリースの5thアルバム「アンテナ」より「Morning Paper」「ロックンロール」をプレイ。「ロックンロール」では石若のカウントを口火に、フレッシュで骨太なサウンドが観客の耳にまっすぐ飛び込んでいく。バンドが奏でる高揚感のある音に誘われるように、観客が少しずつ席から立ち上がり、心地よさそうに体を揺らす姿も見られた。

その後、岸田の深みのあるボーカルが印象的な「The Veranda」、佐藤の柔らかく跳ねるようなベースが曲をリードする「BIRTHDAY」をもってステージ上の演者たちが退場し、換気を兼ねた休憩タイムへ。後半戦の幕開けを飾ったのは、豊潤なアンサンブルが味わえる「ジュビリー」。温かな空気が会場を満たす中、続いて岸田が奔放に歌い、ギターの音色にエフェクトをかけまくる「アナーキー・イン・ザ・ムジーク」がプレイされる。岸田と佐藤は、音楽性を飛躍的に進化させた「ワルツを踊れ Tanz Walzer」からの楽曲でくるりの変遷を観客にアピールしつつ、「さよならリグレット」「pray」「魔法のじゅうたん」と穏やかなトーンの楽曲を立て続けに披露したあとに、このブロックのラストナンバーとして「everybody feels the same」を投下した。軽やかで疾走感のあるビートに乗せて、ステージ上の全員がエネルギッシュなセッションを展開。その熱演に呼ばれるように客席からクラップが起き、次第に演者と観客の間の壁がなくなり、一体感がホールに生み出された。

「くるりの25回転」東京ガーデンシアター公演の様子。(撮影:岸田哲平)

「くるりの25回転」東京ガーデンシアター公演の様子。(撮影:岸田哲平)[拡大]

なお「everybody feels the same」はくるりにとって思い入れのある1曲だったようで、直後のMCで岸田は10年前に佐藤の誕生日に曲を書き上げたことを回顧。「面白い曲できたと思ったけど、今、歌ってみて意味が分かりましたね」「俺は今、羽生結弦のことを考えていた。めっちゃカッコいいと思った」と岸田は自身の歌詞とフィギュアスケートの羽生結弦選手の姿を重ねていたことを明かした。

くるりの25年の歴史をたどるライブもいよいよ終盤戦に差しかかり、「o.A.o」を皮切りにエバーグリーンなメロディが光る楽曲たちが朗々と響く。しかし、岸田がギターを置きハンドマイクになった瞬間に、のどかだった空気がほのかに引き締まる。そこから始まったのは、ソウル、ジャズ、ヒップホップなど複数のジャンルのサウンドをくるり流に昇華した「琥珀色の街、上海蟹の朝」。岸田の低い歌声と艶のあるコーラス、楽器隊の奏でる鷹揚なグルーヴが空気を伝い、えも言われぬ心地よさが会場を包み込んだ。チャーミングで遊び心のある「ふたつの世界」、軽やかでありながら、涙腺を刺激する優しい旋律が魅力の「How Can I Do?」を経て、岸田がステージを立つメンバーを紹介。さらに、彼は「25年経ちました。領域展開ですよ」とバンドの歴史を一気に駆け抜けたライブを人気マンガ「呪術廻戦」に登場する技になぞらえ、「これからも何年やるか……やるでしょう。気が向けば、何十周年、何百周年と祝ってください。(25周年を)一緒に祝えて光栄です」と集まった観客に改めてお礼を告げた。本編を締めくくったのは「ソングライン」。楽器隊1人ひとりのパフォーマンスを見せるアウトロをたっぷり展開し、穏やかな余韻を残しつつ岸田と佐藤はステージをあとにした。

「くるりの25回転」東京ガーデンシアター公演の様子。(撮影:岸田哲平)

「くるりの25回転」東京ガーデンシアター公演の様子。(撮影:岸田哲平)[拡大]

鳴り止まぬ拍手を浴びてステージに戻ってきた2人は、まずマイペースな物販紹介で観客を和ませる。アンコール1曲目の「心のなかの悪魔」を歌い終えた岸田が「ホンマにお気を付けて。また元気な顔でお会いできればと思います」と観客との再会を約束したのち、くるりがこの日のラストナンバーとして演奏したのは最新アルバム「天才の愛」に収録されている「潮風のアリア」だった。結成以来、さまざまな変遷を経ながらも、一度もバンドとしての歩みを止めることなく、多くのミュージシャンたちとともに自分たちだけの音楽を愚直に奏でてきたくるり。「どこ迄も 終わらぬ旅へ」という一節が耳に残る「潮風のアリア」は、25周年を経て新たな旅路へと出帆するバンドの門出を後押しするように、力強く高らかに響きわたった。

なお「くるりの25回転」東京公演の模様は、2月26日19:00から3月6日23:59までStreaming+にて配信されることが決定。視聴券の販売期間は3月6日21:00まで。

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くるり「くるりの25回転」2022年2月11日 東京ガーデンシアター セットリスト

01. ランチ
02. 虹
03. 窓
04. 惑星づくり
05. ばらの花
06. ワンダーフォーゲル
07. ワールズエンド・スーパーノヴァ
08. 水中モーター
09. Morning Paper
10. ロックンロール
11. The Veranda
12. BIRTHDAY
13. ジュビリー
14. アナーキー・イン・ザ・ムジーク
15. さよならリグレット
16. pray
17. 魔法のじゅうたん
18. everybody feels the same
19. o.A.o
20. loveless
21. There is (always light)
22. 琥珀色の街、上海蟹の朝
23. ふたつの世界
24. How Can I Do?
25. ソングライン
<アンコール>
26. 心のなかの悪魔
27. 潮風のアリア

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tomo🐟🐄🐶 @nomusicnolife34

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